セブン-イレブンは全社的な統合データ活用基盤「セブンセントラル」を、Google Cloud Platform(GCP)上で構築中だ。同社は2020年9月16日、これについて説明した。
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セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)がGoogle Cloud Platform(GCP)上に、全社データ活用基盤を構築した。第1弾として、全国の店舗からPOS/在庫データをリアルタイムで集約し、即座に活用できる仕組みが稼働し始めているという。
セブン-イレブンはITの戦略的な活用で、以前から広く知られてきた。1980年代の戦略情報システムブームでは、その成功例の筆頭に挙げられたほどだ。だが、その同社も、デジタルトランスフォーメーションの文脈では、多くの一般企業が悩む課題と無縁ではなかった。
社内外のさまざまなデータを機動的に活用し、不確実な環境の中でビジネスを支え、柔軟に新たな商品やサービスを開発していく必要がある。セブン-イレブンの場合、新商品・新サービスの創出やサプライチェーンの改善を支える他、店舗システムの刷新、店舗の立地を勘案したビジネスの最適化などに関して、社内外のステークホルダーと、経験やノウハウを共有できる基盤が求められるという。
データを活用するユーザーは全社員、加盟店、セブン&アイグループ、そして将来的には社外の取引先などにまたがっていかざるを得ない。またデータは人が「分析」するだけでは済まなくなり、各種デジタルサービスへの直結が求められてくる。
しかし当然ながら、既存のITでは、データがPOSシステム、基幹システムなど、多様なシステムに散在している。また、データとビジネスロジックは分離されていない。データ活用は各システム担当のITベンダーへ完全に依存する状態だったと、セブン-イレブン システム本部 副本部長の西村出氏は話した。
「これまでのように『ベンダーにおんぶにだっこ』では限界がある。アーキテクチャからベンダーと一緒に構築し、主体的に使っていくことのできる新しい仕組みに挑戦したかった」(西村氏)
そこで同社では、クラウド上でデータを統合管理し、機動的に活用するデータ活用基盤、「セブンセントラル」を構築することにした。
セブンセントラルでは、店舗のPOS/在庫データ、基幹システム上のマスターデータ、社内データセンターにある静止画/動画、他クラウド上の業務データなどをほぼリアルタイムでクラウドに蓄積し、既存・新規の多様なサービスにつなげていくことを目指している。
セブン-イレブンでは、まずデータ統合先のクラウドとしてGCPを選択し、構築パートナーにはGCPに関するインテグレーションの実績と評判から、クラウドエースを選んだという。
セブンセントラルは2019年から構想を進め、2020年春から約半年で構築、2020年9月1日に第1弾をローンチした。なお、クラウドエースは、「セブン-イレブンと共に構築を行うことで、ノウハウを移転することを目的としていた。最も苦労した点は、COVID-19の影響で、この共同構築作業を当初からリモートで実施せざるを得なかったこと。それでもスケジュール遅延なくプロジェクトを進行できたのは、両社が目線を合わせられたことにあると考えている」とコメントしている。
この第1弾では、セブン-イレブンが全国に展開する約2万1000の全店舗から、リアルタイムでPOS/在庫データを転送し、GCP上のデータレイクに集約している。最短では数分のタイムラグで活用ができるようになっているという。
活用というのは、BIツールなどを使ってデータの可視化や分析ができるよう、データウェアハウス上でデータマートが準備されているということだ。現時点でも店頭における購買や在庫のデータは、ほぼリアルタイムで把握できることになった。
セブン-イレブンでは約3万の拠点からPOSデータをGCPに転送する実験も実施済みだ。西村氏は、各拠点からのデータ転送から、分析のためのデータ準備の完了までに1時間程度かかるのではないかと考えていた。いざテストをしてみると、約10分、早い時では数分で全プロセスが終了したので、驚いたという。
セブンセントラルは提供開始して間もないため、まだユーザーがどのように活用していくかは未知数だが、POSデータをほぼリアルタイムで確認することで、既存業務が改善できるという。
「今後展開する新たなサービスでも、リアルタイムな店舗在庫情報を活用する」(西村氏)
セブンセントラルの構築では、過去の反省に基づき、複雑なスパゲティ状態になりやすい仕組みは避け、「シンプル」をモットーとした。データについては、無差別にあらゆるものを取り込むわけではない。「汎用(はんよう)性」「即時性」「独自性」という3つの原則を満たすデータのみを、この基盤に載せることとした。
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