「C:\Windows」ディレクトリ配下にあるWindowsコンポーネント(システムファイル)は、「コンポーネントストア」と呼ばれる「C:\Windows\WinSxS」ディレクトリ内のファイルへのリンク(ハードリンク)です。そのことを知っていると、どの時点の更新プログラムでコンポーネントが現在のものに置き換えられたのか調査することができます。
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筆者の個人ブログの読者から、2020年6月の月例セキュリティ更新の前後で、Windows Updateのポリシーテンプレートが更新され、「自動更新を構成する」に新しいオプションが追加されたという情報を頂きました。その時点でまだ6月の更新を開始していないコンピュータで確認してみると、該当のオプションは既に利用可能になっていました。どうやら、もっと前から追加されていたようです。
新しいオプションとは、「コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update」にある「自動更新を構成する」ポリシーの設定に、新たに追加された「7 - 自動ダウンロード、インストール時に通知、再起動を通知」の選択肢です(画面1)。
「Windows Server 2016」の場合は日本語化されておらず、「7 - Auto Download, Notify to install, Notify to Restart」と表示されます。この新しいオプションの詳細については、今のところポリシー設定のヘルプにある説明しか見つからないため、何も言えることはないのですが、Windows Server 2016以降のサーバ専用オプションのようです。また、通知が関連しているので、おそらくWindows Server 2016および「Windows Server 2019」のデスクトップエクスペリエンス環境を対象としたものと筆者は想像しています。
2020年6月時点でサポートされる全ての「Windows 10」とWindows Server 2016以降で確認したところ、「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」および「Windows Server, version 2004」は最初から新しいオプションが存在しました(Server CoreであるWindows Server, version 2004に適用できるかどうかは不明)。
以前のバージョンに関しては、「長期サービスチャネル(LTSC)」であるWindows Server 2016とWindows Server 2019、これらと同じビルドベースのWindows 10 バージョン1607とバージョン1809に新しいオプションが存在しました。
新しいオプションが対象OSにいつ追加されたのか気になったので、そのタイミングを調べてみることにしました。ポリシー設定の新しいオプションは、管理用テンプレート「C:\Windows\PolicyDefinitions\WindowsUpdate.admx」とその言語ファイル「C:\Windows\PolicyDefinitions\ja-jp\WindowsUpdate.adml」の置き換えによって行われたはずです。そして、管理用テンプレートが知らない間に置き換わるとしたら、毎月の「品質更新プログラム」のときしかありません。
毎月1回品質更新プログラムのインストールを欠かさず行っているWindows Server 2019とWindows 10 バージョン1809でこれらのファイルの日付を確認すると、特定の日時ではなく、そのコンピュータで2020年4月の更新プログラムをインストールしたと思われる日時になっていました(画面2)。
一方、Windows Server 2016の場合は「2012年12月19日」で共通でした。つまり、ファイルの日付だけでは、オリジナルのファイル作成日時なのか、置き換えられた日時なのかを判断できません。正確に知るには、1つずつ累積更新プログラムをアンインストールしては再起動を繰り返すしかないのでしょうか。
アンインストールせずに変更時期を調べるために、Windows Sysinternalsの「FindLinks」ユーティリティーを使用してみます。Windowsコンポーネントストア「C:\Windows\WinSxS」ディレクトリ内にある「WindowsUpdate.admx」から、何かしらの情報を入手できると考えました。
FindLinksは、同じファイルを参照するハードリンクを検索するユーティリティーです。例えば、32bit版の「メモ帳(notepad.exe)」のコピーは1つしか存在しませんが、複数の場所からハードリンクで参照されます。同じように、64bit版のコピーも1つあり、ハードリンクで複数の場所から参照されます(画面3)。
Windowsは、Windowsコンポーネントをコンポーネントストア「C:\Windows\WinSxS」に配置して集中管理し、ハードリンクを利用して「C:\Windows」や「C:\Windows\System32」のパスで参照できるようにしています。そして、Windowsの品質更新プログラムは、コンポーネントストアを更新し、ハードリンクを付け替えることで、最新バージョンへの更新や、更新プログラムのアンインストールによる以前のバージョンへのロールバックを可能にしています。
FindLinksユーティリティーを以下のように実行し、ハードリンクを調べてみると、OSビルド番号「17763.1131」の情報を得ることができました(画面4)。
findlinks C:\Windows\PolicyDefinitions\WindowsUpdate.admx
以下のWindows 10のリリース情報ページで確認すると、OSビルド番号「17763.1131」は2020年3月中旬のオプションの品質更新プログラム(Cリリース)が該当します。オプションの品質更新プログラムはインストールしていないため、やはり2020年4月の品質更新プログラムで現在の「WindowsUpdate.admx」に置き換えられたように見えます。
同じ方法でWindows Server 2016の場合を調べてみたところ、現在の「WindowsUpdate.admx」はOSビルド番号「14393.3471」で、これは2020年1月のオプションの品質更新プログラム(14393.3474)以降に含まれると考えられます。月例では2020年2月の累積更新プログラム(14393.3504)からとなります。
Windows Server 2016とWindows 10 バージョン1607が2020年2月、Windows Server 2019とWindows 10 バージョン1809が2020年4月の月例の品質更新プログラムで「WindowsUpdate.admx」に置き換えられたという調査結果に、筆者は少し納得がいきません。同時期に行われた方が自然なような気がします。
そこで、2020年6月の品質更新プログラムまでインストールされているWindows 10 バージョン1809の仮想マシンから、品質更新プログラムのアンインストールを繰り返し、「WindowsUpdate.admx」が置き換わった本当のタイミングを確認してみることにしました。
まず、最後の品質更新プログラムのアンインストールと再起動を3回繰り返し、2020年3月の時点にまで戻します。問題の「自動更新を構成する」ポリシーを確認してみると、既に新しいオプションが存在します。ただし、日本語化されていません(画面5)。
FindLinksユーティリティーで再び調べてみると、OSビルド番号「17763.1007」という新たなヒントが見つかりました。このビルド番号は2020年1月のオプションの品質更新プログラム(17763.1012)以降に含まれると考えられます。月例では2020年2月の累積更新プログラム(17763.1039)からとなります。このタイミングは、Windows Server 2016とWindows 10 バージョン1607と一致します。
続いて、最後の品質更新プログラムのアンインストールと再起動をさらに2回繰り返し、2020年1月の時点にまで戻します。問題の「自動更新を構成する」ポリシーを確認してみると、新しいオプションは存在しません(画面6)。
FindLinksユーティリティーを利用した今回の調査は、現在のコンポーネントが置き換えられたタイミングを正しく判断できましたが、そのタイミングは新しいオプションが追加されたタイミングではありませんでした。繰り返し置き換えられたコンポーネントを、過去にさかのぼって調査することはできないということです。また、コンポーネントのファイルの日時はヒントにはなりますが、そのままうのみにはできないことも分かりました。
この調査後に知ったのですが、「自動更新を構成する」ポリシーの新しいオプションと同じようなタイミング(バージョン1809は2020年4月の品質更新プログラム)で、Windows 10 バージョン1803から1909の「Windows Update for Business」のポリシー(WindowsUpdate.admxの一部)に「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」という新しいポリシー設定が追加されていました。
この新しいこのポリシー設定は、Windows 10 バージョン2004には最初から存在します。Windows Server 2019とWindows 10 バージョン1809が2020年4月の月例の品質更新プログラムで「WindowsUpdate.admx」に置き換えられたと判断してしまったのは、この新しいポリシーのための変更を拾い上げてしまったようです。
この新しいこのポリシー設定については前回(第183回:Windows 10 May 2020 Update後のWindows Updateに変化あり)も触れましたが、別の機会にあらためて検証します。
最後に、Windows Serverだけに追加された謎のオプション「7(自動ダウンロード、インストール時に通知、再起動を通知)」の挙動ですが、2020年7月の月例の更新日に確認してみました。
ダウンロードが完了し、インストールの準備ができたときのアクションセンターの通知は、オプション「3」では「いくつかの更新プログラムが必要です」、オプション「7」では「You need some updates」と英語になるだけで、これといった違いはありませんでした。残念ながらこの機能はまだ日本語化されていないようです。今後、日本語化されるのかどうかは分かりません。
再起動待ちになったときの「設定」アプリの「Windows Update」画面でのメッセージはオプション「3」では「デバイスは、アクティブ時間以外の時間に再起動されるようにスケジュールされています(Windows Server 2016の場合)/お使いのデバイスは、アクティブ時間外に再起動されます(Windows Server 2019の場合)」で、オプション「7」では「When you are ready to install the latest update, select Restart now.」でした。新しいオプション「7」は、アクティブ時間外の自動的な再起動を回避できるオプションということでした(画面7)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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