Windows Server 2019は本当に完成したのか、それとも完成していないのか?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(127)(2/2 ページ)

» 2019年01月15日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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ソフトウェア定義の中核機能は2019年1月中旬までお預けな件

 Windows Server 2019が標準機能として搭載するHCI機能、その中核となるのが標準的なハードウェアとOSの標準機能でデータセンターやクラウドのインフラストラクチャを構築できる「ソフトウェア定義の(Software Defined)」の機能です。特に、ソフトウェア定義のストレージを提供する「記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct:S2D)」と、ソフトウェア定義のネットワーク(SDN)の要となる「ネットワークコントローラー」が強化されており、これらの機能はWindows Server 2019 Datacenterエディションだけが提供できます。そして、これらの機能を用いて構築したクラスタ環境を「ソフトウェア定義のデータセンター(Software Defined Datacenter:SDDC)」と、Microsoftでは表現しています。

 実は、Windows Server 2019のS2D機能は、リリース時点では利用しようとしてもブロックされます(画面2)。

画面2 画面2 Windows Server 2019 Datacenterの製品版や評価版でS2D機能を利用しようとしても、メッセージが表示され操作がブロックされる

 Windows Server 2019の「フェールオーバークラスター」でS2Dを有効化しようとした場合(「Enable-ClusterS2D」コマンドレットの実行)、あるいは既存のS2DクラスタにWindows Server 2019のサーバを追加しようとした場合、運用環境に展開する場合は「Windows Serverソフトウェア定義(Windows Server Software-Defined:WSSD)プログラム」で認定されたハードウェアを使用するように案内するエラーメッセージが表示され失敗します。

 また、現時点で既存のハードウェアを使ってWindows Server 2019のS2D機能を評価したい場合は、「Windows Server 2019 Insiderプログラム」に参加してInsiderビルドで評価する必要があり、既存のハードウェア環境をWindows Server 2019にアップグレードすることを検討している場合は、今後の進め方についてMicrosoftに電話で問い合わせる必要があることが案内されます。

 この件については、以下の公式ブログおよびサポート情報で説明されており、同様のブロック機能がネットワークコントローラーのインストールでも行われているそうです。Windows Server 2019に対応したWSSD認定ハードウェア製品は、2019年1月中旬に発表され、その後、このブロック機能が解除される予定です。

最新情報(2019年4月18日追記)

 2019年4月18日付でサポート情報「Software Defined Data Center and Software Defined Networking in Windows Server 2019」が更新されました。WSSD認定ハードウェアが利用可能になったことを受けて、Windows Server 2019の最新(おそらく2019年4月)の累積更新プログラムでS2Dとネットワークコントローラーのブロックが解除されることが発表されました。


Linux Containers on Windows(LCOW)はExperimental(実験的)機能な件

 アプリケーションプラットフォームとしてのWindows Server 2019の注目の新機能は、「Linuxコンテナー」のサポートでしょう。この機能は「Linux Containers on Windows(LCOW)」とも呼ばれるもので、「Hyper-Vコンテナー」の分離環境でLinuxのカーネルを提供し、その上でLinuxコンテナーの作成と実行を可能にするものです。

 Windows Server 2016はコンテナ機能を初めて搭載し、Docker EE for Windowsとともに、「Windowsコンテナー」の実行環境を提供しました。Windowsコンテナーは、ホストとカーネルを共有する「Windows Serverコンテナー(processモード)」と、ホストとカーネルを共有しない分離環境による「Hyper-Vコンテナー(hypervモード)」のいずれかで実行できます。新機能は、Hyper-VコンテナーでLinuxコンテナーをサポートすることで、Windows Serverのコンテナホスト1台でWindowsコンテナーとLinuxコンテナーの両方を同時にサポートできるというものです。

 LCOWのサポートは、Windows Server,version 1709とWindows 10 バージョン1709のHyper-Vコンテナー環境で初めてプレビュー評価が可能になりました(画面3)。

画面3 画面3 Windows 10 バージョン1809のDocker for WindowsでWindowsコンテナーとLinuxコンテナーを同時に実行しているところ(いずれもHyper-Vコンテナー)

 実は、現在もプレビュー提供の段階です。最新のDocker Commercial Edition(CE)ベースのDocker for Windowsでは「Experimental(実験的)」機能を有効化することで、LCOWをプレビュー評価できます(画面4)。

画面4 画面4 Docker for Windowsでは、Experimental機能を有効化することで、LCOWの実行環境を簡単に準備できる。2018年11月末にリリースされたバージョン2.0.0.0-win81(Engine 18.09)では--platform=linuxの指定を省略できるようになった(画面は18.06.1-ce-win73)

 Windows Server,version 1709以降では、Docker EE for Windows Serverではなく、Moby ProjectのDockerデーモン(master-dockerproject)のExperimental機能としてLCOWを評価できます(画面5)。

画面5 画面5 Windows Server(version 1709以降)の場合は、LCOW対応のDockerデーモンでLCOWを評価することが可能。Docker EE for Windows Serverは未対応

 本稿執筆時点でLCOWは開発中のExperimental機能であり、Windows Server 2019で動作するDocker EE for Windows Serverではまだ利用できません。2018年11月にリリースされたDocker EE for Windows Server 18.09(Docker Enterprise 2.1、2019年1月10日に18.09.1がリリース)にはExperimental機能としてLCOWに対応した機能が含まれていますが、現状はMoby Projectでのみ評価できるようです(画面6)。開発状況を含む最新情報は上記のGitHubのサイトで確認してください。

画面6 画面6 最新のDocker EE for Windows Serverバージョン18.09には、Experimental機能としてLCOWのサポートが含まれているが、これだけでは機能しない(LinuxKitを導入したとしても)

完成したともいえるし、完成していないともいえる

 このように、製品の品質は別として、Windows Server 2019はリリース時点で正式に利用できない新機能が存在します。今回、指摘した2つの機能は、認定ハードウェア待ちと、外部のコード(Docker)に依存するものでしたが、この他にもMicrosoft Azureのサービスに依存する機能にも何か制約があるかもしれません。

 新機能に期待して即導入や即アップグレードはお勧めしません。期待している機能が期待通りに動作するのかどうかを、評価版の提供が再開されたら、その品質も含めて十分に検証してからにしましょう。現在、無料で評価したい場合は、Microsoft Azureの無料アカウント(1カ月分)を使用するという手があります。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


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