エルテスは「転職時の情報管理に関するアンケート」の結果を発表した。持ち出した情報の種類、理由、対策やルールの浸透具合などが明らかになった。
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セキュリティ事業などを手掛けるエルテスは2025年12月10日、転職経験者300人を対象に実施した「転職時の情報管理に関するアンケート」の調査結果を発表した。
調査は、近年のデジタル化や転職市場の活性化に伴い、退職者による機密情報の持ち出し、いわゆる「手土産転職」が問題となっている現状を受けて行われた。2025年10月24日にインターネットリサーチ形式で実施され、就職および転職活動の経験がある21〜60歳の男女300人から回答を得た。その結果、転職者の約5人に1人が前職の情報を持ち出した経験を持つことや持ち出した情報の種類、理由、対策やルールの浸透具合など実態が浮き彫りとなった。
本アンケートにおいて「退職時、前職の業務で使用していた情報(紙・データなど媒体問わず)を持ち出した経験はあるか」と対象者に質問したところ、回答者の約20%に当たる57人が「ある」と回答した。
持ち出した情報の種類については、「顧客情報(顧客リスト、営業先リスト、取引先・発注業者の連絡先など)」が5.7%で最多となった。「業務情報」「名刺情報」など、1人の退職者が複数種類のデータを組み合わせて持ち出す傾向があることが明らかになった。
情報を持ち出した理由についての回答では、「転職先で業務に活用するため」が29.8%で最も多く、次いで「仕事の引き継ぎが不十分で必要と判断したため」が28.1%となった。これに対し、「違法・不正とは思わなかったため(誤った認識による)」という回答は3.51%にとどまっている。
この結果から、情報の持ち出しは「ルールの誤認」「過失」よりも、むしろ「転職先での利用」「業務上の必要性」といった明確な意図を持って行われていることが見て取れる。
前職における情報管理ルールの実施状況についての質問では、「知らない、もしくは覚えていない」との回答が34.7%で最多となっており、従業員へのルール周知を徹底するのに課題があることが分かった。次いで「社内規則として明確に定められており、運用もされていた」との回答が30.7%だった。
「社内規則として明確に定められており、運用もされていた」と答えた回答者の内訳を見ると、そのうち17.4%が「情報を持ち出した経験がある」と回答している。これは、組織としてルールを策定し、運用していても、それだけでは情報持ち出しを完全に抑止することが難しいことを示唆している。
エルテスは今回の調査結果を受け、情報持ち出し対策の第一歩として「社内ルールの明文化と従業員への浸透」が必要不可欠としつつも、ルールが適切に運用されている企業でもリスクが残存している点を指摘する。その上で、従業員一人一人の意識やモラルに依存した抑止策だけに頼るのではなく、ログ監視やアクセス制御といった技術的対策や、組織的な対策を組み合わせる重要性が高まっていると結論付けている。
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