Dockerは「AIのPoCを成功させる9つのルール」と題したブログ記事を公開した。同社は「AIのPoCの多くは失敗するが、それは失敗するように設計されているからだ」と指摘している。
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Dockerは2025年9月15日(米国時間)、ブログ記事で「AI(人工知能)のPoC(概念実証)を成功させる9つのルール」を紹介した。AIのPoC(以下、AI PoC)は通常、経営陣向けのプレゼンテーションに最適化され、理想的な条件を整えた上で実施される。このため、「実運用に移行すると、コスト、データの質、スケーラビリティなどの面で立ち行かない」と同社は述べている。
Dockerによると、AI PoCで重要なのは、PoCの取り組みを「使い捨てのデモ」として扱うのではなく、「本番システムの最初のドラフト」として位置付けることだ。Dockerは、AI PoCに成功するチームの特徴として「リモーカル(Remocal)なワークフロー」を挙げる。これは「リモート(Remote)」と「ローカル(Local)」を掛け合わせた造語だ。
Dockerが説明するリモーカルなワークフローの例は以下の通り。
Dockerは、こうしたリモーカルなワークフローを基盤に、“現実に即した条件”の下でAI PoCを進めることを推奨している。その上で、「9つのルール」に従うことで、「本番環境にリリースし、スケーリングできるAIシステムを構築できる可能性が、大幅に高まる」としている。
同社が挙げる9つのルールは以下の通り。
PoCで「最大のモデル」「完全なデータセット」「網羅的な機能」は必要ない。「PCに収まるAIモデル」「実際に検査できるデータセット」「結果を一言で説明できる狭いスコープ」で実施すべきだ。そうした小さい規模で小さな成功を収め、それを積み重ねることで、評価者の信頼が得られる。
ログ、監視、バージョン管理は、PoCを実際のシステムに成長させるための基盤であり、後で追加する「あると便利なもの」ではない。最初からこれらの仕組みを整備しておくことが重要だ。
AI開発において重要なのは確実に再現でき、改善を続けられる仕組みや運用体制だ。そのため、インフラはテンプレート化し、プロンプトのテストはCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)に組み込み、AIモデルは適正な条件で比較できるようにする。また、既存のAIモデルは急速に進化し続けることを前提に設計すべきだ。
結果が一定ではない「非決定論」的なAIコンポーネントと、常に同じ結果を出力する「決定論」的なビジネスロジックを分離し、それぞれについて制御と検証のレイヤーを構築する。そしてリモーカルなワークフローで、それぞれをローカルで迅速なイテレーションを実施し、必要に応じてリモートリソースにバーストする。こうした運用体制を構築することが重要だ。
優れた機能や性能のアピールに走るのではなく、ビジネス上の課題に焦点を当て、測定可能な効果をユーザーにもたらす現実的な解決策を構築すべきだ。
最初から経済性を念頭に置き、各リクエスト、ユーザー、ワークフローのコストを把握することが重要だ。また、小規模モデルと大規模モデル、クラウドとローカル実行を定量的に比較評価し、両者のトレードオフを明確しておく必要がある。
PoCのさまざまな側面について責任者と責任範囲、ライフサイクルの管理法などを最初から明確にしておく。例えばシステムが夜間などの担当者が不在時にトラブルを起こした場合に、誰に連絡すべきか。AIモデルの性能低下や環境変化が見られた場合に誰がAIモデルの再学習を実施するのかなど。
リクエスト、ユーザー、ワークフローごとにコストを透明化し、厳格な予算上限と予算実行の停止ルールを設定する。「リモーカルなワークフローでは、これをスムーズに実現でき、コストが予測可能になる」とDockerは説明している。
AIに期待を寄せる経営幹部だけでなく、実際に作業するユーザーと共同で設計を進める。その際、AIの精度だけでなく、導入や作業時間短縮などビジネス効果や実用的な価値を測定することが重要だ。「最高のAI PoCでは、開発された新しいシステムはユーザーとの協力によって構築されているため、既存ワークフローの自然な拡張のように感じられるだろう」とDockerは説明している。
Q: Dockerが強調するワークフローとは?
A: 「リモーカル(Remocal)なワークフロー」で、ローカルで反復開発を実施しつつ、必要に応じてクラウドにバーストすることでコスト透明性と効率性を確保する。
Q: 9つのルールの概要は?
Q: Dockerが伝えたいメッセージは?
A: 本番移行を見据えた現実的なPoC計画とユーザー参加型の開発こそが、スケーラブルで持続可能なAIシステムの成功につながる。
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