IPAは「情報システムの障害状況 2019年前半データ」を公開した。この期間に報道された情報システムの障害は33件だった。それとは別に、改元に伴うシステム改修に関連する障害が17件報告された。
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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2019年9月20日、「情報システムの障害状況 2019年前半データ」を公開した。同データは、社会に影響を与え全国紙などで報道された情報システムの障害情報で、IPAでは2010年から半年ごとにとりまとめて公開している。
2019年1〜6月に報道された情報システムの障害は33件だった。その内、鉄道や航空などの運輸サービスに関するシステム障害は6件(利用客に大きな影響を与える運輸サービス関係の障害は2018年後半にも7件発生していた)。その他、銀行や証券会社など金融システムの障害は8件、クレジットカードなどキャッシュレス決済システムの障害は9件発生した。
障害発生原因を見ると、トラフィックの集中によるものが2件あった。こうした障害への対策として、IPAは、2020年に開催予定の東京オリンピックのチケット抽選販売システムで採用された「待合室方式」が参考になるとしている。このチケット抽選販売システムでは、利用者にとっては待合室で長時間待たされるという不便はあったものの、非常に多くのアクセスが集中しても、あふれたトラフィックを待合室に誘導することでシステム障害の発生を回避できた。
IPAは、待合室がないとユーザーがやみくもにログインを繰り返すことで余計なトラフィックがシステム負荷を一層高めるという悪循環に陥り、最悪の場合はシステムリソースの枯渇によるシステムダウンを引き起こしてしまいかねないと分析している。
システム障害が原因のセキュリティ事故も2件あった。悪意のある攻撃者が意図的にシステムから情報を盗むのではなく、システムの不具合によって、偶然、意図せずにシステムから情報が漏えいした。1つはチケット販売サイトで、利用者がログインした際に別のユーザーの情報が表示されてしまった。もう1つは有料動画サイトで、ユーザーのセッションが、同時間帯にログインした別のユーザーと共有されてしまった。
2019年前半では、改元に伴うシステム改修に関連する障害が17件報告されたが、いずれも影響が軽微または特定の地域に閉じていた。影響が軽微な例は「処理は正常だったが誤った年号が表示された」などだ。そのため、IPAでは全体の障害件数とは分けて扱っている。ただし、特定の地域のみに影響があった障害には、軽微とは言えないものが含まれている。
例えば、自治体への申請手続きが当日できなかったり、納税証明書に誤りがあって車検が適切に受検できない恐れがあったりした。下水道料金納入通知書のバーコードに誤りがあって、コンビニでは納付できないという障害もあった。
2019年10月には、消費税率が10%に引き上げられ、同時に軽減税率やポイント還元制度が導入される。IPAでは、関連する情報システムの改修は改元対応よりもはるかに複雑で規模も大きくなるとしており、十分に準備し、慎重に対応するよう注意を促している。なお2014年4月の費税率が8%に改正されたときには、7件のシステム障害が報道された。
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