欧州で第3位の金融機関であるSberbankでは、個人顧客のデジタルチャネル利用率は71%で、世界第3位だという。同社が個人向けのデジタルバンキングで特に力を入れているのはリアルタイムのパーソナライズされたキャンペーンおよびサービスだ。具体的には何をやっているのだろうか。
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欧州で第3位、世界で第10位の金融機関であるロシアのSberbankは、デジタルへの動きを急速に進めている。ロシア国内における同社のアクティブな個人顧客は9300万人だが、このうち6600万人がデジタルチャネルを使っているという。デジタルチャネル利用率は71%という計算になり、中国農業銀行、JP Morgan Chaseに次ぎ、世界第3位だという。
Sberbankが個人向けのデジタルバンキングで特に力を入れているのは、リアルタイムのパーソナライズされたキャンペーンおよびサービス。これについて、Sberbankのキャンペーン・アズ・ア・サービス部門チーフを務めているウラジミール・バクラノフ(Vladimir Baklanov)氏がSAS Instituteのイベント「Analytics Experience 2019」で具体的に説明した。
Sberbankにおけるデジタルチャネルで、主流になってきたのはやはりモバイルアプリだ。図に示されている通り、Webやテキストバンキング(テキストメッセージを使った残高照会などのサービス)の利用は減少傾向だが、モバイルアプリのユーザーは、2014年のほぼゼロから、約5400万人へと急速に増加している。
モバイルアプリ「Sberbank Online」は2018年、ロシア国内の無料モバイルアプリランキングで5位以内に入ったほどの人気を獲得しているという。
人気の理由の一つはオンラインストアや通信事業者など、さまざまなパートナーとの連携にあるようだ。「Sber ID」というSberbankのユーザーアカウントで、アプリ内から多様なモノやサービスを購入でき、決済はSberbankで自動的に行える。
だが、最大の魅力はパーソナライゼーションにあるとバクラノフ氏は話した。
アプリに示されるバナーやメッセージは、ユーザーごとにカスタマイズされる。例えばどこかに旅行すると、その場所に関連したアドバイスや、パートナーからのグラフィカルなオファーが自動的にプッシュ表示される。
2019年にはこのアプリに検索機能が追加された。この検索はユーザーの過去の振る舞いから自動的に学習し、文字入力を始めるだけで、ユーザーが探そうとしているものを先取りして候補を示すことができる。例えば振り込みでは、アプリ、ATM(現金自動預払機)、Web、店舗における過去の履歴と日時を勘案し、適切と考えられる候補を絞り込んで表示するという。ちなみに音声認識機能も備えており、「ローン手続きの方法は?」などと聞くだけで、関連する情報を示すようになっている。
ATMの画面もパーソナライズされている。SberbankのATMでは、図のように各ユーザー専用のメニューが表示できる。
画面中央には、過去のユーザーの行動履歴が示され、これらをテンプレートとして使って新たな料金支払いや振り込みが行える。また、画面左上のボタン1つで、クレジットカードの利用残高が確認できる。現金の引き出しについても、ユーザーの過去の実績から、最も頻繁に引き出される金額を候補として示す。
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