キンドリルジャパンは事業戦略記者説明会を開催し、新たに提供するデジタル統合プラットフォーム「Kyndryl Bridge」を紹介した。
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IBMのマネージドインフラストラクチャサービス部門を分社化、継続したKyndryl(キンドリル)の日本法人であるキンドリルジャパンは2022年11月30日、事業戦略記者説明会を開催した。同社の代表取締役 社長 上坂貴志氏が今後の事業展開を説明し、執行役員 最高技術責任者 兼 最高情報セキュリティ責任者の澤橋松王氏が新たに提供を開始する「Kyndryl Bridge」を紹介した。
キンドリルジャパンは2021年9月に事業を開始し、1周年を迎えた。上坂氏は1年を振り返って「弊社が目指す姿である『社会成長の生命線』を軸にして進め、今後社会の基盤となっていくITインフラストラクチャ、システム運用サービスを皆さまとともに成長させていくことができた」と述べた。全体の売り上げ業績も2%の成長と堅調だ。
6つの技術領域のうち、2022年は「デジタルワークプレース」が最も成長したという。直近の傾向として「アプリケーションデータ&AI(人工知能)」のニーズが増えてきたと明かした。
「運用サービスから共創型ビジネスへのシフトが加速した。『アドバイザリーと実装サービス(A&IS)』のビジネスが二桁の成長で進んでいる」(上坂氏)
上坂氏は、日本を取り巻くIT環境について「コロナ禍で日本の遅れが顕在化してしまった。デジタルタレントが63カ国中50位という状況だ。ビジネスアジリティも改善しなければならない」と説明した。
「このタイミングでしっかりとITインフラをアーキテクチャから変えていく。われわれは顧客との中長期契約に基づくインフラを支えていくという面で、現状の安心安定を支えるとともに、ITインフラの刷新に向かっていかなければならない」(上坂氏)
次に上坂氏は、ITインフラの運用現場の現状を説明した。ある現場では、1万件のバッチ処理を10人のオペレーターが毎晩監視しているという。別の現場では、報告書を提出するために毎月1500台のサーバにログインして稼働管理をし、手作業でまとめているそうだ。
上坂氏は上記のような例を紹介し「現場の状況を、未来に備えて変えていかなければならない」と述べ、システムがより複雑化しても、コストを踏まえ効率化を支えることができる新たなソリューション「Kyndryl Bridge」を紹介した。
「現在のITインフラを使用し続けながら、Kyndryl Bridgeを間に入れることで、データ活用や自動化ができるようにする。あらためてソリューションを入れ替える必要はない。ハードウェア障害を検知できたり、人的ミスの防止ができたりするため、日本の企業がもっとも大切にしている『品質』に役立つ。Kyndryl Bridgeでアジリティを上げていくことに取り組んでいきたい」(上坂氏)
今後の事業展開として上坂氏は、「技術領域を軸にモダナイズしていく。われわれがアライアンスを組んで支えることで、顧客が自由度を上げた形でCX(カスタマーエクスペリエンス)にまい進できるようにしていく。システム、ITインフラ面からのコンサルテーションと実証実験ができる環境を提供する。これらを軸に取り組むことが、キンドリルが顧客とともに社会成長の生命線になっていける鍵だと考えている」と話した。
続いて、澤橋氏がKyndryl Bridgeについて説明した。澤橋氏は、運用現場はまだ手作業が多いと指摘し、Kyndryl Bridgeで運用現場のデジタル化を支援するとした。
「何十年も前、駅の改札口には切符を切っている駅員がいた。今、ITインフラの運用を人で支えているのと似ている。Kyndryl Bridgeが目指すのは、自動改札機のようなITプロセスに変革することだ」(澤橋氏)
Kyndryl Bridgeがカバーする領域は「ツール」「プロセス」「人」から成るIT資源だ。ITの見える化、障害回復の時間の短縮、障害の未然防止、自動復旧を実現する。
Kyndryl Bridgeはデジタル統合プラットフォームとして、顧客が使用している既存のツールにインタフェースを提供し、顧客のIT環境にあるさまざまなデータを取り込む。例えば監視のアラート、クラウドのインシデント情報、障害情報などのデータを取得する。それらのデータをプラットフォーム上のデータレイクに蓄積して、機械学習にかけることで、今やるべきアクションのインサイトを提示する。
「クラウドサービスと連携してクラウド環境を操作したり、課金情報を取得してダッシュボードで確認したりするといった、IT環境の運営をデジタル化するプラットフォームだとご理解いただきたい」(澤橋氏)
澤橋氏はKyndryl Bridgeの特徴として次の4つを挙げた。
1つ目は、フルスタックのオブザーバビリティとインサイトだ。ITインフラからアプリケーションまでエンドツーエンドの可観測性を提供し、プロアクティブなインサイトをリアルタイムに提供する。
2つ目は、グローバルレベルのデータレイクだ。Kyndryl Bridgeのデータレイクはユーザーごとに導入するデータレイクではなくプラットフォーム上にあるデータレイクで、ここにさまざまな顧客のデータが世界中から集まり学習している。このようにグローバル規模でデータを活用している点が他のソリューションとは異なるところだという。
3つ目は、自動化マーケットプレース。月に2000万回を超える自動実行と5000を超える自動化アセットを備えたマーケットプレースを提供する。
4つ目は、広範なデータの取り込みだ。新たなツール導入や統合開発は不要で、既存ツールと連携する柔軟なインタフェースを用意している。
澤橋氏は、Kyndryl Bridgeを取り入れることで「IT環境全体がデジタル化して、運営そのものがソフトウェアに置き換わってくる」と説明。最後に「Kyndryl Bridgeは、今まで何十年も続いてきたITインフラの運用現場がガラッと変わるターニングポイントになるのではないかと考えている」とコメントした。
上坂氏は、ITインフラに特化したキンドリルの価値は2つあるとした。1つは、グローバルのベストプラクティスに基づく共創だ。もう1つは、ミッションクリティカルな現行システムをよく知る人材とともに次世代インフラを構築すること。そのためのアプローチとして、Kyndryl Bridge、「Kyndryl vital」「Kyndryl consult」がある。
最後に上坂氏は「さまざまな企業とのアライアンスを軸に事業を進めていきたい」コメントし、あらためて日頃の支援に感謝を述べた。
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