【Office 2016/2019サポート終了】サブスクか永続版か? 損をしない次のOfficeの選び方・落とし穴Tech TIPS

Windows 10とともに、Office 2016/2019のサポートも終了した。そこで本Tech TIPSでは、永続版Office 2024の購入で損しない方法や、Microsoft 365の賢い購入方法などについて解説する。失敗しないための移行戦略を考えていこう。

» 2025年10月17日 05時00分 公開
[小林章彦デジタルアドバンテージ]
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対象:Microsoft Office


次のOffice「損しない」選び方と落とし穴 次のOffice「損しない」選び方と落とし穴
Windows 10とともに、2025年10月14日にOffice 2016/2019のサポートも終了した。そこで本Tech TIPSでは、永続版Office 2024の購入で損しない方法や、Microsoft 365の賢い購入方法などについて解説する。失敗しないための移行戦略を考えていこう。

 Windows 10のサポート終了の影に隠れてしまってあまり話題になっていないが、Microsoftは永続版の「Microsoft Office 2016/2019」のサポートを同日の2025年10月14日(米国時間)に終了している。今後、Office 2016/2019に対しては、脆弱(ぜいじゃく)性を解消するセキュリティ更新プログラムを含む全ての更新プログラムが提供されなくなる。

 Office 2016/2019ユーザーは、サポート終了で移行先を検討する必要がある。そこで本Tech TIPSでは、永続版Office 2024の購入で損しない方法や、商用利用可能なMicrosoft 365 Personal/Familyのメリット/デメリット、賢い購入方法などについて解説する。失敗しないための移行戦略を考えていこう。

そもそも永続版とは?

 Officeには、「永続版(旧パッケージ版)」「プリインストール版」「サブスクリプション版(Microsoft 365)」の3種類がある。

主なMicrosoft Officeの購入プラン 主なMicrosoft Officeの購入プラン

 永続版は、以前はパッケージ版とも呼ばれていたもので、1回の購入で使用し続けられるというものだ。プリインストール版は、PCとセットで購入するもので、永続版と同様、1回の購入でそのPCでのみ使い続けることができる。サブスクリプション版は、「Microsoft 365」と呼ばれているもので、毎月もしくは毎年、一定の料金を支払って使用する。

 Office 2016/2019は、永続版とプリインストール版で提供されていた。永続版では1つのライセンスで同一ユーザーが利用する2台のPCにインストール可能だ。一方、プリインストール版はセットで購入したPCでのみ利用可能という違いがある。

 どちらも1回の購入で永続的に利用できるものの、前述の通り、サポート期間が設定されている。永続版とはいえ、実質的には利用期間が限定されたものとなっている。

 Office 2013までは、メインストリームサポートが5年、延長サポートが5年の合計10年のサポートがあった。しかし、Office 2016から段階的に延長サポート期間が短くなっており、Office 2021では延長サポートが提供されなくなった。Office 2021/2024では、5年のメインストリームサポートのみの提供となっている。

バージョン サポート開始 メインストリームサポート 延長サポート
Office 2013 2014年2月25日 2018年4月10日 2023年4月11日
Office 2016 2015年9月22日 2020年10月13日 2025年10月14日
Office 2019 2018年9月24日 2023年10月10日 2025年10月14日
Office 2021 2021年10月5日 2026年10月13日
Office 2024 2024年10月1日 2029年10月9日
Microsoft Officeのサポート期間

 また、他社のアプリケーションではよくあるアップグレードオプションはなく、次のバージョンにアップグレードする場合は通常価格で購入する必要がある点にも注意が必要だ。

Office 2016/2019を使い続けるとどうなるの?

 Office 2016/2019はサポートが終了しても使い続けることは可能だ。ただし、前述の通り、セキュリティ更新プログラムが提供されないため、新たな脆弱性が発見されても修正されず、情報漏えいやマルウェア感染のリスクが高まる点には注意が必要だ。

 「Windows 10などのOS本体とは違って、Officeの脆弱性のリスクはそんなに高くないでしょ」という人がいるかもしれない。しかし、広く普及しているOffice製品の脆弱性は、攻撃者にとって悪用しやすい標的となる。「Office 2016のセキュリティ更新プログラムの説明:2025年9月9日(KB5002781)」のようにOffice製品に対する危険な脆弱性は見つかっており、こうした脆弱性が悪用された場合、PCが乗っ取られたり、ランサムウェアが仕込まれたりする危険性があるからだ。

2025年9月の更新プログラムで解消されたOffice 2016に対する脆弱性 2025年9月の更新プログラムで解消されたOffice 2016に対する脆弱性
Windows 10/11に比べると、Office製品に対する脆弱性の数は多くないものの、このように危険性の高い脆弱性が見つかることもある。Officeはユーザー数が多いことから攻撃者の標的となりやすい。更新プログラムを適用せずに使い続けるのは非常に危険だ。

Office 2016/2019の移行先の選択肢

 Office 2016/2019の移行先としては下表のような選択肢が考えられる。

選択肢 説明
永続版Office 2024 1回の購入で使い続けられる(サポート終了は2029年10月9日)
プリインストール版Office 2024 PCの買い替えと同時に選択する必要あり。同時購入のPCでのみ利用可能
Microsoft 365 最新のOfficeが使えるが毎年の支払いが必要
Google Docs Editorsスイート Webブラウザを使って無料で利用可能。ただし関数やマクロなどに互換性がない部分もある
Office互換ソフトウェア(LibreOfficeなど) Windows 11にインストールして利用可能。互換性がない部分もある
移行先の選択肢

永続版Officeの10%引きはお得?

 永続版として販売されているのは、Office Home 2024とOffice Home & Business 2024の2種類のみ。Outlookが含まれるかどうかの違いで、どちらも1人が2台のPCまで利用可能だ。日本では商用利用も可能となっている。Office Home 2024(Word/Excel/PowerPoint/OneNote)が3万4480円(税込)、Office Home & Business 2024(Word/Excel/PowerPoint/Outlook/OneNote)が4万3980円(税込)である。

 また、ExcelやWordなどの単体製品もある。単体製品の価格は、Microsoft Storeで2万2370円(税込)だ(価格は2025年10月現在)。

 前述の通り、Office 2021以降、延長サポートがなくなってしまったため、「安心して利用できる期間(以下、利用可能期間)」が5年と短くなっている。そこで、残りの利用可能期間から現在の「単純な価値」を考えてみよう。実際には、サポートが終了してもOffice 2024が使えなくなるわけではないので、価値が0円ということはないが、ここでは分かりやすくサポート終了で0円になるとして考える。

 Office 2024のサポート終了は2029年10月9日までなので、2025年10月現在、残りの利用可能期間は4年ということになる。単純に考えると、販売開始当初から利用可能期間は20%減っているので、Office Home 2024ならば2万7584円、Office Home & Business 2024ならば3万5184円より安くないと得ではないことになる。

 経験的に永続版のOfficeが20%を大きく超えるような値引きとなることはほぼないので、永続版は製品がリリースされた時点で購入するのが得ということになる(大幅に値引きされている場合は正規ライセンスではない可能性が高いので注意が必要)。

 量販店のセールなどで「10%引き」といった表示を見ると安くなったように感じるが、残りのサポート期間を考慮すると実は高い可能性もある。永続版やプリインストール版は、価格や値引き率だけでなく、残りのサポート期間も考慮した上で購入を検討した方がよい。

Office 2024の「単純な価値」のイメージ Office 2024の「単純な価値」のイメージ
サポート期間が5年と短いため、1年で20%の割合で価値が下がる。購入する際は、単純な販売価格だけでなく、残りのサポート期間も考慮する必要がある。

 同様にBTO(Build To Order)のPCでプリインストール版を同時購入するかどうかを判断する場合も、値引きと残りのサポート期間を考慮した方がよい。

Microsoft 365を導入するメリット/デメリット

 サブスクリプション版のMicrosoft 365は、家庭向け/一般企業向け/大企業向けの大きく3種類がある。ここでは量販店などでも購入可能な家庭向けのMicrosoft 365 Personal/Familyを対象として、その注意点などについて説明する。

 Microsoft 365 Personal/Familyは、「家庭向け」とされているが商用利用が可能で、一般企業においても利用可能となっている。Microsoft 365 Familyでは6ユーザーまでの利用が可能なので、小規模事業者の場合、安価に導入可能だ。

 Microsoft 365は、サブスクリプションのため、月もしくは年単位での利用料金の支払いが必要になる(年払いの方が割引があり得)。Microsoft 365 Personalの場合は2万1300円、Microsoft 365 Familyの場合は2万7400円となっている(どちらも年払いの場合)。

 Office Home 2024の半分以上の料金で1年しか利用できないので、価格だけを見るとMicrosoft 365 Personalは損ということになる。

 しかしMicrosoft 365 Personal/Familyは、Word/Excel/PowerPointなどのOffice製品の他、1ユーザー当たり1TBのOneDriveを利用できるというメリットもある。また、インストール台数には制限がなく、最大5台までの同時利用が可能となっている点も3台以上のPCを利用している人にはメリットとなるだろう。またMicrosoftのAI(人工知能)機能を利用する際に必要となるAIクレジットが毎月60クレジット提供されるという特典もある。

 一方、Microsoft 365 Personal/Familyはサブスクリプションのため、更新しないと全ての機能が利用できなくなるというデメリットもある。特にOneDriveは無料の5GBを超えた分については、期限を過ぎるとアクセスできなくなってしまうので注意が必要だ。

 Microsoft 365 Personal/Familyへ移行する場合は、こうしたメリット/デメリットを十分に理解してからにしよう。

Microsoft 365を少しでも安く導入するには

 Microsoft 365 Personal/Familyは、Amazonなどのセールで1年間のサブスクリプション料がオンラインコードとして安く販売されることがある。最近のセールでは、Microsoft 365 Personalが1万7000円前後、Microsoft 365 Familyが2万1000円前後と、だいたい20%引きとなっている。

 1年間のサブスクリプション期限が切れる前に、このオンラインコードを購入して支払えば、自動更新によってクレジットカードで支払うよりも安価に済ませることができる。

Office互換ソフトウェアなどは互換性に課題

 Tech TIPS「Googleスプレッドシート←→Excelの相互利用ガイド:関数やマクロの互換性に注意せよ」で解説しているように、GoogleスプレッドシートとExcelにはさまざまな互換性の問題がある。社内であれば、こうした互換性を回避した使い方によってGoogle Docs Editorsスイートに移行が可能かもしれない。しかし、外部から届くExcelファイルの場合は、「Googleスプレッドシートでうまく表示できないので確認できません」というわけにはいかない。

 Google Docs EditorsスイートやOffice互換ソフトウェアは、Linuxなどでも利用できるため、脱Windows OSとともに検討する価値はあるが、互換性の点でOfficeから完全に移行するのは難しいだろう。


 永続版Office 2016/2019のサポート終了は、単に永続版Office 2024への買い替えのタイミングではなく、Officeのライセンスを考え直すいいタイミングでもある。自分に合ったソリューションを選択してほしい。

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