さようならSAC-T! これまでの、これからのWindows 10の更新チャネルをざっくりと解説その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(130)(2/2 ページ)

» 2019年02月26日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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結局、Windows 10 バージョン1903ではどうなるのか?

 SAC-Tが削除されたWindows 10の次のバージョンが実際にどうなっているのか、2019年2月8日に「Fast」リング向けにリリースされたWindows 10 バージョン1903のInsider Previewビルド(OSビルド18334.1)で確認してみました。なお、正式版ではないため、GUIや表現は変更になる可能性があります。

 「設定」アプリの「Windows Update」→「詳細オプション」からは、更新チャネルを選択するドロップダウンリストが削除されていました。機能更新プログラムと品質更新プログラムを、それぞれ受け取るまでの延期日数は従来と同じです(画面4)。

画面4 画面4 Windows 10 バージョン1903のInsider Previewビルドの「設定」アプリ(前出の画面2と比較してみよう)

 「Windows Update for Business」の「プレビュービルドや機能更新プログラムをいつ受信するかを選択してください」ポリシーについても、更新チャネルの選択肢のドロップダウンリストから「半期チャネル(対象指定)」が削除されています(画面5)。

画面5 画面5 Windows 10 バージョン1903のInsider Previewビルドの「Windows Update for Business」ポリシー(前出の画面1と比較してみよう)

 つまり、Windows 10 バージョン1903以降のWUfBによる機能更新プログラムの延期設定は、SAC(新しいSAC)向けリリース日が起算日となり、単純に機能更新プログラムを受け取る延期日数になります。これまでのように、いつSAC(古いSAC)向けにリリースされるのかと、警戒する必要がなくなるわけです。「0日」より大きな延期日数を設定しておけば警戒する必要などないのですが、延期設定を無視して機能更新プログラムが検出、インストールされてしまう事件を筆者は何度か経験しています。

 SAC-Tの廃止に関連して1つ残念なことがあるとすれば、WUfBで延期できる最大日数が「365日」になってしまうことです。これまでは「SAC(古いSAC)リリース日+365日」が最大でした。それでは現在のバージョンのまま、18カ月や30カ月も品質更新プログラムを受け取れないじゃないか、と疑問を持つ人がいるかもしれませんが、WUfBではなく、WSUSを使えばいくらでも延期できます。管理者がWSUSで機能更新プログラムを承認しない限り、WSUSクライアントに配布されることはありません。

 2019年2月の公式発表では、Windows 10 バージョン1903への今回の更新に限り、更新チャネルがSAC(古いSAC)の場合、「現在の延期日数(既定は0日)+60日」に解釈されるとのことです。これは筆者の想像ですが、新しいSACリリース日は従来のSAC-Tリリース日として、従来のSACリリース日は新しいSACリリース日の60日後に、従来通りに宣言され、Windows 10 バージョン1809以前はそれに従ってWindows 10 バージョン1903の機能更新プログラムを受け取るのだと思います。

 Windows 10 バージョン1903への更新後は、遅延日数の設定のみがそのまま引き継がれるのだと思います(筆者はそう読み取りました)。Windows 10 バージョン1903に更新後に「+60日」とされるようなニュース記事を見かけましたが、それはないでしょう。クライアント側設定なら不可能ではないかもかもしれませんが、いくら何でもActive Directoryのグループポリシーオブジェクトにまで手は出せないはずです。

 念のため、WUfBを使用している場合は、Windows 10 バージョン1903への更新後に「Windows Update for Business」ポリシー設定や「設定」アプリの「Windows Update」→「詳細オプション」を確認して再調整しましょう。

 特に古いSACで延期日数が「0日」だった場合、Windows 10 バージョン1909(19H2)がリリースされるとすぐに受け取る(従来のSAC-Tと同じ設定)ことになってしまうかもしれないので注意が必要です。現時点でSACを使用しない設定(SAC-T+延期日数の設定)にしておくという手もあります。なお、WSUSの環境であれば、何の影響もありません。

あれれ? Officeの更新チャネルと違ってくるけど……

 Windows 10のサービスモデルは複雑に感じる人が多いでしょう。それは、名称変更やWindows 10のバージョンにおけるGUIの表現の差異、WUfBを理解していなくてもユーザー側で構成できてしまうこと(現在のWindows 10のWSUSクライアントでは、WUfBオプションが非表示になるため問題になりません)、その日まで判明しないSAC向けリリース日、WUfBとWSUSの混同や設定方法の誤解などが招いたことだと思います。

 実は、MicrosoftはWindows 10 バージョン1803のリリース時(2018年4月末)、SAC-Tを廃止しようとして、その後、すぐに撤回しました。これは「Windows 10 - Release information」の表記の話なのですが、2018年7月(4月時点では未定)になった本当のSAC向けリリース日の公表をどうするつもりだったのでしょう。

 Windows 10 バージョン1903でのSAC-Tの廃止により、サービスモデルを複雑にしていた原因の1つが取り除かれました。しかし、SAC-T/SACは2017年中ごろに、Microsoft Office(企業向けに「半期チャネル(対象指定)」と「半期チャネル」があります)と更新チャネルや新機能の提供時期をそろえる形で、分かりやすくするために導入されたはずです。また1つ、ややこしいことが増えてしまいました。WindowsとMicrosoft Officeはまた別の道を歩き出すことになるのでしょうか。

最新情報(2019年5月22日追記)

 2019年5月22日に「Windows 10 May 2019 Update(バージョン1903)」の一般提供が開始されました。Windows Updateでの段階的なロールアウトに加え、Windows 10ダウンロードサイトおよびWindows Server Update Services(WSUS)でも利用可能になっています。また、「Windows Release Health Dashboard」はパブリックプレビューから正式版になりました。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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