「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ1800の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ1800」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ1800は、HDDのセクタサイズの違いを吸収する設定です。SQL Server 2012 SP1 CU13 以降に対応します。
サーバ上のSQL Serverのデータは、HDDに保存されています。HDDのセクタサイズは512Bが主流でしたが、近年の大容量化に伴い4096Bのセクタサイズを持つHDDが増えてきています。4096Bのセクタサイズに対応するシステムや機能も増えてきており、単一サーバで構成される場合は、問題なく使用できることが多くなってきました。ただし連携する機能によっては、問題が発生する場合があります。
SQL ServerではAlwaysOn可用性グループやトランザクションログ配布などでプライマリとセカンダリのデータを同期させる機能があります。
このときプライマリとセカンダリのセクタサイズが異なると、データを正常に反映させることができず、「エラー9012」の「同期 IO に戻す必要のある不均衡なログ IO が xxx 個あります。現在の IO はファイル xxx にあります」というエラーが発生したり、セカンダリへのトランザクションログ適用に時間がかかったりする場合があります。
512Bのセクタサイズで動作しているサーバでトレースフラグ1800を有効にすると、4096Bのセクタサイズで動作しているサーバへ正常にログが適用できるように変更されて、エラーが解消します。なお「エラー9013」の「データベース xxx のログの末尾が新しいセクター サイズの xxx バイトに一致するように書き直されていません。ファイル xxx のオフセット xxx にある xxx バイトが書き込まれます」が発生する場合がありますが、こちらは無視して構いません。
以下に、関連するMicrosoftのドキュメントを挙げます。
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | × | − |
クエリスコープ | × | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
コマンドプロンプトでfsutil fsinfo ntfsinfoコマンドを使用すると、対象としたドライブのセクタサイズを確認できます(図1、図2、図3)。
プライマリとセカンダリでログファイルを保存しているドライブのセクタサイズを表示し、いずれかの結果が返ってくることを確認します。AlwaysOn可用性グループまたはトランザクションログ配布を実装しているサーバで、セクタサイズが512Bと4096Bの混在状態になっている場合は、512Bのセクタサイズを使用している方でトレースフラグ1800を有効にします。
プライマリとセカンダリの環境をなるべく合わせておくことで不要な障害を回避できます。可能であればセクタサイズも統一しておくことをお勧めします。しかし一方がパブリッククラウド上にある場合など、変更できない場合もあります。
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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