ハイパーバイザーの機能とコンテナ基盤の機能を併せ持つ「Proxmox Virtual Environment」で仮想マシンやコンテナを管理する方法を解説する本連載。初回は、Proxmox VEが注目される背景と、Linux環境でのインストール方法を紹介します。
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「Proxmox Virtual Environment」(以後、Proxmox VE)は、オーストリアにあるProxmox Server Solutionsが開発したオープンソースの仮想環境管理ソフトウェアです。
2008年10月29日に最初の安定版であるバージョン1.0がリリースされて以降、一貫してフル仮想化とコンテナ仮想化を統合する、OSS(オープンソースソフトウェア)のオールインワン仮想化プラットフォームというスタンスを維持してアップデートを続けており、最新バージョンであるProxmox VE 9.1は2025年11月19日にリリースされました。
Proxmox VEには、以下のような機能が備わっています。
約17年のバージョンアップを重ねた結果、Proxmox VEはエンタープライズ用途に十分な機能が備わるようになり、既存のハイパーバイザーからの現実的な移行先として注目を集められるようになりました。
BroadcomによるVMwareの買収後、「VMware vSphere」のライセンス体系が永続ライセンスからサブスクリプションライセンスに、課金単位もCPUソケット数からCPUコア数へと変更されました。これにより、仮想化基盤のコスト高騰化が懸念されています。
Proxmox VEはGNU AGPLv3(Affero General Public License Version 3)でライセンスされたOSSであり、無償で利用できます。従って、個人や教育機関が気軽に動かせる他、予算に制約のあるプロジェクトにおいて現実的な選択肢の一つになると考えられます。
仮に有償サポートが必要になった場合でも、Proxmox VEの課金対象はCPUソケット数に基づくため、コストメリットがあります。
KVMによるフル仮想化と、LXCによるコンテナ仮想化を、Proxmox VEという単一のプラットフォーム上で統合的に管理、運用できます。コンテナは仮想マシン(VM)よりも軽量で動作するため、仮想マシンとして動かすほどではないようなアプリケーションをコンテナとして動かすなど、システムのリソースを柔軟に利活用できます。
Proxmox VEの管理画面は、ブラウザでアクセス可能なWebベースのインタフェースが提供されている他、Android向けのアプリもリリースされており、スマートフォンなどのモバイルデバイスからも管理できます。
Proxmox VEには既存のハイパーバイザーから仮想マシンをインポートする機能がありますが、「VMware ESXi」からのインポートもサポートしています。この点も、VMwareからの移行先として有力な選択肢の一つとなり得ます。
コストメリットがありつつも必要十分な機能が備わっており、VMware ESXiからのインポート機能も相まって「脱VMware」の有力な候補として注目されているというわけです。
Proxmox VEが注目されている点や魅力を確認したところで、次にProxmox VEの動作に必要なスペックを確認してみましょう。公式ドキュメントから抜粋した、検証目的の最低限の要求スペックは次の通りです。
これだけ見れば、環境自体はすぐに用意できるように見えますが、もちろんこれは検証目的で最低限必要なスペックになります。仮想マシンやコンテナを多数動かすような本番環境向けには、当然ハイパフォーマンスな環境が必要になる点には注意が必要です。
要求スペックを確認したところで、次はProxmox VEをインストールする方法を確認します。Proxmox VEのインストール方法としては、以下の2種類が用意されています。
1. ISOイメージで提供されているProxmox VE Installerを使ってインストールする
公式サイトで配布されているインストーラーISOイメージを使って、Proxmox VE専用の環境を作成する方法です。公式ドキュメントには、ISOイメージから作ったUSBフラッシュメモリを使ってインストールする方法が紹介されています。
2. 既存のDebian環境にProxmox VEをインストールする
Proxmox VEはDebianパッケージのセットとして提供されているため、標準的なDebian環境が既にある場合は、その環境にProxmox VEのリポジトリを追加して直接インストールすることも可能です。
本連載では、前者の「Proxmox VE Installer」を使ったインストール方法を紹介します。筆者はローカルのKVM環境でインストールを試みましたが、通常のベアメタルサーバでも同様の手順になるでしょう。
まず、公式サイトからインストーラーISOイメージをダウンロードします。
次に、インストール用メディアとなるUSBフラッシュメモリを用意します。現在配布されているインストーラーISOイメージは1GBを超えるサイズとなっているため、少なくとも2GB以上のUSBフラッシュメモリがあると安心です。
Linux環境の場合は、次のコマンドを実行してダウンロードしたISOイメージをUSBフラッシュメモリに書き込みます。macOS環境やWindows環境の場合は方法が異なりますので、それぞれ公式ドキュメントを確認して実行してください。
# lsblk # dd bs=1M conv=fdatasync if=./proxmox-ve_9.1-1.iso of=/dev/XYZ
作成したUSBフラッシュメモリをインストールする対象のマシンに接続して電源を入れ、Proxmox VEのインストーラーを起動します。正常に起動できれば、次のような画面が表示されるはずです。
ここでは「Install Proxmox VE(Graphical)」を選択して次の画面に進みます。EULAの承諾画面が表示されるので、「I Agree」ボタンを選択して承諾します。
次に、Proxmox VEをインストールするディスクデバイスの選択画面が表示されます。インストール先を選択して、次に進みましょう。
次は、タイムゾーンやキーボードレイアウトの設定画面です。ここでは国、タイムゾーンを「Japan」「Asia/Tokyo」、キーボードレイアウトも「Japanese」に設定します。
次に、管理者のパスワードとメールアドレスを設定します。
次に、ホスト名やIPアドレスなどの設定画面が表示されます。Proxmox VEのホスト名はFQDN(Fully Qualified Domain Name)である必要があるため、適切なものを設定してください。
最後に、インストール設定のサマリー画面が表示されます。内容に問題がなければ「Install」ボタンを選択してください。
インストールが完了して再起動すると、画面にはWeb管理画面にアクセスするためのURLが表示されます。別の端末などからブラウザでそのURLにアクセスするとログイン画面が表示されます。ユーザー名には「root」を、パスワードはインストール時に設定したものを入力してログインします。
ログインに成功すると、次のような管理画面が表示されます。
これでProxmox VEのインストールが完了しました。本連載では次回以降、インストールしたProxmox VEを使って仮想マシンを作成する方法などを解説していきます。
サイオステクノロジー所属。OSS よろず相談室でサポート対応をしているテクニカルサポートエンジニア。Ansibleに出会ってから自動化に取りつかれ、自身の業務やプライベートであらゆるものの自動化に取り組む。プライベートではJavaでちょっとしたツールの開発を趣味にしている。
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