【トレースフラグ 2335】──クエリ最適化時のメモリ割り当て動作を変更するSQL Serverトレースフラグレファレンス(32)

「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ2335の詳細と使い方」を解説します。

» 2018年07月11日 05時00分 公開
[内ヶ島暢之@IT]

SQL Serverトレースフラグレファレンス一覧

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。

 今回は「トレースフラグ2335」の詳細と使い方を解説します。

 トレースフラグ2335は、クエリ最適化時のメモリ割り当て動作を変更する設定です。SQL Serverの全バージョンに対応します。

 SQL Serverがクエリを実行する際、対象となるテーブルの統計情報(データ分布)やテーブル定義、クエリの内容からクエリプランを作成します。クエリプランを作成する際、「最適化」処理を行います。その最適化処理内で利用するメモリはSQL Serverが動的に割り当てます。

 動的に割り当てられる大きさは空き領域などに依存し、SQL Server全体の稼働状況によっては十分なメモリが最適化時に割り当てられない可能性があります。その場合生成されたクエリプランは、十分なリソースが確保できた場合よりも実行速度において劣る場合があります。

 このような現象を回避するためにトレースフラグ2335が存在します。最適化処理時に利用するメモリが不足しないように、固定割り当てを採用します。

 ただし、メモリ消費動作が変化するため、トレースフラグ2335を設定することで、必ずしもメリットが得られるとは限りません。本番環境に適用する前にテストすることをお勧めします。

設定可能なスコープ

トレースフラグ2335
設定方法 可/不可 要/不要
スタートアップ
グローバルスコープ
セッションスコープ
クエリスコープ
トレースフラグ 3604/3605 不要

動作例

 トレースフラグ2335をクエリ単位で設定した例を図1に挙げました。

図1 図1 トレースフラグ2335をクエリヒントで有効にしたときの動作。今回はクエリヒントで実行しているため、インスタンス全体には動作変更が波及していない

 本トレースフラグが必要になる状態を考えると、SQL Serverで動作するクエリ全てが遅くなっている状態というよりも、一部のクエリが遅くなっているケースの方が多いのではないでしょうか。このような場合にはインスタンス全体で有効にするのではなく、クエリ単位でヒントを用いて実装した方が、トレースフラグ実装による弊害が起きにくくなります。

 ※本Tipsは、Windows Server 2012 R2上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境で解説しています。

筆者紹介

内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)

ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。

椎名 武史(しいな たけし)

ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。


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