McLaren F1チーム(マクラーレン)は、2018シーズンの「Formula1(F1)グランプリ」全21戦で、各サーキットとマクラーレンの本拠地(英国)の技術チームをつなぐネットワークに、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のSDx技術を導入。レースを支えるテレメトリーデータの伝送に活用する。
McLaren F1チーム(以下、マクラーレン)は、2018年3月23日から開幕する2018シーズンの「Formula1(F1)グランプリ」全21戦で、各サーキットと英国ロンドン郊外にあるマクラーレン・テクノロジー・センター(MTC)を結ぶネットワーク(トラックサイドネットワーク)に、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のSDx技術を導入する。
各サーキットとMTCに、SDx技術を活用した広帯域ネットワーク(SD-WAN)環境を構築して、NFV(Network Function Virtualization)基盤とSD-Exchangeを介して接続。テレメトリーデータを安全かつ迅速、効率的に送受信し、レース中の高度な戦略立案を支えるネットワークとして活用する。
テレメトリーデータとは、サーキットの気象情報や、レース車両に搭載したセンサーやカメラが取得するエンジン回転数、ブレーキ圧、燃料残量、タイヤ空気圧、走行状態の映像などのデータのこと。データ量は1レース当たり約100GBにも及び、サーキットのピットガレージとMTCの技術チーム間でリアルタイムに共有し、レースマネジメントなどに活用される。
SD-WANは、既存のVPN回線や、サーキットで各チームが敷設するインターネット回線(補完回線)を柔軟に組み合わせることができるため、帯域拡張と優先順位に応じた効率的なデータ伝送が可能になるという。
さらに、従来はVPN回線経由で接続していたピットガレージのインターネット回線やパドックのゲスト用Wi-Fi回線などを補完回線経由に変更し、重要なデータをVPN回線で優先的に送信できるようにする。4Kや8Kなどの高解像度・高精細な大容量動画データを利用する場合には、それらを補完回線に振り分けることで、VPN回線が逼迫(ひっぱく)し、重要データがパケットロスすることを回避させる。
NFV基盤は、ネットワーク機器の機能を汎用サーバの仮想化基盤上でソフトウェア(仮想マシン)として実装するネットワーク仮想化基盤で、WANの高速化を図るWANアクセラレーター機能や、複数セキュリティ機能を統合管理する機能UTM(Unified Threat Management)、Web経由の攻撃を防御するWebプロキシ機能などを提供。これにより、SD-WAN上のセキュアで迅速な通信を実現する。また、NFV基盤は、ネットワーク環境の構築や撤去の稼働を簡略化できるため、時間とコストの削減が見込める。
各サーキットとマクラーレンの本拠地間通信を結ぶSD-Exchangeは、NTT Comのグローバルな高帯域インフラを経由するため、通常のインターネット接続時と比べて大容量データを高速に伝送できるという。
なお、マクラーレンとNTT Comは、今回の導入に先立ち、2017年10月に開催された「Formula 1日本グランプリ」のトラックサイドネットワークに同様のネットワークを導入し、三重県の鈴鹿サーキットとMTC間でテレメトリーデータの送受信を実施。伝送速度や品質の有用性を確認したことから、今回のF1グランプリ全21戦への導入に至った。
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