GoogleとIstio Steering Committeeが、サービスメッシュのIstioを、CNCFへの寄贈に向け申請したと発表した。申請が認められれば、2017年に発表されて注目を集めてきた技術が、ようやくCNCFのガバナンス下に移されることになる。
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GoogleとIstio Steering Committeeは2022年4月26日(米国時間)、Service MeshのIstioをCloud Native Computing Foundation(CNCF)に寄贈するための申請を行ったと発表した。 CNCFの TOC(Technical Oversight Committee:技術監督委員会)が承認すれば、IstioはCNCFのプロジェクトの1つになる。
Googleのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるチェン・ゴールドバーグ氏は、Google Cloudのブログで次のように説明している。
「Istioは、さまざまな組織が使うKubernetesエコシステムの主要コンポーネントで、CNCFの外にある最後のものだ。そのAPIはKubernetesとの親和性が高い。最近、KnativeをCNCFに寄贈したが、これに続いてIstioが受け入れられれば、われわれのクラウドネイティブスタックの同ファウンデーション下への移行が完了する。そして、IstioをKubernetesプロジェクトにさらに近づけることができる。また、CNCFに入ることで、コントリビューターや顧客が、他の最重要なクラウドネイティブプロジェクトと同様なサポートとガバナンスを示しやすくなる」
Istioは、サービスメッシュを実行するためのオープンソースソフトウェア(OSS)。サービスメッシュでは、マイクロサービス間の通信を制御し、可視化できる。これにより、セキュリティの向上や流量制御、スムーズなアプリケーションのアップデートや切り替えなどが行える。Istioは、マイクロサービスの横でプロセスとして動かす別のOSSであるEnvoyをプロキシとして使い、これを構成・制御する役割を果たす。
Googleは2017年、IstioをIBM、Lyftなどと共に2017年にOSSプロジェクトとして開発を始めた。当時既にLinkerdなどのサービスメッシュ技術はあったが、Googleが開発を主導しており、社内でも活用しているとされたこともあり、大きな注目を集めた。
参照記事:
新OSSプロジェクト「Istio」は、マイクロサービスのためのサービスメッシュを開発
「サービスメッシュ」「Istio」って何? どう使える? どう役立つ?
CNCFのプロジェクトでないにもかかわらず、CNCFのカンファレンスではIstioをテーマとした複数のセッションが開催され、パネルディスカッションでも盛んに議論された。同じくGoogleが開発を主導したコンテナオーケストレーションのKubernetes、サーバレスのKnativeと組み合わせ、「新たなクラウドスタックだ」と表現する人も出てきた。
だが、Istioが注目され、ユーザーが増えるにつれ、「なぜGoogleはIstioをCNCFのプロジェクトに加える申請をしないのか」という声が高まった。傘下のOSSプロジェクトのガバナンスを確保する役割を果たしているCNCFに移管すれば、このプロジェクトが特定の企業(この場合はGoogle)に左右されないという証となり、競合企業を含めて全てのユーザーが安心して使えるようになるからだ。
しかも、CNCF自体が、KubernetesをGoogleが寄贈し、そのエコシステムが広がるようにするために他社と協力して設立した団体だ。アプリケーションインフラのデファクトスタンダードともいえる存在になったKubernetesをCNCFに寄贈したのに、なぜIstioは寄贈しないのか。
その理由として、GoogleはKubernetesについて寛容な扱いをし過ぎたと考えているのではないかという意見が聞かれるようになった。その反省から、Knativeも含めて後続の重要プロジェクトをCNCFのガバナンス下に移したくないと考えているのではないか。
だが、Googleは最終的に、IstioにKubernetesと同じようなガバナンスを与えることを選んだようだ。Knativeは2021年にCNCFへ寄贈されたが、今回の申請が認められればIstioもCNCFの管理下となり、Kubernetes、Istio、Knativeが出そろうことになる。
ただし、CNCFはサービスメッシュのプロジェクトであふれている。2021年10月には、eBPFの利用で注目を集めるCiliumが加わった。
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