2019年11月にCloud Native Computing Foundation(CNCF)が米サンディエゴで開催した「KubeCon+CloudNativeCon North America 2019」は、約1万2000人を集めた。今回のイベントのテーマは何なのか。CNCFのCTO(最高技術責任者)であるクリス・アニズィック氏に聞いた。
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2019年11月にCloud Native Computing Foundation(CNCF)が米サンディエゴで開催した「KubeCon+CloudNativeCon North America 2019」は、約1万2000人を集めた。
2019年5月の「KubeCon+CloudNativeCon Europe 2019」では、5周年という節目を迎えたKubernetesの成熟が、大きなトピックとなっていた。では、今回のイベントのテーマは何なのか。CNCFのCTO(最高技術責任者)/COO(最高執行責任者)であるクリス・アニズィック(Chris Aniszczyk)氏にたずねると、「クラウドネイティブの世界が新たな成長段階に入ったこと」と答え、2つの理由を説明した。
第1の理由は、Kubernetesの普及を象徴する来場者の広がりだ。来場者数は、2018年12月の米シアトルにおけるイベントと比べ、5割増加した(ただし、2018年のイベントは会場のキャパシティーが足りず、約2000人が入場できなかった)。
「基調講演での『初めて来た人は』との質問に、約半数の人が手を挙げた。そのほとんどはKubernetesや周辺ツールのユーザーだ。このイベントは、開発者とベンダーだけの場でなくなり、エンドユーザーが参加するコミュニティーを象徴するものになった」(アニズィック氏、以下同)
この場で自らの経験について話すユーザーは、テクノロジー企業ばかりではなくなってきた。Walmart、Targetといった流通企業の他、Fidelity Investmentのような金融機関、さらには米国防総省までが登壇した。
米国防総省のチーフソフトウェアオフィサーであるニコラス・チャイラン(Nicolas Chaillan)氏は、同省全体における、Kubernetesによるコンテナ基盤への移行の取り組みを説明した。
「今までのウォーターフォール文化を変えなければならない。そのために私のようなフランス人を雇ったのだと思う」と話して会場を笑わせた。そして講演の最後に、「国防省でもできるのだから、一般企業にできないわけがない」と言った。
CNCFのエグゼクティブディレクター、ダン・コーン氏は基調講演で、「マインクラフト」とクラウドネイティブは共通点が多いと話した。
コーン氏の小学2年生の息子は、マインクラフトにはまっているが、ある日暗闇にいるので聞いてみると、ゾンビーが怖いから隠れているのだと答えたという(注:マインクラフトのサバイバルモードでは、夜になるとゾンビーが襲ってくる)。だが、小学4年生の友だちに教えてもらい、一緒にやることで上達している。
同氏の息子は、Kubernetesやクラウドネイティブに取り組みはじめたばかりの一般企業に似ている。最初は怖がっていても、先行する人たちや企業から学ぶことで、徐々に慣れていく。そしてマインクラフトとクラウドネイティブは、どちらも勝負ではなく、一緒に作り上げていくことが目的だと話した。
アニズィック氏が話した、クラウドネイティブが新しい段階に入るもう1つの理由は、Kubernetes以外のクラウドネイティブ関連オープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトの広がりと成長だ。
「KubeCon+CloudNativeCon」というイベント名は、元々「Kubernetesのカンファレンス+クラウドネイティブ全般についてのカンファレンス」を示している。
「Kubernetesの成熟を受けて、今回はどちらかといえばCloudNativeConといえるものになった」
「基調講演を見ても、セキュリティの話題に加え、分散ストレージ/データベースのVitessなどが話題になった。もちろんKubernetesは今でも、非常に重要な存在だ。だが、面白いことはその周りのエコシステムで起こっている。CNCFとして最も誇りに思っているのは、成熟したKubernetesから、多数のプロジェクトから成るコミュニティーへのシフトを、うまく導くことができているということだ」
今回のカンファレンスでは、例えばHelmやOperatorsのような運用支援ツールが、Kubernetesの一部であるかのように、自然に議論されている。
また、さまざまなところで話題になっていたのがサービスメッシュ。サービスメッシュは「アプリケーションレベルのネットワーキング」ともいえ、A/Bテストやカナリアデプロイメントなど、更新を一部のみに適用し、アプリケーションの信頼性や機能を確認するなどの目的で、開発チーム主導でネットワーキングをツールとして活用するなどの用途で利用が広がりつつある。
会場では、Linkerd、Istio、Envoy、Kong、VMwareなど、サービスメッシュ関連のさまざまなプロジェクト/ベンダーが、自らのプロダクトを紹介した。
一方、ネットワークセキュリティに活用した事例を、ユーザー自身が語る例も複数見られている。関連して、サービスメッシュを含むさまざまな仕組みに、一貫したポリシーを適用するためのツールである「Open Policy Agent」に関する興味の高まりも見られた。
全般的には本番利用の広がりを反映して、セキュリティ関連の議論が目立つ。クラウドネイティブに関連したセキュリティといっても、コンテナ自体からネットワーク、監査など幅広い。これらが多角的に話し合われている。
ある金融機関向けサービス企業の技術マネージャーは、コンプライアンスの観点から、一貫したポリシーを確実に適用できることを示さなければならないとし、Open Policy Agentに対応した製品の採用を検討していると話した。
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