レッドハットでソリューションアーキテクトを務める伊藤智博氏とMicrosoftでクラウドアドボケイトを務める寺田佳央氏が第3回にわたってクラウドネイティブを語る本連載。第1回はIT部門が変化の激しいビジネス要求に応えられるためどう組織を変化させるべきか。
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Web系テクノロジー企業の間で取り組みが広まっている「クラウドネイティブ」について、レッドハットのソリューションアーキテクトを務める伊藤智博氏とMicrosoftでクラウドアドボケイトを務める寺田佳央氏が語る本連載。第1回は、クラウドネイティブというメインテーマに入る前に、ビジネス部門とIT部門の変化を振り返る。
ここ数年でビジネス部門からIT部門への要求が大きく変化していると感じている担当者は少なくないと思います。総務省が発行した「令和2年版 情報通信白書」は、昨今のデジタル活用を以下のように記しています。
これまでもデジタル基盤の整備やデジタル技術の活用によるデジタル・トランスフォーメーションを通じて、産業の効率化や高付加価値化が進められ、その過程において、サイバー空間とリアル空間の融合が進んでいった。
人の生命保護を前提に社会・経済活動の維持を図り、未曾有の困難を乗り越えていく観点から、これまでオンライン化があまり進まなかった領域においても、デジタル化の波が押し寄せつつある。
つまり、ビジネス基盤がデジタルではなかった企業、産業がデジタルを重視するようになり「ビジネスに投入するまでの時間を短縮すること」「開発したシステムが止まらないこと」「開発と運用のコストを適正化すること」を望むようになってきたのです。
振り返ってみると、ビジネスの変化が緩やかだった時代、ユーザーの要望は限られていました。時間をかけて要件を定義しシステムを構築することが効率的だとされていました。
しかし、現在のビジネスは以前と比べて非常に速く変化しています。今日の時点で正しかったことが明日どうなっているか誰にも予測できません。昨今は新たなビジネスモデルで顧客に価値を提供するDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現も急務とされ、ビジネス部門の要望も多様化しています。
ITがビジネスにもたらす影響も変化しています。以前はビジネスに関わる人数の変化も緩やかで、必要なリソースも容易に予測できました。システムが止まったとしても人や紙で代替したり、復旧まで待機したりするだけで大きな問題にはなりませんでした。
現在はビジネスの中心がITとなり、システムの停止はビジネスの停止に直結します。よくあるのが、SNSなどメディアで紹介されて、一挙に想定を超えるユーザーがシステムにアクセスして停止するケースです。リソースの増強が間に合わずにシステムが停止してしまうと、顧客との接点を失いかねません。結果としてビジネスに対する信頼性の低下、企業評価に対する影響にまで及んでしまいます。こうした状況から、何があってもシステムの停止が起きないようにする、つまり顧客との接点を失わないようにしたいという思いが強くなってきています。また、ビジネスのはやり廃りが激しい中で、ニーズに応じてシステムを変化させたいという思いも強くなっています。
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