中学校や高校時代は、興味の対象が多岐にわたっていった。
特に好きだったのは、言語。ドイツ語で短い物語や小説を書くことを楽しんだという。また、高校の後半からはコンピュータサイエンスにも興味を持ち、「Pythonでプログラムを書くこととか、コンピュータの動き方などを勉強するのも結構好きでした」という。
ゲームやコンピュータの動き方を「いつも不思議だと思っていた」ことが、この分野への探求心につながった。さらに生物学も好きで、「体とか花とか木の動き方とか」を勉強することに面白さを感じていた。言葉を操る能力、論理的に物事を構築するプログラミング、そして生命の仕組みへの探求心。これらが彼の知的好奇心の源であった。
高校時代の学習成績は、生物学やドイツ語を含めた言語科目が得意であったが、スポーツ関連など苦手な科目もあった。放課後は、「大体ゲームをしたり勉強したりしていました」と語るように、引き続きインドア派ライフを楽しんでいたようだ。
大学進学に当たり、カイさんは「強い決断をして」コンピュータサイエンス専攻を選んだ。さまざまな選択肢を検討したが、コンピュータサイエンスのコースが高い評価を受けており、規模も大きいことが決め手となって、地元のトリール応用科学大学(Hochschule Trier / Trier University of Applied Science)に進学することにした。「ゲームプログラムやゲームグラフィックスの授業がたくさんあった」ことも、ゲーム好きのカイさんにとっては大きな魅力であった。
彼は3年半で学士号を取得し、ドイツの一般的な4年制よりも早く卒業した。大学での学びは、最初の1年でアルゴリズム、Javaでのオブジェクト指向プログラミング、Pythonでのスクリプト作成といった基本的なコンピュータサイエンスの授業が多く行われた。
その後2年間で、ゲームプログラミング、C++、リアルタイムレンダリングなど、より専門的なゲーム関連の授業で深く学んだ。C++を用いてレンダリングを作成したり、Unityを操作したり、仲間と一緒にゲームを制作する経験も積んだ。
卒業論文では、C++とOpenGLを用いてグローバルイルミネーションのアルゴリズムを実装し、その検証を行った。イルミネーションという分野に興味を持ち、「チャレンジしてみたいなと思いました」と語るように、大学での学習は彼の技術的好奇心を深く刺激するものであった。
ドイツの歴史ある街で、ゲームと本に囲まれて育ったカイさん。考えることが好きな性格は、コンピュータサイエンスや生物学といった学問への深い探求心へとつながり、ゲーム開発への情熱は、幼少期から一貫して彼を導いてきた。
大学での専門的な学びを経て、彼は次なる大きな決断を下す。それは、異国の地「日本」でのゲーム開発への挑戦であった。後編では、彼がなぜ日本を選び、いかにして日本のゲーム業界で活躍の場を広げていったのか、その軌跡を追う。
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