京都大学のトウ昊洋氏らは、モデル予測制御を並列計算によって高速実行するアルゴリズムを開発した。マルチコアプロセッサの性能を最大限活用でき、安価なプロセッサを複数使用することでモデル予測制御の実装コスト削減も期待できる。
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京都大学は2019年9月11日、同大学情報学研究科博士後期課程に在籍するトウ(漢字は「登る」にこざと編)昊洋氏と、同大学情報学研究科の教授である大塚敏之氏が、実時間最適制御(モデル予測制御)を並列計算によって高速実行するアルゴリズムを開発したと発表した。マルチコアプロセッサの性能を最大限活用でき、安価なプロセッサを複数使用することでモデル予測制御の実装コスト削減も期待できる。
最適制御問題とは、制約条件下で最適な動きを求める問題で、温度制御や制動制御(アンチロックブレーキシステム)、ロケット着陸など、さまざまな制御に応用できる。中でもモデル予測制御は、刻々と変化する状況に応じて最適制御問題を実時間で解き直しながら制御する手法で、現在最も使われている先端の制御方法だ。例えば、自動車の自動運転や電力系統の安定化、化学反応の効率化、人工膵臓(すいぞう)などに利用されている。
こうしたモデル予測制御は、制御対象の未来の動きを予測して最適化する。ただし、問題が複雑だと計算量が膨大になり、実時間で最適化するには高性能なコンピュータが必要だ。ロボットや電力ネットワークなど制御対象が複雑になると、モデル予測制御の実現が困難だった。
トウ氏らが開発した手法は、未来のある時刻までの動きを幾つかの断片(時間)に分解して、それらの断片ごとに最適化する。そして、これらの断片の最適化計算を並列に同時実行する。断片の分解方法を工夫することで、全体を最適化しながら、計算速度を大幅に高速化できたという。
一般に、分割数(断片の数)を増やすほど計算量は増えるが、トウ氏らの手法では複数の断片を同時に計算するため、計算時間の増加率が従来手法の4分の1未満に抑えられたとしている。
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