2020年10月初め、Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)に3回目のオプションの更新(Cリリース)が提供されました。過去3回と同様、Windows 10 バージョン1809〜1909から1週間以上(今回は15日)、大幅に遅れての提供です。Windows 10 バージョン2004におけるCリリースのインストール挙動は、やはり何かおかしいです。幾つかのパターンで試してみました。
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本連載第186回では、「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」で発生したWindows Updateの挙動の変化というか、不可思議なところを指摘しました。
“おかしい”というのは、特に「Cリリース」と呼ばれるオプションの更新プログラム「累積更新プログラムのプレビュー」のインストールに関してです。
Windowsと.NET Framework向け累積更新プログラムのプレビュー(以下、Cリリース)の日本語表記がおかしい件(Windows向けは「のプレビュー」が抜けている、.NET Framework向けはメチャクチャ)は、Windows 10 バージョン1809以降共通の問題なので別にして、筆者はWindows 10 バージョン2004のWindows Updateで以下のような事象(新仕様または不具合)を確認しています。
先に言っておくと、これらの事象(新仕様または不具合)は、2020年9月のCリリース時点でも状況は変わっていません。これらは、「Windows Server Update Services(WSUS)」や「Windows Update for Business(WUfB)」を利用していない環境下での、Windows Updateの挙動です。WSUSとWUfBに対して、WindowsのCリリースが提供されることはありません。
米国時間の2020年10月1日、他のバージョンから大幅に遅れて、Windows 10 バージョン2004に対してCリリースが提供されました。Cリリースは通常、月例のセキュリティ更新プログラムである「Bリリース」(第2火曜日)の翌週にリリースされ、対象となるWindows 10 バージョン1809以降の他のバージョンには米国時間2020年9月16日に既に提供済みです。
筆者が確認した3つの新仕様または不具合が、3回目のCリリースでどうなったか、いろいろなパターンをピックアップし、複数台の仮想マシン環境で複数回試してみました。
Cリリース後にWindows 10 バージョン1909以降で「設定」アプリの「Windows Update」にある「更新プログラムのチェック」をクリックすると、.NET FrameworkのCリリースがダウンロード、インストールされます(Windows Defender関連の更新やその他の更新がインストールされることもあります)。Windows 10 バージョン1809では、Windowsと.NET Framework両方のCリリースのダウンロード、インストールが始まります。
.NET FrameworkのCリリースのダウンロードとインストールを開始しようと、日本時間2020年10月2日にWindows 10 バージョン2004で「更新プログラムのチェック」をクリックしました。しかし、何も検出されずに「最新の状態です」にすぐに戻りました(画面1)。
例の「進行状況を表示しない問題」と思い、1時間以上様子を見ましたが何も変化がありません。関連するプロセス(Tiworker.exe)やダウンロード先(C:\Windows\SoftwareDistribution\Download)、ログ(C:\Windows\SoftwareDistribution\ReportingEvents.log)を確認してもCリリースのダウンロードやインストールが行われている形跡はありませんでした。PCを再起動してみましたが、その後の挙動は次に説明する「パターン2」と同じです。
ここで指摘しておきたいのは、「更新プログラムのチェック」のクリックは、サポート情報「KB4576945」で説明されているWindows Updateで.NET FrameworkのCリリースのインストールを開始する手順だということです。説明通りにやっても何も起こりませんでした。これが今回の固有の挙動なのかどうかは不明です。
パターン2では、「更新プログラムのチェック」をクリック後、「最新の状態です」に戻ったところで、通常の方法でWindowsを再起動してみました。再起動後、再び「設定」アプリの「Windows Update」を開くと、.NET FrameworkのCリリースのダウンロード、インストールが始まっていました(画面2)。
.NET Frameworkの累積更新プログラムやCリリースは、インストールを完了するために再起動が必要なこともあれば、再起動が要求されないこともあります。今回は再起動が要求されるPCと、されないPCがありました。
パターン1からパターン2の状況は、ユーザーが意図せず遭遇する可能性があるシナリオだと思います。「更新プログラムのチェック」をクリックして何もなかったと思いきや、翌日などWindowsを起動した際、勝手に更新プログラムのインストールが始まったように見えるでしょう。もし、再起動が要求される更新だった場合は、突然「デバイスは、更新するためにアクティブ時間外に再起動されます」という通知を目にすることになります。
パターン3は、WindowsのCリリースのダウンロードとインストールを開始する通常の操作です。「更新プログラムのチェック」には一切触れずに、「オプションの更新プログラムを表示」を開いて、WindowsのCリリースを選択し、「ダウンロードしてインストール」をクリックします。
「Windows Update」に戻ると、再び「最新の状態です」と表示され、「オプションの更新プログラムを表示」は消えてしまいます(画面3)。本連載第186回に指摘したように進行状況は表示されませんが、プロセスやログの活動状況を見ると、ダウンロードとインストールが進んでいることが分かります。
根気よく待っていると、突然、再起動の通知に切り替わります。このまま放置しておけばアクティブ時間外(既定では8〜17時の範囲外)に、作業中であっても問答無用で再起動が始まります。今回は「今すぐ再起動する」をクリックして再起動しました。
再起動完了後、再び「設定」アプリの「Windows Update」を開くと、何もしなくても.NET FrameworkのCリリースのダウンロードとインストールが始まっていました(画面4)。インストールを完了するために再起動が要求されることはありませんでしたが、パターン2の状況があるので再起動が要求される場合があるかもしれません。
つまり、「更新プログラムのチェック」をクリックしなくても、WindowsのCリリースをインストールすると、.NET FrameworkのCリリースのインストールも選択したことになるわけです(.NET FrameworkのCリリースがまだインストールされていない場合)。
パターン4は、「更新プログラムのチェック」をクリックし、その直後に「オプションの更新プログラム」からWindowsの累積更新のプレビューを選択して「ダウンロードしてインストール」をクリックする操作です。つまり、.NET FrameworkとWindowsの両方のCリリースのダウンロードとインストールを開始しているつもりの操作です。
すぐに「最新の状態です」に戻り、「オプションの更新プログラムを表示」は消えてしまいます(ドライバの更新プログラムが利用可能な場合、表示は残ります)。その後の挙動も、「パターン3」と全く同じ挙動を示しました。
パターン5は、パターン4の操作で「最新の状態です」に戻ったところで、すぐに通常の方法でWindowsを再起動した場合の挙動です。この場合、再起動後に.NET FrameworkとWindowsのCリリースのダウンロードとインストールが始まり、今回はWindowsのCリリースの方だけ、インストールを完了するために再起動が要求されました(画面5)。
パターン3の状況を考えると、「更新プログラムのチェック」をクリックしなくても、全く同じ挙動を示すはずです。別のPCでは、Windowsと.NET Framework両方のCリリースがそれぞれ再起動を要求し、一方がダウンロード中やインストール中の状態でも再起動可能な状態になりました(画面6)。
ダウンロードとインストール操作をしてすぐに再起動を開始した場合、恐らくWindowsのCリリースは「ダウンロードの準備中」か「ダウンロード中」といった状態でしょう。進行状況を表示してくれないため、どの段階にあるか知ることはできませんが、少し放置して「インストール中」のところまで進んでいれば、最初の再起動のところでWindowsのCリリースのインストールは続行され、再起動後は完了した状態になっているはずです。そして、.NET FrameworkのCリリースのダウンロードとインストールから再開することになると思います。
最後のパターン6は、以前のバージョンのWindowと同様に、意図した操作で期待通りにWindowsや.NET FrameworkのCリリースのダウンロードとインストールが行われるパターンです。
実はこの状況が再現する条件が不明なのですが、数日後に別のテスト環境でWindows Updateを手動実行したところ、おかしな挙動を示すことなくダウンロードとインストールが進み、再起動して完了するまでを経験しました。パターン1〜5との違いといえば、実行したのがリリースから数日後であること、Active Directoryドメインへの参加の有無(パターン1〜5はワークグループ構成)、ネットワーク設定の変更、更新と全く関係のない別の理由での複数回の再起動操作などです(画面7)。
いかがでしたでしょうか。Windows 10 バージョン2004のCリリースのインストールの挙動は何かおかしいでしょう。進行状況を表示してくれないので、開始してしまったことを知らずにシャットダウンや再起動してしまうユーザーは必ずいるはずです。そして、次回起動時に、開始した覚えがない更新プログラムのインストールが始まっているのです。一方、いつもパターン6のように問題なく動いていて、おかしな挙動なんて起きないという人もいるでしょう。
ちなみに、毎月のBリリースについては、Windows Updateの自動更新でも、「更新プログラムのチェック」をクリックした場合でも、期待通りのいつもの挙動でダウンロードとインストールが行われるので安心してください。また、WSUSやWUfBを利用している場合も影響ありません。
Windows Updateを利用している場合、Cリリースが提供されるWindows 10 バージョン1809以降、特にWindows 10 バージョン2004については、「更新プログラムのチェック」をクリックする時期に注意すれば、面倒なことに巻き込まれることはありません。なお、Windows 10 バージョン1803以前や「Windows Server 2016」については、Cリリースが提供されることはなくなったので「更新プログラムのチェック」に慎重になる必要はありません。ただし、Windows 10の古いバージョンには機能更新プログラムがやってくるかもしれませんが。
ところで、Windows 10 バージョン2004が一般向けにリリースされてから5カ月が経過しました。さらに次期バージョンの「Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)」も2020年10月中にリリースされる予定であり、もう安定してきているんじゃないかと考えているユーザーは多いと思います。
以下の既知の問題のリストを見ると、初期のころに比べて多くの問題が解決したように見えるかもしれません(残念ながら、新機能として機能強化されているはずなのに、MS-IMEの日本語入力に問題が発生しているところについては未修正です)。
Microsoftは、累積更新プログラムで修正される内容をサポート情報で公開しています、前月にCリリースがある場合、Bリリースにはセキュリティ関連の修正点しか記載されていないことに注意してください。Windows 10 バージョン2004のこれまでのCリリースのサポート情報で「Addresses an issue(問題を修正します)」という単語を検索してみると、2020年7月のCリリースが34件、8月のCリリースが64件、9月のCリリースが37件でした。次のバージョンが出るという時期にこの件数はどう捉えるかは、皆さんにお任せします。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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