Google Antigravityでアプリ開発はどう変わるのか エディタとエージェントマネジャーがもたらす新たな世界Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント

Googleが発表したAntigravityはAIエージェントを開発の中心に置いた新たな開発体験を提供しようとしている。その体験がどんなものか、どんな要素が組み合わさっているのかについて紹介します。

» 2025年12月01日 05時00分 公開
[かわさきしんじDeep Insider編集部]
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連載目次

 2025年11月19日にGoogleは「Antigravity」と呼ばれるエージェント指向開発プラットフォームを発表した。以下ではその概要をまとめていく。

Google Antigravityのリリース記事より引用 Google Antigravityのリリース記事より引用

 なお、本稿執筆時点(2025年11月27日)ではAntigravityはパブリックプレビューの段階かつGoogleの個人アカウントのみで使用が可能となっている。


HPかわさき

 どうも。HPかわさきです。

 今回は通常のDeep Insider Briefとは話の進め方がちょっと変わっていますが、こんなときもあるということで(笑)。

 皆さん、使っていますか、Antigravity? 筆者はインストールしてちょいちょい使っています。以下では使いながら感じたことをまとめてご紹介していきましょう。


Google Antigravityとは?

 「Antigravityの公式サイト」には「Experience liftoff with the next-generation IDE」とある。日本語にするならば「次世代のIDEで重力から解き放たれる瞬間を体験しよう」とでもなるだろう。これは従来のエディタやIDEを使った開発体験から一歩進んだ開発体験をAntigravityが提供しようとしていることを意味していると筆者は捉えている。

 ここでいう一歩進んだ開発体験とは、エージェントに「what」を伝えるだけで、エージェントが自律的に計画を立て、それらをより細かなタスクに分割し、その実装と検証を行ってくれるということだ。

 その核となるのがエージェントマネジャーだ。エージェントマネジャーは、従来のエディタとは別の視点でワークスペース(Antigravityにおける単一のプロジェクトまたは複数のプロジェクトをまとめた作業単位)を俯瞰するためのツール(サーフェス)となっている。一方、従来のエディタ部分は定評のあるVisual Studio Code(以下、VS Code)をベースとしているが、ここにも独自に強化されたAI支援機能が搭載されている。

2つの主要な要素:エディタとエージェントマネジャー

 以下ではエディタとエージェントマネジャーを中心に、Antigravityについて概観していこう。なお、実際にはエディタとエージェントマネジャーに次いで重要な要素として、Browserサブエージェントと呼ばれる機能もある(特にWebアプリの動作検証時には欠かすことができない)。これについては、後で軽く触れる。

エディタ

 エディタ部分についてはsupercompleteと呼ばれるエディタ中でカーソルがある近辺のコードについてコードの改善提案を提供する機能や、次にカーソルを移動させるべき場所を教えてくれる「Tab to jump」機能などが搭載されいて、コーディングがより快適に行えるようになっている。

 以下はTab to jumpが働いているところの例だ。

Tab to jumpが機能して、timeモジュールをインポートさせようとしているところ Tab to jumpが機能して、timeモジュールをインポートさせようとしているところ

 この例ではfibonacci関数を呼び出して、その実行速度をtimeモジュールのtime関数で計測しようとしているが、これをインポートし忘れている。そこで、「次にやることはここですよ!」とエディタ上部に「Tab to jump」と表示されている。この状態で[Tab]キーを押せば、入力候補も表示されるので、問題なければ[Tab]キーをもう一度押すだけでコードが補完されるというわけだ。

 Antigravityでコードに着目するときには、このようにVS Codeをベースとしたこれまでと同様+Antigravity独自のAI支援機能が働く。これだけ見ていれば、VS Codeの派生エディタがまた増えたな、という話で終わってしまうのだが、Antigravityが「次世代」「エージェント指向」とうたう理由は次に見るエージェントマネジャーにある。

エージェントマネジャー

 エージェントマネジャーは、Antigravityの核ともいえる機能だ。簡単にいってしまえば「複数のワークスペースを横断的に俯瞰しながら、エージェントと対話するためのインタフェース」となる。

エージェントマネジャー エージェントマネジャー

 上の画像は2つのワークスペースを開いて、そのうちの[Flask Todo App Development]というワークスペースについてエージェントと対話しているところだ(実際にはエージェント主体で開発を進めることができたため、筆者が介入することはあまりなかった)。ワークスペースはウィンドウ左端のサイドバーに表示されている。もう一つのワークスペースは[antigravity_01]であり、実はこの原稿を書くためのものだ。


HPかわさき

 まあ、原稿書きのワークスペースについてはコーディングが含まれるわけじゃないので、果たして? という感じはします。じゃあ、何に使ったかというと、Antigravityに関するGoogleのドキュメントを幾つか読み込ませて、この記事で筆者がピックアップしようと思ったことに過不足がないかどうかを確認することですかね。いわゆる「壁打ち」ってヤツです。もしかしたら、目次案とプロットをMarkdown形式で生成してもらうことで、もうちょっといい感じに使えるのかもしれません。が、今回はそこまではしていません。


 このように複数のワークスペースを1つのエージェントマネジャーで管理して、ワークスペースごとに存在するエージェントと対話しながら、ユーザーが現在関心を持っている仕事を並列に進めていくのがAntigravityの基本的な使い方となる。

 エージェントマネジャーとエディタは[Ctrl]+[E]キーまたは[Command]+[E]キー(macOSの場合)で切り替えられる。あるワークスペースでエージェントにある程度のコードを生成してもらって、「ここからは自分がコードにフォーカスするぞ」というときにはこのキーを押すか、ウィンドウ上部にある[Open Editor]ボタンを押すことになる(その逆も同様だ)。

 注意したいのは、エージェントマネジャーとエディタは1対多の関係にあることだ。今述べた方法でエディタ画面に切り替える対象となるのはエージェントマネジャーで現在対話中のワークスペースである(これが最初は分かりづらいかもしれない)。

使用可能なモデル

 エディタでもエージェントマネジャーでも、ユーザーは複数のLLMからどれを使うかを設定できる。いずれの場合も、チャット画面のプロンプト入力ボックスにある[Gemini 3 Pro (high)]などのドロップダウンをクリックすると使用可能なLLMが表示されるので、そこから選択するだけだ。

LLMのモデル選択 LLMのモデル選択

 なお、その隣にある[Planning]などのドロップダウンを使うことで、以下で説明するエージェントの動作モードも設定可能だ。

エージェントの動作

 冒頭でも述べたが、エージェントはタスク指向で処理を行う。実際には、エージェントに「何を作ろうとしているのか」や「何をしてほしいのか」を伝えると、ユーザーの意図に合わせてタスクを処理してくれるのだが、その処理の仕方には以下の2つのモードがある。

  • Fastモード
  • Planningモード

 Fastモードではエージェントはシンプルなタスクを直接実行する。シンプルなタスクとは例えば、変数名の変更やちょっとしたシェルコマンドの実行などのこと。深く考えずに行える単純なタスクを直接実行することから、処理も高速になる。

 一方、Planningモードではユーザーの要求をどうすれば実現できるかを考え、まずは実装計画を策定する。次に、実装計画を基にタスクを定義して、ユーザーの承認を得た上で、実際の実装作業に取り掛かるというのがエージェントとの対話で行われる流れとなる。

 そういう意味では、Antigravityには「仕様駆動開発」の考え方を採用しているともいえる。以下はTodoアプリのコード生成の前に作成された実装計画(Implementation Plan)とタスク一覧(Tasks)である。

実装計画とタスク一覧 実装計画とタスク一覧

 タスク一覧にチェックマークが入っているのは、既に実装が終わった状態でこれを表示しているからだ。実装計画やタスクにはユーザーの側からコメントを入れてフィードバックすることもでき、エージェントはフィードバックを基に実際の処理を進めていくことになるだろう。

 実装が終わると、検証も自動で実行される。このときにはWebブラウザが必要なタスクであれば、「Browserサブエージェント」機能が使われる(初回利用時には、専用のChrome拡張のインストールが求められる点にも注意)。BrowserサブエージェントはAntigravityの管理下でブラウザを実行し、その操作に特化したモデルを使用して、ブラウザのスクロールやクリック、DOMの読み取りや変更、画面や動画のキャプチャーなどを実行する。

 検証の結果、「問題がない」とエージェントが判断すると、「Walkthrough」(手順説明)というドキュメントも作成される。このドキュメントには上で実行されたBrowserサブエージェントがキャプチャーした画面や動画が含まれることもある。

Walkthroughを表示したところ Walkthroughを表示したところ

 エージェントが生成するこれらの成果物のことを「アーティファクト」と呼ぶ。アーティファクトには実装計画やタスク一覧の他に、実行検証時の画面キャプチャーやコードの差分(diff)などがある。

Antigravityの設定

 エージェントが自律的にタスクを進める際には、どの程度、ユーザーからのレビューや承認を求めるかが重要になる。これには次の3つのレベルが設定できる。

  • Always Proceed:ユーザーにレビューを全く求めない
  • Agent Decides:ユーザーにレビューを求めるかどうかをエージェントが判断する
  • Request Review:常にユーザーにレビューを求める

 これらの設定は、[Ctrl]+[,]キーまたは[Command]+[,]キー(macOSの場合)を押すと表示される[settings]ウィンドウの[Agent]タブにある[Review Policy]で設定可能だ。

[settings]ウィンドウ [settings]ウィンドウ

 あるいはエージェントとの対話でレビューを要求するプロンプトが表示されたタイミングで変更することも可能だ。

対話の中でReview Policyを設定する 対話の中でReview Policyを設定する


HPかわさき

 でも、よく見てください。赤い枠線の左に「Auto-proceeded by the agent under your review policy.」と書かれています。筆者の環境では特にReview PolicyはAgent Decidesになっているのですが、実装計画とかちゃんとレビューしたいのにもかかわらず、エージェントが自動的に作業を進めると決定しちゃったんですよねぇ。うーむ。


 これに類似する設定としては、エージェントがターミナルのコマンドを実行する際にユーザーの許可を求めるかどうかを設定する「Terminal Command Auto Execution」がある。これには以下の3つの選択肢がある。

  • Off:ターミナルのコマンドを一切実行しない
  • Auto:ターミナルのコマンドを自動実行するかどうかをエージェントが判断する
  • Turbo:常に自動実行する

 これらの設定項目は全てを自動にすると、サクサクとタスクが進められる一方でユーザーが介入するタイミングを失うことにもつながる。常にユーザーのレビューや許可を必要にすると、エージェントマネジャーやエディタをユーザーが常に監視し続けなければならない。今後のユーザーからのフィードバックでどのくらいがちょうどよいのかが決まるのかもしれない。


HPかわさき

 というわけで、Antigravityについて駆け足でその概要を紹介しました。コードにフォーカスするならVS Codeライクな使いやすいエディタを、ワークスペース(プロジェクト)を俯瞰するならエージェントマネジャーで必要な情報を与えて結果を待つ、そんな感じの使い方がこれからのIDEやエディタの当たり前になっていくのかもしれませんね。知らんけど(笑)。


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