AWSは2025年12月初めに開催した「AWS Re:Invent 2025」カンファレンスで、多数の新サービスや新機能などを発表した。データおよびストレージサービスに関する発表内容をまとめた。
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Amazon Web Services(AWS)は2025年12月1〜5日(米国時間)、米国ラスベガスで開催した年次カンファレンス「AWS Re:Invent 2025」で、多数の新サービスや新機能などを発表した。本稿では、データおよびストレージ分野の主要な発表内容をまとめた。
クラウドオブジェクトストレージ「Amazon S3」(Amazon Simple Storage Service)のデータ管理機能である「Amazon S3 Batch Operations」で、多数のオブジェクトに対する一括操作の実行速度が最大10倍向上した。大規模なデータ処理や、時間制約のあるデータ移行において、顧客が求めるスピードを実現できるようになったという。
S3 Batch Operationsでは、バックアップやディザスタリカバリー(災害復旧)を目的としたAWSリージョン間でのオブジェクトレプリケーション、Amazon S3のライフサイクル管理のためのオブジェクトへのタグ付け、保存されたデータセットの内容を検証するためのオブジェクトのチェックサム計算といったバッチワークロードを、1ジョブ当たり最大200億オブジェクトの規模で実行できる。
Amazon S3は現在、500兆個以上のオブジェクトと数百エクサバイト(EB)のデータを保存している。データ量の増加を踏まえ、AWSはS3オブジェクトの最大サイズを従来の5TBから10倍の50TBに拡張した。
これにより、高解像度ビデオ、地震データ、AI(人工知能)トレーニングデータセットなどの巨大なデータファイルを、元の形式のまま単一オブジェクトとして保存できるようになった。ワークフローが簡素化され、全てのS3ストレージクラスおよび機能への完全なアクセスも維持されるという。
AWSは、プレビュー版からスケーラビリティとパフォーマンスを大幅に向上させたベクトルストレージソリューション「Amazon S3 Vectors」の一般提供を開始した。
AIシステムはS3 Vectorsにより、セマンティック検索やコンテキスト理解のために、Amazon S3でネイティブにベクトルを保存したり、クエリを実行したりできる。
S3 Vectorsは、Amazon S3と同じ弾力性、スケーラビリティ、耐久性を提供するように設計されている。インデックス当たり最大20億ベクトルを処理でき(プレビュー版の40倍)、バケット当たり最大20兆ベクトルをサポートする。頻繁に実行されるクエリのパフォーマンスも2〜3倍向上している。他の一般的なソリューション比で最大90%のコストを削減し、AIアプリケーション開発のオーバーヘッドを最小限に抑えている。
S3 Vectorsは「Amazon Bedrockナレッジベース」(RAG〈検索拡張生成〉ワークフローの実装に役立つフルマネージド型の機能)や、「Amazon OpenSearch Service」(オープンソースの検索および分析スイート「OpenSearch」のフルマネージドサービス)と統合されている。そのため、コンテキストや意図を理解するAIエージェント、RAGシステム、推論パイプライン、セマンティック検索アプリケーションを容易に構築できるという。
AWSは、Apache Icebergをサポートするクラウドオブジェクトストアを提供する「Amazon S3 Tables」に、2つの新機能を追加した。Intelligent-Tiering(インテリジェント階層化)ストレージクラスのサポートと、AWSリージョンやアカウント間での自動レプリケーションだ。Apache Icebergは、データレイクに保存される大規模な分析データセット用のオープンソースのテーブル形式。
インテリジェント階層化は、Amazon S3の顧客に総計60億ドル以上の節約をもたらしたのと同じ自動コスト最適化機能を提供する。この機能は、アクセスパターンに基づいて3つのアクセス階層(高頻度、低頻度、アーカイブインスタントアクセス階層)間でテーブルデータを自動的に最適化するものだ。パフォーマンスへの影響や運用上のオーバーヘッドなしで、ストレージコストを最大80%削減するという。
自動レプリケーション機能により、分散したチームはローカルデータに対してクエリを実行することでパフォーマンスを向上させつつ、リージョンやアカウント間での一貫性を維持できる。テーブルの自動的な複製が可能になり、手動更新や複雑な同期作業は不要だ。これにより、完全なテーブル構造が維持された状態でテーブルを利用でき、コンプライアンスとバックアップ管理が簡素化される。
AWSは、新しい柔軟な料金モデル「Database Savings Plans」を発表した。顧客がデータベースサービスについて、一定の年間使用量(1時間当たりの利用金額)をあらかじめ確約することで、最大35%の費用を削減できるというものだ。
Database Savings Plansは、AWSコスト管理コンソールを通じて購入できる。購入すると、対象データベースワークロードに割引が自動的に適用される。
AWSは、「Amazon RDS for SQL Server」と「Amazon RDS for Oracle」を従来の4倍のストレージ容量に対応させた。最大64テビバイト(TiB)のプライマリーボリュームに加えて、追加ボリュームを3つまで接続し、合計で最大256TiBを利用することが可能になった。IOPS(Input/Output Operations Per Second)とI/O(Input/Output)帯域幅も4倍に向上している。
データ処理のためのテンポラリ領域として、一時的にボリュームを追加することもできる。ボリュームごとに高性能なProvisioned IOPS(io2)とGeneral Purpose(gp3)を使い分け、大規模ワークロードに対するコストパフォーマンスを最適化することも可能だ。
さらに、Amazon RDS for SQL ServerのM7i/R7iインスタンス向けに、最大55%のコスト削減が期待できるCPU最適化機能が提供開始された。
ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)アプリケーション向けにAmazon RDSのパフォーマンスを高めることも可能だという。
AWSは、RDS for SQL Server Developer Editionも提供開始しており、開発チームはライセンス料なしでSQL Server Enterprise Editionの全機能を利用できる(開発時のみ。本番利用は許諾されていない)。
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