SciSportsが最近力を入れている、もう1つのプロジェクトは「BallJames」だ。これはトラッキングに基づくデータ生成および2D/3Dのゲーム再現を、完全自動でリアルタイムに行える統合システムだ。
「究極的な先進性の獲得を考えたとき、データの生成方法を人間から、コンピュータビジョンとニューラルネットワークに変える必要があった」(ブロウワー氏)
ブロウワー氏によると、サッカーのような競技を対象としたデータ生成方法には、GPSあるいはLPM(Local Position Measurement)センサーを使う方法(Inmotio、Catapult Sports、JOHAN Sports、GPSports、STATsportsが採用)や、単一ビューの映像でトラッキングする方法(ChyronHego、SportVUが採用)がある。
これらに対し、BallJamesではスタジアムに14台のカメラを設置。これらのカメラがボール、選手、審判の動きをそれぞれ「voxel」(3Dの「画素」、あるいは細かな立方体)の集合体として捕捉、これらの正確な位置と動きをリアルタイムにプロットできる。各選手の識別は、顔と背番号の認識で行っている。
こうして得られたデータを基に、各プレイヤーについては、フィールド上の動きから、パスの精度・方向・速度、スプリントの強さ、ジャンプの強さ、ファーストタッチ後のボールとの距離などを示せる。ボールと全選手の位置関係の正確な推移をデータとして取得できているため、想像力の及ぶ限り多様な分析が可能になるという。
各選手のパフォーマンスをトラッキングするだけでなく、チームとしての戦術分析にも使える。
3Dのゲーム再現では、コンピュータグラフィックスによってあらゆるアングルから、試合をリプレイできる。また、仮想現実(VR)のための3Dデータとしても使えるという。実際、BallJames開発の端緒は、あるクラブの依頼によってOculus Riftを使ったVRアプリケーションを作ろうとしていた際に、選手とボールに関する3Dデータがないという事実に気付いたことにあったという。
本記事執筆時点で、BallJamesのカメラシステムは、オランダのサッカークラブHeracles Almeloのポルマンスタジアムに導入されている。また、また、プレミアリーグのあるチームのスタジアムへも導入が進められているという。
ブロウワー氏は、BallJamesの他の用途として、例えばオフサイドの判定支援、リアルタイムでの選手とボールのプロット表示によるゲーミフィケーション、監督やチームの評価支援があるとしている。
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