開発コード名「Project "Honolulu"」として開発され、テクニカルプレビューが提供されてきた新しいWindows管理ツールが「Windows Admin Center」として正式に公開されました。
「Windows Admin Center」は、Windows Server Semi-Annual Channel(SAC、半期チャネル)や2018年後半にリリース予定の「Windows Server 2019」に最適化された、軽量なブラウザベースのサーバ管理ツールです(画面1)。
このサーバ管理ツールは開発コード名「Project "Honolulu"」として開発が進められ、2017年10月のWindows Server SACの最初のリリースである「Windows Server バージョン1709」と同時に、最初のテクニカルプレビュー(バージョン1709)が提供されました。以降、数度のテクニカルプレビューを経て、Windows Admin Centerという正式名称でバージョン1804の一般提供が開始されました。ただし、これで完成ではなく、今後も機能強化や新機能が追加されていく予定です。
これまで、Windows Serverの管理ツールといえば、デスクトップエクスペリエンス(旧称、GUI使用サーバー)としてインストールされたWindows Serverの「サーバーマネージャー」や、管理の種類や役割に応じて用意されている「Microsoft管理コンソール(MMC)」スナップインベースのGUI管理ツール、Windowsクライアントにインストールする「リモートサーバー管理ツール(Remote Server Administration Tools:RSAT)」がありました。
また、大規模環境向けにはSystem Center製品やクラウドベースの「Microsoft Intune」「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」が用意されています。Windows Admin Centerは、その中間に位置するものと考えると分かりやすいでしょう。1台のサーバ管理にも使用できますし、オンプレミスやクラウド上のサーバ群を管理することもできます。
Windows Admin Centerは、サーバーマネージャーや標準のGUI管理ツールを完全に置き換えるものではありません(従来の管理ツールも引き続き提供されます)。機能的には、サーバーマネージャーとGUI管理ツール、コントロールパネルアプレットを1つのコンソールに統合したイメージです。
従来のように、管理ツールを使い分ける必要はなく、一貫性のあるWebベースのユーザーインタフェース(UI)を使用して、従来と同様の管理操作ができます。
例えば、「サービス」「イベントビューアー」「コンピューターの管理」「セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール」「証明書」スナップインといったMMC管理ツール、エクスプローラーの機能の一部(ディレクトリとファイルの検索)、「レジストリエディター(regedit.exe)」の機能、サーバーマネージャーの「ファイルサービスと記憶域サービス」コンソール相当のディスク、ボリューム、共有、記憶域スペースの管理、サーバーマネージャーの「役割と機能の追加/削除」ウィザードの機能、「Hyper-Vマネージャー」相当の仮想マシンの管理を、ツールを使い分けることなく、1つのコンソール上で操作できます。また、リモートデスクトップ接続(Mstsc.exeクライアントを使用しないブラウザのみでの接続)や、Windows Updateによる更新プログラムの確認とインストール、再起動のスケジュールといった機能も備えています(画面2、画面3)。
Windows Admin Centerは、Windows 10に簡単にローカルインストールすることができる、Webベースの管理ツールであり、現状、「Microsoft Edge」と「Google Chrome」から利用できます。管理対象に資格情報を指定して直接リモート接続して管理することもできますし、1台のWindows Server 2016にインストールし、これをゲートウェイとして企業内ネットワーク全体のサーバ群や、Microsoft AzureのIaaSに展開されたサーバ群を管理することもできます。
Windows Admin Centerと管理対象との通信にはWinRM(Windows Remote Management)やRDP(Remote Desktop Protocol)が使用され、ブラウザとゲートウェイの間の通信にはHTTPS(既定のポートは6516、変更可能)だけが使用されます。
Windows Admin Centerは「Server Core」でのみ提供されるWindows Server SACや、2018年後半にリリース予定のWindows Server 2019の管理に最適化されていますが、Windows Server 2012以降およびWindows 10の管理にも対応しています。
また、Windows Serverの「フェールオーバークラスター」や「ハイパーコンバージドクラスター」の管理にも対応しています。ハイパーコンバージドクラスターは、Hyper-Vやフェールオーバークラスター、ソフトウェア定義のネットワーク(SDN)、ストレージ(記憶域スペースダイレクトなど)、データセンターブリッジングなど、Windows Server 2016が備える機能だけで構築されたハイパーコンバージドインフラ(HCI)アプライアンスのことです。
Windows Admin Centerではオンプレミスのサーバはもちろん、Microsoft AzureのIaaSなど、クラウド上に展開したサーバの管理も可能ですが、Microsoft Azureの各種サービスとの統合も予定されています。
現状では、Azure Active Directory(Azure AD)によるゲートウェイのアクセス制御、Azure Recovery ServicesのAzure BackupとAzure Site Recoveryとの連携機能を利用できるようです。その他のサービスとの連携も、今後、Windows Admin Centerの拡張機能として、または新しいバージョンで、Microsoft Azureのさまざまなサービスへの対応や移行ソリューションが追加されていくことになるでしょう(画面4、画面5)。
Windows Admin Centerの詳細と入手方法(無料)については、以下の公式ドキュメントをご覧ください。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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