日本拠点設立から3年でユーザー250%増 「GitHub Satellite」の基調講演で語られたGitHubの思い日本マイクロソフトCTOがサプライズゲストとして登場

2018年6月12〜13日、GitHub JapanはTOC五反田メッセで「GitHub Satellite 2018」を開催。2018年で10周年を迎えるGitHubが設立した日本法人「GitHub Japan」やソフトウェア開発の未来、GitHubの今後について語った。

» 2018年06月18日 08時00分 公開
[石川俊明@IT]

 ギットハブ・ジャパン(以下、GitHub Japan)は2018年6月12〜13日、東京のTOC五反田メッセでカンファレンスイベント「GitHub Satellite 2018」を開催した。

 12日の基調講演ではGitHub Japanでカントリーマネージャーを務める公家尊裕氏とGitHubでSenior Vice President of Technologyを務めるジェイソン・ワーナー(Jason Warner)氏が登壇。日本でのGitHubの取り組みと成果、ソフトウェア開発の未来について語った。

 講演最後には、日本マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)である榊原彰氏が登壇。先日発表され話題になったMicrosoftのGitHub買収に合わせて、買収の狙いと今後について述べた。

日本人開発者による「GitHub」の利用が進む

ギットハブ・ジャパン カントリーマネージャー 公家尊裕氏 ギットハブ・ジャパン カントリーマネージャー 公家尊裕氏

 GitHubは2008年に米国でサービスを開始し、2015年に海外の戦略拠点の足掛かりとして東京にGitHub Japanを設立。公家氏は「日本語を話せる社員を配置し仕事をしてきた3年間で、多くの学びを得ることができた」と振り返る。

 GitHub Japanを設立してから3年間で、GitHubの日本人ユーザー数は250%増加。それに伴ってPull Requestは550%増え、GitHub上でオープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトに貢献するユーザーは77%増えているという。

「GitHubは日本人開発者に認知されたプラットフォームに」(公家氏) 「GitHubは日本人開発者に認知されたプラットフォームに」(公家氏)

 公家氏が「日本の開発者に認知されていることが明らかになった」と述べるGitHubは、今後どう歩んでいくのか。続いて、ワーナー氏が登壇した。

世界の課題を解決する開発者を支援するプラットフォームとして

 GitHubは2018年で10周年を迎える。2008年当時、ソフトウェア開発は今よりもシンプルで「Amazon Web Services」「Dropbox」「Salesforce」が注目され始めたばかりだった。ワーナー氏は「『ソフトウェア開発に必須なもの』というのがなかった時代に生まれたGitHubは、Web経由でバージョン管理システムと、開発者同士が交流できる場を提供した」と振り返る。

GitHub Senior Vice President of Technology ジェイソン・ワーナー氏 GitHub Senior Vice President of Technology ジェイソン・ワーナー氏

 GitHubの登場で、開発者同士が交流できるようになり、複雑な問題を解決できるOSSがGitHub上で登場するようになった。ワーナー氏は「今日、開発者は世界で最も求められている人間であり、開発者が書いたコードが世界の原動力になっている。ソフトウェア開発者になるということは世界の課題に挑むということだ」と考察する。

 一方で、現在のソフトウェア開発を見てみると、開発のためのツールが無数に登場していてどれを選べばいいか分からないという課題がある。

 「ツール選定、ツール選定後のワークフロー策定、ツールを利用するための研修といった時間を割くことで、ソフトウェア開発の生産性はむしろ下がってしまっているのではないか」とワーナー氏は分析する。

「開発者に提供されるサービスは増え続ける」(ワーナー氏) 「開発者に提供されるサービスは増え続ける」(ワーナー氏)

 そこでGitHubは、開発者に向けて「Pull Request」というワークフローをはじめとするコラボレーション機能を提供してきた。最近では、GitHubアカウントを利用して各種ツールを利用可能にする「GitHub Marketplace」やカンバン形式でissueを管理する「GitHub Projects」を公開している。

 ワーナー氏は最後に「ソフトウェア開発が将来どうなるかは誰にも分からない。しかしGitHubは、エンジニアが抱える課題を解決するためのプラットフォームとして最新の技術やツールへ柔軟に対応し、皆さんの開発を加速させていきたい」と話を終えた。

日本マイクロソフトCTOの榊原氏「お父さん世代のMicrosoftではない」「言葉でいうだけではなく、行動で示す」

 ここで、サプライズゲストとして榊原氏が紹介され、登壇した。

日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏「設計図共有サイトのファンの皆さんこんにちは」「もう、お父さん世代のMicrosoftではありません」の発言で会場が沸いた 日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏「設計図共有サイトのファンの皆さんこんにちは」「もう、お父さん世代のMicrosoftではありません」の発言で会場が沸いた

 榊原氏は「現在のMicrosoftのミッションは、地球上の全ての人々、組織がより多くのことを達成できるようにすること。今回Microsoftが買収したGitHubは開発者がより多くのことを実現するための家のような存在だ」と考察する。

 しかし、「家」を買収された開発者の中にはMicrosoftに不信感を拭えないものも少なくない。カンファレンスイベントで登壇し、Microsoftが変わったことを伝えても言葉だけでは誰にも信用されない。榊原氏は続けてこう述べた。

 「Microsoftは過去にLinkedInを買収したり、『Minecraft』を開発するMojang ABを買収したりしてきた。しかし、彼らの事業の独立性は担保されている。今後のミッションは、他事業の買収と同様に行動規範を整え、GitHubの独立性を保つこと。開発者は気兼ねなくGitHubにデータを保存し、GitHubの機能を通常通り利用できるようにする。だから、行動を見て判断してほしい」

 最後に榊原氏は「Microsoftは今後、全てのデバイス、OS、クラウドをサポートし、GitHubを使って未来を作り上げていく」と述べて基調講演を締めくくった。

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