ジュニパーネットワークスは、同社のAI機能「Mist」を無線LAN、有線LANに加え、WANに拡張した。これで機械学習/AIにより自律運用ネットワークを目指す同社の取り組みは、全ての構成要素がそろったことになるという。
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ジュニパーネットワークス(以下、ジュニパー)は2020年8月4日、機械学習/AIを活用したネットワーク状況の可視化およびトラブルシューティング支援機能「Mist」をWANに適用した、「Juniper Mist WAN Assurance」を国内発表した。また、ネットワークにおけるトラブルの原因などを音声で問い合わせできる「Marvis」の対話型インタフェースも併せて発表した。
ジュニパーはさらに、Wi-Fi 6対応の無線LANアクセスポイント新製品4機種、Mistの分析・可視化機能を活用してコンタクトトレーシングや顧客の動線分析が行える「Mist Premium Analytics」を紹介した。
Mistは、Juniper Networks(以下、Juniper)が2019年に買収した無線LANベンダーMist Systemsが製品に組み込んでいたクラウド型の運用支援技術が原型。ネットワーク機器の状態監視だけでなく、ユーザーエクスペリエンスに着目して、トラブルの発生を、場合によっては事前に警告する。また、相関分析を通じた原因の推定およびワンクリックでの対策の適用を通じ、ユーザーからの不満が出る前に問題を解決することを目指している。Juniperはその後、無線LAN製品に加えて同技術を有線LAN製品に適用し、今回さらにWAN製品へと広げた。
Juniperのエンタープライズ担当上級副社長、スジャイ・ハジェラ氏は、「これで(自社の提唱する『AIドリブンエンタープライズ』の)全構成要素が出そろった」と説明した。
Mist WAN Assuranceでは、Juniperが現在、SD-WANルータとしても展開している「SRX」からのテレメトリー情報をMistに取り込むことにより、社内の無線LANアクセスポイントや有線LAN機器からの情報と合わせて、総体的な可視化およびトラブルの予防ができるという。
「ルータの稼働状況ももちろんチェックできるが、ユーザーエクスペリエンスの確保ができるところに、一般的な管理ツールとの違いがある」(ハジェラ氏)。Mistでは、「接続にかかる時間」「スループット」「遅延」など多様な項目をモニターすることで、同社が「SLE(Service Level Expectation)」と呼ぶ指標をはじき出し、これが一定の値以下に低下した場合には、アクションにつながる警告を発行するようになっている。
一方、「Mistの管理者用コンソール」とも呼べるMarvisでは、今回自然言語による問い合わせに答える機能を搭載した。
ジュニパーは今回、「AP63」「AP33」「AP32」「AP12」と4機種のWi-Fi 6対応無線LANアクセスポイントを紹介した。これでWi-Fi 6対応無線LANアクセスポイントは5機種、その他の無線LAN/Bluetooth製品を含めると9機種が出そろった。特にWi-Fi 6対応製品は、教育機関、小売業、物流業、医療機関、公共機関など、多様な用途でWi-Fi 6のメリットを提供できるとしている。
関連して、ジュニパーは2020年4月30日にリリースしたPremium Analyticsについて説明した。これは無線LAN/Bluetooth/ビーコンで把握したユーザーのきめ細かな位置情報データを基に、行動分析ができるソリューション。小売業における訪問客の動線分析は、この種のソリューションでよく挙げられる用途だが、ジュニパーでは感染症(COVID-19)の職場感染に対応するための接触履歴追跡でも利用できると説明した。
在宅勤務対応では、「Enterprise @Home」というユニークなソリューションを展開している。これは在宅勤務者の家庭にMistの無線LANアクセスポイントを設置し、インターネット接続するだけで、オフィスとの間で自動的にVPN接続を確立、ユーザーは職場と同じ業務環境が使えるというもの。無線LANアクセスポイントに有線でIP電話を接続すれば、在宅コールセンターも即座に実現できるという。
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