Windows Server 2019の「Active Directoryドメインサービス」(AD DS)は、オンプレミス向けActive Directoryの最新バージョンになります。では、どこが新しいのかというと……。
公式ブログで「Remote Desktop Services 2019」と表現されたWindows Server 2019のリモートデスクトップサービス(RDS)は、本連載第121回と第122回で紹介したように、目に見える新機能はなく、Windows Server 2016のRDSと同等だということを紹介しました。一方、表現は適切ではないかもしれませんが、「RemoteFX 3Dビデオアダプター」の積極的なサポートがなくなったという、後ろ向きな変更が行われています。
「Active Directory」はWindows 2000 Server(2000年にリリース)で初めて登場して以降、Windows Serverのバージョンが新しくなるたびに、下位互換性を可能な限り維持しながら、新しい「フォレスト/ドメイン機能レベル」の提供と新機能の追加が行われてきました。フォレスト/ドメイン機能レベルは、フォレストやドメインでサポートされるドメインコントローラーの最小バージョンを規定するとともに、利用できる機能に影響します。
ちなみに、下位互換性に関しては、Windows 2000混在のドメイン機能レベルはWindows Server 2008で廃止、Windows 2000のフォレスト/ドメイン機能レベルはWindows Server 2012で廃止、Windows Server 2003のフォレスト/ドメイン機能レベルはWindows Server 2016で廃止、「FRS(ファイルレプリケーションサービス)」によるSYSVOLの複製はWindows Server 2016でのサポートを最後に廃止されました。
長期サービスチャネル(Long-Term Servicing Channel:LTSC)リリースにおいて、最新のWindows Server 2019の「Active Directoryドメインサービス(AD DS)」を、「Active Directory 2019」や「AD DS 2019」と表現する人がいることは容易に想像できます。しかし、Windows Server 2019のRDSと同様、いやそれ以上に、Windows Server 2019のAD DSに何か新しいことを期待することは難しそうです。
Windows Server 2019で新規ドメインの最初のドメインコントローラーをインストールしてみればすぐに分かります。Windows Server 2019のAD DSにおける最上位のフォレスト/ドメイン機能レベルは、実は「Windows Server 2016」なのです(画面1)。
画面1は、Windows Server 2016の画面と疑う方もいるかもしれません。では、このサーバにドメインコントローラーのインストールが完了した後の画面2をご覧ください。
Windows Server 2019では、フォレスト/ドメイン機能レベルの両方とも「Windows Server 2016」が選択可能な最上位の機能レベルであることが分かるでしょう。つまり、“Windows Server 2019のドメインコントローラーのみを要求する機能レベル”というものは、Windows Server 2019には用意されていません。
以下のTechNetブログの投稿にあるように、Windows Server 2019のプレビュービルド時点で“新機能はない”とされていました。ただし、このブログ記事はプレビュービルドに基づいた、その時点で公開された情報に基づくもので、公式な情報ではないとされています。
結局、フォレスト/ドメイン機能レベルについては、このブログ当時の状況が変わることなく、正式リリース(General Availability:GAとも呼ばれますが、以前のRTM相当)となりました。このブログで指摘されているその他の点についても、GA版で確認してみましょう。
なお、本稿では2018年10月初旬にリリースされたGA版(インストールメディアはOSビルド17763.1ベース)のWindows Server 2019で確認していますが、11月中旬に再リリースされたGA版(インストールメディアはOSビルド17763.107ベース)でも変更はありません。
「Active Directoryスキーマ」は、フォレスト/ドメインに新しいバージョンのドメインコントローラーを追加する際、新バージョンのOSのスキーマバージョンに拡張する必要があります(Windows Server 2012以降のドメインコントローラーの追加時に自動的に拡張されるか、インストールメディアの「\Support\Adprep\Adprep.exe」を実行して手動で拡張します)。また、Exchange ServerやSystem Center Configuration Management(SCCM)のために、アプリケーション用スキーマの拡張が必要になる場合があります。
Active Directoryスキーマのバージョンは、Windows Server 2016の「87」から、Windows Server 2019では「88」に拡張されます(画面3)。これもまたプレビュービルドについて書かれたブログの状況から変わっていません。
スキーマバージョン「87」と「88」の違いが、新たに「msDS-preferredDataLocation」という属性が1つ追加されただけという点も変わっていません。これは、Windows Server 2019のインストールメディアにある「\Support\Adprep\sch88.ldf」で確認できます(画面4)。
Windows Server 2016とWindows Server 2019のActive Directoryからエクスポートしたスキーマの属性は、「ADSchemaAnalyzer」ツール(「AD DSおよびAD LDSツール」の「AD LDS Snap-ins and Command-Line Tools」に含まれる)で比較して確認することもできます(画面5)。
実は、スキーマバージョン「88」は、Windows Server 2019からのバージョンでさえありません。以下のドキュメントにあるように、半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)のWindows Server,version 1803からのものです。
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