英国のベンチャーキャピタルAir Street Capitalは、AI研究の最新動向や、AIが社会的、経済的にもたらす影響を分析した「State of AI Report 2025」を公開した。
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英国のベンチャーキャピタルAir Street Capitalは2025年10月9日(英国時間)、AI(人工知能)の研究動向、AIが社会、経済にもたらす影響をまとめた年次調査「State of AI Report 2025」を公開した。
同調査は、AIの進化に伴う社会的、経済的影響を分析し、AI技術の持続的かつ安全な発展を模索するための議論を促すことを目的としたものだ。Air Street Capitalによると、次の観点でAI技術を分析しており、業界や研究の第一線で活躍するAI専門家によるレビューも受けているという。
同レポートの主な内容は次の通り。
フロンティア領域(最先端分野)ではOpenAIの「GPT-5」モデルシリーズが依然としてベンチマークでリードし続けている一方、競争は激化している。特に、中国の「DeepSeek」「Qwen」「Kimi」といったオープンウェイトモデルが推論やコーディングタスクで急速に差を詰めており、これまで主要な対抗馬と見なされてきたMetaに代わり、信頼できる2位の地位を確立しつつある。
2025年はリーズニング能力が技術の進化を示す年となった。先端のAI研究所は強化学習や検証可能なリーズニングを組み合わせることで、計画、内省、自己修正を行い、より長期的なタスクを実行できる高度なモデルを開発している。
AIは単なるツールから「共同研究者」に進化しつつある。Google DeepMindの「Co-Scientist」は、自律的に仮説を立てて検証まで取り組めるようになった。生物学の分野では、モデルの性能が規模に応じて向上する「スケーリング則」が、タンパク質の分野にも適用可能であることが示された。
「Chain-of-Action(CoA:アクションの連鎖)」と呼ばれるアプローチを用いた構造化リーズニングがThe Allen Institute for AI(Ai2)の「Molmo-Act」やGoogleの「Gemini Robotics 1.5」に適用され、実体を持つAIシステムが行動をする前に段階的に思考できるようになった。
RampおよびStandard Metricsの調査によると、米国企業の44%がAIツールに支出しており(2023年の5%から増加)、平均契約額は53万ドルに達した。「AIファースト」のスタートアップは同業他社より1.5倍速く成長している。
1200人の回答者の内、95%が職場または家庭でAIを使用し、76%がAIツールを自費契約し、多くが生産性向上を実感している。本格的な導入が主流となったことを示している。
米国、アラブ首長国連邦(UAE)、中国などの政府系ファンドが支援するStargateのような数GW(ギガワット)級のデータセンターの建設計画は、AIが産業の中心となる時代の到来を象徴している。一方、この大規模化により、コンピューティング資源の制約は計算能力から電力供給へと移りつつある。
米政権が「米国第一主義」のAI行動計画を推進し、欧州のAI法は実効性に課題がある。対照的に、中国はオープンウェイトモデルのエコシステムを拡大し、半導体の国内開発を強力に推進している。
AIの安全性に関する研究はより実践段階のものとなりつつあり、「AIが人類に壊滅的な被害をもたらす」といった抽象的な議論から、AIシステムの信頼性やサイバーセキュリティ、AIエージェントのガバナンスといったより具体的で現実的な課題へと関心が移りつつある。
Air Street Capitalは、今後12カ月以内に次の10の出来事が起こると予測している。
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