SB C&Sは、セキュリティベンダーのZscalerとのディストリビューター契約を締結した。セキュリティ分野でも成長が著しいゼロトラスト関連エコシステムのポートフォリオを拡充する。
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SB C&SとZscalerは2022年11月1日、ディストリビューター契約に伴い、共同記者発表会を開催した。前半は、Zscalerのグローバルアライアンス&チャネル 日本・アジア地域 ディレクターであるカマル・エルカイリ氏が、同社とZscalerの製品群を紹介した。
エルカイリ氏は同社のミッションについて「情報のやりとりが常にシームレスでセキュアである世界を目指す」と説明した。ZscalerはNASDAQ上場企業で、2021年度は10億ドルの売り上げを達成。前年比62%の成長を実現している。顧客の継続利用意向の指標である「Net Promoter Score」は一般的なSaaS企業の平均が30に対し、同社は70以上と高い値を獲得している。
科学、ヘルスケア、銀行、大手グループ企業などFortune 500社の40%がZscalerを利用しているという。ユーザー事例としてエルカイリ氏は「GE(General Electric)はZscalerを導入してユーザーエクスペリエンスを80%以上向上。NOV(エネルギー企業)は感染するマシンを35倍以上減少。Siemensは、インフラコストを70%以上削減した」と説明した。
従来、多くの企業がプライベートネットワークを使って、自社のデータセンターを接続する「城と堀」型のセキュリティ、ハブ&スポーク型ネットワークによって保護していた。このアプローチは、全てのアプリケーションがデータセンターにあるときは機能していた。現在は多くのSaaSが利用されており、データセンターだけでなくパブリッククラウドの利用も促進されているため、企業ネットワークも変革が求められるようになってきた。
エルカイリ氏は「ネットワークとアプリケーションの変革を実現するには、セキュリティトランスフォーメーションが必須要件となる」とし、Zscalerがこれを支援するとした。
Zscalerが提供する「Zero Trust Exchange」クラウドプラネットフォームは、大きく分けて4つの領域に分類できる。
1つ目は「サイバー脅威からの保護」で、ユーザー、デバイス、ワークロードを全体的にサイバー脅威から保護する機能群だ。2つ目は「データ保護」で、セキュアなIaaS、PaaS(CNAPP〈クラウドネイティブアプリケーション保護〉)、SaaSデータの保護、制御だ。3つ目は「ゼロトラストコネクティビティ」。ユーザーをネットワークに接続するのでなく、特定のアプリに直接接続する機能だ。4つ目は「デジタルエクスペリエンスの管理」で、エンドツーエンドのモニタリングでビジネスリスクの低減、ユーザー生産性の向上、コストの削減を支援する。
インターネットとSaaSのアクセス保護など、どこからでも安全かつ最適なパフォーマンスでアプリケーションにアクセスできる環境を提供することで、働き方改革や、M&A時の企業統合に役立てることができる。アプリケーションの利便性向上だけでなくIoT/OTシステムの保護や、B2B(Business to Business)顧客やサプライヤーのアクセス保護にも利用可能だ。
エルカイリ氏はZscalerが選ばれる理由について「セキュアなAny-to-Anyコネクティビティを実現するプロキシアーキテクチャ」「ユーザー、デバイス、ワークロード全体にわたる幅広い性能、深い機能性」「ガートナーの『マジック・クアドラント』での11年連続リーダーとしての評価」を挙げ、安心して長期的に利用するプラットフォームであることを示した。
SB C&Sとのディストリビューター契約についてエルカイリ氏は「SB C&Sの全国販売ネットワークを活用し、顧客ニーズや課題に応じ、Zscalerプラットフォームを他社のソリューションと組み合わせて独自ソリューションパッケージを提案し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援していきたい」とコメントした。
後半には、SB C&S ICT事業本部 ネットワーク&セキュリティ推進本部 ネットワーク&セキュリティ推進統括部 本美洋平氏が登壇し、同社の取り組みとZscalerとの契約がもたらす価値を説明した。
2021年に40周年を迎えたSB C&Sは、ソフトバンクの流通セグメントを担っており、従業員約1900人、売り上げ規模は5000億円の企業。法人向けとコンシューマー向け事業を展開し、4000を超えるベンダーと取引し、40万を超えるアイテムを販売している。同社は、「Value Added Distributor(付加価値提供型ディストリビューター)」であることを目指し、取り扱いベンダーや提供商品の領域を拡大してきた。
本美氏は、商品を扱うだけでなく、高い技術力を持つことも同社の特徴であるとし「国内でも有数のエキスパートレベルの資格保有者を持ち、各ベンダーの認定資格を非常に多く保有している。非常に尖(とが)ったエンジニアも在籍し、顧客をフォローアップする」と説明。導入前の支援から、導入後の保守まで手厚いサポートを提供する体制を整えているとした。
SB C&Sが近年注力している領域がゼロトラストセキュリティで、2020年から2023年にかけておよそ6倍の成長戦略を描いている。そのために同社では3つの課題に直面したという。1つ目は顧客のセキュリティに対する課題が多岐にわたる中、ソリューション作りが必要なこと。2つ目は、顧客がゼロトラストの取り組みを自走できるようになるまで伴走する支援メニュー。3つ目は、需要創造のため、新たなセキュリティの在り方であるゼロトラストの考え方を周知するためのマーケティング強化だ。
これらの課題を解消するために、営業、プロダクト担当によるプロダクト単位での提案を改め、課題を深掘り、整理して最適なセキュリティを支援するべくソリューションSEという役割を加え、顧客のゼロトラストの取り組みを支援する体制を構築した。本美氏は「パートナーまたはその先のエンドユーザーの課題をヒアリングして、数あるプロダクトの組み合わせに変換していく体制の中で、課題解決をしながら提案が可能となった」と語った。
ゼロトラストといっても、エンドポイント、「SASE」(Secure Access Service Edge)、パブリッククラウド、SaaS、SD-WAN、認証など、プロダクトの領域は多岐にわたる。本美氏は、Zscaler製品のディストリビューター契約は、SASEやパブリッククラウド、SaaSの領域のポートフォリオを補完するものであると説明した。
今後は、パートナー企業が提案しやすい環境を構築し、デジタルマーケティングを通じて見込み客を獲得し、パートナーとクロージングしていくサイクルを展開していく方針だ。
「実案件を通してパートナーのスキルやパフォーマンス向上の支援をすることによって、より多くのパートナーがZscaler製品を提案できる環境を作っていくことを目指したい」(本美氏)
Zscalerの強みはゼロトラストに関するエコシステムを強化できること。SB C&Sでは、ディストリビューターの立場を生かし、Zscaler製品に加え、エンドポイント保護、SD-WAN、認証、ログ解析、自動化などのソリューションを組み合わせて顧客課題の解決に取り組んでいく。
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