Azure Marketplaceで提供されている「Windows Server半期チャネル」(SAC)のイメージや「長期サービスチャネル」(LTSC)のServer Coreイメージは、英語(en-us)版のインストール環境です。今回は英語版のServer Core環境を日本語化する手順を紹介します。なお、これは筆者が試行錯誤した手順であり、実際には必要のない手順が含まれる可能性や、より簡単な方法がある可能性もあります。
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「Microsoft Azure」のパブリックイメージは、英語版(en-us)であり、既定の表示/入力言語とシステムロケールが英語(米国)です。また、仮想マシンのデプロイ先のリージョンに関係なく、国と地域は「米国」、タイムゾーン「UTC(協定世界時)」でセットアップされています。
長期サービスチャネル(LTSC)バージョンのWindows Serverのデスクトップエクスペリエンス環境は、オンラインで日本語サポートを追加することで、表示言語、入力言語、システムロケールを変更して日本語化できます。「Windows Server 2019」の場合の手順については、本連載第67回で説明しました。
LTSCバージョンのWindows Serverのパブリックイメージとしては、デスクトップエクスペリエンス環境とServer Coreインストール環境が用意されています。また、Windows Server 半期チャネル(SAC)のインストールオプションはServer Coreインストールのみです。
今回は、前回「Windows Server, version 1909 with ContainersをJSONテンプレートからデプロイする方法」で、カスタムテンプレートからデプロイした「[smalldisk]Windows Server, version 1909 with Containers」相当のServer Coreインストール環境を日本語化してみます(画面1)。
同じ手順で、バージョン1809以降のLTSCのServer CoreイメージおよびSACイメージを日本語化できます。具体的にはAzure Marketplaceで利用可能な以下のイメージです。それ以前のバージョンについては確認していません。
本稿で紹介する手順は、日本語版Windows ServerのServer Coreインストール環境をオンプレミスで新規インストールしたものと比較しながら、筆者が試行錯誤をして得た手順です。実際には必要のない設定が含まれる可能性がありますし、より簡単な方法があるかもしれません。
この手順では、Windows Serverの各バージョンに対応した言語パックを必要とします。言語パックのISOイメージは一般公開されていません(Windows Server 2019/Windows Server, version 1809用の言語パックに限り、こちらのサポート情報ページから誰でも入手できます)。ボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)、Visual Studioサブスクリプション、OEMシステムビルダーなどに対してダウンロード提供されています。
Windows Server 2019およびWindows Server, version 1809には、「Windows Server 2019 Language Pack」のISOイメージに含まれるパッケージを使用します。Windows Server, version 1903と1909は共通で、「Windows Server, version 1903 Language Pack」のISOイメージに含まれるパッケージを使用します。日本語言語パックパッケージは、ISOイメージの「\x64\langpacks」ディレクトリにある「Microsoft-Windows-Server-Language-Pack_x64_ja-jp.cab」です。このパッケージが利用できることを前提に説明します。
Server Coreインストール環境は、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)のデスクトップ環境を削除した環境であり、ローカル環境では、コマンドプロンプトやWindows PowerShellのコマンドラインから管理操作を行います(例外的に「メモ帳」や「レジストリエディター」など、幾つかのGUIツールを搭載しています)。
しかし、Windows Server 2019およびWindows Server, version 1809からは、「Server Coreアプリ互換性オンデマンド機能(Server Core App Compatibility Features on Demand)」が利用可能になり、「エクスプローラー」や幾つかの「Microsoft管理コンソール(MMC)」「Internet Explorer 11」がServer Coreインストールでも利用可能になりました。
Server Coreアプリ互換性オンデマンド機能を追加しておくと、ダウンロード操作やファイル操作、ISOイメージのマウント、ディスクの管理、その他の管理操作が楽になります。この機能は、Windows PowerShell(コマンドプロンプトから「start powershell」と入力して開始できます)で、以下のコマンドラインを実行してOSを再起動することで、オンラインで追加することができます(画面2)。
Add-WindowsCapability -Online -Name ServerCore.AppCompatibility~~~~0.0.1.0 Add-WindowsCapability -Online -Name Browser.InternetExplorer~~~~0.0.11.0 Restart-Computer
Azure仮想マシンのWindows Serverを再起動したら、Server Coreインストール環境に日本語言語パックをインストールします。
Azure仮想マシンに言語パックのISOイメージ(約2.5GB)をダウンロードして、Windows PowerShellの「Mount-DiskImage」コマンドやServer Coreアプリ互換性オンデマンド機能で追加されたエクスプローラー(Explorer.exe)を使用してISOイメージをローカルマウントしてもよいのですが、既に手元にISOイメージがある場合は「\x64\langpacks」ディレクトリにある「Microsoft-Windows-Server-Language-Pack_x64_ja-jp.cab」をリモートデスクトップ接続経由でコピーする方が早いです。このパッケージファイルだけなら60MB程度のサイズのコピーで済みます。
エクスプローラー(Explorer.exe)が利用可能な場合は、コピー先のディレクトリを開いて、ローカルから言語パックパッケージをコピー&ペーストします。
アプリ互換性オンデマンド機能をインストールしていない場合は、リモートデスクトップセッションでローカルドライブを参照できるようにして、リモートセッションから「\\TSCLIENT\<ドライブ文字>」の共有パスを利用してコピーすればよいでしょう。
「メモ帳」(notepad.exe)を起動して「File」メニューから「Open」をクリックし、「Open」ダイアログボックス内にコピー先のディレクトリを表示させて、コピー&ペーストするという方法もあります(画面3)。
日本語言語パックパッケージの準備ができたら、「Lpksetup.exe」を実行して「Install or uninstall display languages(表示言語のインストールまたはアンインストール)」ウィザードを開始し、日本語言語パックパッケージを選択してインストールします(画面4)。
Lpksetup.exeを使用せずに、コマンドプロンプトでDISMコマンド、またはWindows PowerShellの「Add-WindowsPackage」コマンドレットで言語パックをインストールすることも可能です。
DISM.exe /online /Add-Package /PackagePath:<パス>\Microsoft-Windows-Server-Language-Pack_x64_ja-jp.cab
または
Add-WindowsPackage -Online -PackagePath <パス>\Microsoft-Windows-Server-Language-Pack_x64_ja-jp.cab
日本語言語パックのインストールが完了したら、Windows PowerShellを開き(コマンドプロンプトで「start powershell」と入力します)、日本語サポートに関連する幾つかのオンデマンド機能を次のコマンドラインでインストールします(画面5)。これらの機能はServer Coreでは不要かもしれませんが、日本語版のWindows Server 2019 Server CoreやWindows Server SACには既定でインストールされています。
Add-WindowsCapability -Online -Name Language.Basic~~~ja-JP~0.0.1.0 Add-WindowsCapability -Online -Name Language.Fonts.Jpan~~~und-JPAN~0.0.1.0 Add-WindowsCapability -Online -Name Language.Handwriting~~~ja-JP~0.0.1.0 Add-WindowsCapability -Online -Name Language.OCR~~~ja-JP~0.0.1.0 Add-WindowsCapability -Online -Name Language.Speech~~~ja-JP~0.0.1.0 Add-WindowsCapability -Online -Name Language.TextToSpeech~~~ja-JP~0.0.1.0
続いて、Windows PowerShellのコマンドラインで表示言語や入力言語、システムロケールを「日本語(日本)」に、地域と場所を「日本」、タイムゾーンを「UTC+09:00 大阪、札幌、東京」に変更し、OSを再起動します。詳しい説明は省きますが、以下のコマンドラインをそのまま実行するだけです。
Set-WinUILanguageOverride ja-JP Set-Culture ja-JP $mylang = New-WinUserLanguageList ja Set-WinUserLanguageList $mylang Set-WinDefaultInputMethodOverride "0411:{03B5835F-F03C-411B-9CE2-AA23E1171E36}{A76C93D9-5523-4E90-AAFA-4DB112F9AC76}" Set-WinHomeLocation -GeoID 122 Set-TimeZone -Id "Tokyo Standard Time" Set-WinSystemLocale ja-JP Restart-Computer
再起動後、ログインするとコマンドプロンプトの既定のコードページが「932(ANSI/OEM - 日本語Shift-JIS)」に、フォント設定が「MSゴシック」に変更されるなど、日本語化が完了していることを確認できるはずです。
もし、完全に日本語化されていない場合は(表示言語が英語のままなど)、ここでもう一度、Windows PowerShellのコマンドラインで表示言語や入力言語の設定を行い、ログオフします。再度ログオンすると、表示言語が日本語に切り替わるはずです。
Set-WinUILanguageOverride ja-JP Set-Culture ja-JP $mylang = New-WinUserLanguageList ja Set-WinUserLanguageList $mylang logoff
現在のユーザーだけでなく、新しいユーザーや「ようこそ」画面(システムアカウント)でも日本語を既定にしたい場合は、「intl.cpl」と入力して「地域」ダイアログボックスを開き(Server Coreインストールで最初から利用できる数少ないGUIツールです)、「管理」タブの「ようこそ画面と新しいユーザーアカウント」にある「設定のコピー」ボタンをクリックして、「ようこそ画面とシステムアカウント」と「新しいユーザーアカウント」をチェックし、「OK」ボタンをクリックして、OSを再起動します(画面7)。
「ようこそ」画面とシステムアカウントの日本語化は、ローカルコンソールにアクセスできないAzureでは無意味に思えるかもしれませんが、Azureポータルの仮想マシンのブート診断のスクリーンショットやシリアルコンソールが日本語化されます。
最後に、「Sconfig」ツールでWindows Updateを実行し、最新の品質更新プログラムが検出されたらインストールして再起動してください。言語パックを追加した場合、インストール済みの品質更新プログラムが再度、インストール対象として検出される場合があります。
Windows Server 2019のServer Coreイメージ、およびWindows Server, version 1809については、今回紹介した手順で表示言語、入力言語、システムロケールを完全に日本語化できます。
しかし、Windows Server, version 1903および1909については、MS-IMEによる日本語入力や変換ができないという問題を筆者は確認しています。その影響からか、前出の画面7では、本来「入力言語:日本語(日本)- Microsoft IME」と表示されるはずですが、「入力言語:設定を読み取れませんでした」と表示されます。
日本語入力や変換ができない問題は、日本語版のWindows Server, version 1903および1909を通常の方法で新規インストールした場合でも同様に発生するため、今回紹介した手順の問題ではなく、製品の問題と考えています(2019年12月までの品質更新プログラムでは修正されていません)。
リモートセッション内での日本語のコピー&ペーストや、RDP接続経由でのローカルからリモートへの日本語のコピー&ペーストは可能なので、それで代替してください。Azure仮想マシンのシリアルコンソールを利用する場合、MS-IMEは接続元のものが使用されるので日本語入力が可能です(画面8)。また、「PowerShell Remoting」を利用可能にすれば、「Enter-PSSession」コマンドレットによるリモートセッションへの対話接続でも同様に接続元のMS-IMEを用いた日本語入力が可能です。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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