ChatGPTのWebトラフィックが1年で22ポイント減少し、Geminiが20%を突破した。数字の裏側と、生成AIのシェア争いがどこへ向かうのかを、データと実体験から考える。
Webトラフィック分析サイトのSimilarwebが、2026年1月2日時点の調査結果をまとめた「Global AI Tracker」レポートを公開した。本レポートには、生成AIツールのWebトラフィックシェアの推移を追った分析が含まれており、ここ1年の間に起きた大きな変化が浮かび上がっている。かつてはChatGPTが圧倒的な存在感を示していたが、その一強構造に、いま明確な揺らぎが生じ始めている。
レポートと同社の公開データによると、2026年1月2日時点の生成AIカテゴリにおけるWebトラフィックシェアで、GoogleのGeminiが初めて20%の大台を突破し、21.5%に達した。一方、首位を維持するOpenAIのChatGPTは64.5%まで低下し、1年前の86.7%から約22ポイントも落ち込んでいる。この数字だけを見ると、ChatGPTのシェアの一部がGeminiへと流れたようにも見える。
また、第3勢力を巡る動きにも変化が見られる。イーロン・マスク氏率いるxAIの「Grok」は、半年前の2.1%から3.4%へとシェアを伸ばし、直近12週間のWebトラフィックも52%増と高い伸びを示している。これに対し、中国発の生成AIである「DeepSeek」は3.7%のシェアを維持しているものの、半年前(4.8%)と比べると後退しており、Grokがその背後に迫る構図となっている。
一方で、Webシェアの数字だけでは捉えきれない動きもある。Anthropicの「Claude」はシェア2.0%前後(直近トラフィック14%減)で横ばいだが、開発者層からの支持は依然として厚い。Microsoftの「Copilot」もシェア1.1%前後だが、こちらはWindows OSやOfficeアプリへの統合が主戦場だ。
留意すべきは、本調査がWebサイトへの訪問トラフィックのみを集計している点である。デスクトップ/モバイルアプリやAPI経由の利用は含まれていない可能性が高いため、これら数値は絶対的な市場シェアというよりは、「Webにおけるユーザートレンドの変化」を示す指標として捉えるのが適切だろう。
――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、今回の発表から技術の“今”を少し深く見ていく。
Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。
このグラフに未来への延長線を引いてみると、1年後にはChatGPTとGeminiのWebトラフィックシェアが拮抗(きっこう)していても不思議ではありません。少なくとも、長らく続いてきた「ChatGPT一強」の時代が、今、転換点を迎えていると見るのが妥当でしょう。
もっとも、この結果を額面通りに受け取る前に、少し冷静に数字の裏側にも目を向けておく必要があります。重要なのは、これがあくまで「Webブラウザ経由のトラフィック」を中心にした指標だという点です。ChatGPTにはデスクトップアプリがあり、ヘビーユーザーほどそちらへ移行している可能性があります。その利用分はこの数字に反映されないため、Webアクセスが減ったからといって、必ずしもユーザーが離れたとは言い切れません。
一方で、Geminiの躍進そのものは本物だと感じています。Google Workspaceといった仕事道具との親和性に加え、資料を読み込ませて対話できる「NotebookLM」との組み合わせが、実務の現場で効いている印象が強いからです。私自身もNotebookLMを週に何度も使っており、業務環境としてGoogle Workspaceに統合されている点は、日常的な使いやすさに直結しています。
さらにGoogleは、Androidといったデバイス層から、TPU(独自開発のAI向け半導体)を含むクラウド基盤まで、ほぼ全てのレイヤーを自社で持っています。そのエコシステムを総動員してAI活用を推進できる点は、サービス提供に軸足を置くOpenAIとの大きな違いであり、今後のシェア争いを左右する要因になっていくでしょう。世の中全体でも「Google優勢」と見る向きが増えてきているのは確かです。
とはいえ、私自身の利用体験からすると、一長一短があり、Geminiだけで全てをこなす気にはなれません。例えば、長文の作成ではGeminiに分がありますが、論理的な検討や「Deep Research」を使った精密な調査では、やはりChatGPTに軍配が上がります。
ここで、あまのじゃくな私は、世の中の空気にあえて異を唱えたいと思います。何か決定的なゲームチェンジャーが登場しない限り、1年や2年でユーザーが一斉にGeminiへ総乗り換えする未来は訪れないでしょう。今後は、それぞれのAIの「得意分野」がより明確になり、用途に応じて使い分ける形でシェアが分散していく。その流れは、むしろ自然で、止められないものだと私は見ています。
SimilarwebがX(旧Twitter)およびレポートで公開した、主要生成AIツールのWebトラフィックシェア推移を以下にまとめた。この1年間で市場構造がどのように変化してきたのかが、時系列で明確に読み取れる。シェアの変動は突発的ではなく、段階的かつ一貫した流れとして進んでいることが分かる。
シェアの推移とは別に、レポートでは直近12週間(約3カ月)における、各生成AIサービスのWebサイトへの総訪問数の増減率も示されている。市場全体が拡大し成熟する中で、アクセス数の絶対値がどう変化しているかを見ることで、各ツールの「現在の勢い」をより立体的に把握できる。
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