「もはやコーディングの80%がAI」 元OpenAIカルパシー氏が警告する2026年の悪夢“スロポカリプス”Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント

OpenAIの初期メンバーであるアンドレイ・カルパシー氏が、自身の開発スタイルが数週間で劇変した事実と、2026年に訪れる「低品質コンテンツの氾濫」についての見解を公開した。AI時代のエンジニアの在り方を問う重要な警鐘だ。

» 2026年02月02日 05時00分 公開
[一色政彦デジタルアドバンテージ]

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「Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント」のインデックス

連載目次

 元OpenAIの初期メンバーであり、現在もAI分野の第一線で発言を続けるアンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)氏が、自身のXアカウントで衝撃的な考察を発表した。

カルパシー氏が経験した数週間の変化と、2026年への警告 カルパシー氏が経験した数週間の変化と、2026年への警告

 カルパシー氏は、ClaudeやCodexといったAIコーディングの能力が2025年末ごろにある転換点(threshold)を超えたことで、「長年続いてきた自身のコーディングワークフローが、わずか数週間で大きく変わった」と報告している。こうした変化を踏まえ、同氏は2026年がそれ以前とは異なる局面に入ると見ている。

 最も注目すべき警告は、2026年が「スロポカリプス(Slopacolypse)」の年になるという予測だ。「スロポカリプス」とは、「Slop(スロップ:低品質な生成物)」と「Apocalypse(アポカリプス:黙示録、破局)」を掛け合わせた造語である。この言葉は、GitHub上のコードからSNSの投稿、さらには論文に至るまで、インターネット上のあらゆる場所が、一見もっともらしいが中身の乏しいAI生成コンテンツで埋め尽くされる未来を示唆している。

 カルパシー氏は、AIによる生産性の向上を「AGI(汎用《はんよう》人工知能)を感じる瞬間」と称賛している。一方で、ソフトウェアエンジニア自身の「コーディング能力の減退(アトロフィー:Atrophy)」や、AIを使って大量の成果物を生み出しながら“仕事をした感”だけを演出する「生産性劇場(Productivity Theater)」が横行することへの強い懸念も示している。

――ここからは『Deep Insider Brief』の恒例コーナーとして、カルパシー氏の発言内容を手掛かりに、今回の警告が何を意味するのかを整理していく。


一色政彦

 Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。

 数週間で「コーディングの8割をAIに任せる」状態になったという話には、正直驚かされました。同時に、私自身も手でコードを書くより、「AIにどう指示するか」を考える時間が明らかに増えており、強い共感も覚えます。

 AIは時に勝手な前提で進めたり、コードを必要以上に複雑にしたりしますが、人間なら後回しにしてしまいがちな作業を淡々とやり切る粘り強さもあります。便利さと引き換えに代償も生まれる。その両面をどう受け止めるかは、簡単には答えの出ない問題でしょう。

 カルパシー氏の警告は、決して楽観できる内容ではありません。2026年がどのような年になるのか、そして私たちはこの変化とどう向き合うべきなのか。まずは、同氏が示した警告の中身を整理して見ていきましょう。


 以下では、カルパシー氏の投稿内容をテーマごとに整理し、要点をコンパクトに箇条書きで紹介する。

カルパシー氏の考察のポイント

コーディングワークフローの激変

  • 比率の逆転: 2025年11月時点では「人手による実装・補完が80%、AIエージェントが20%」だったが、12月には「AIエージェントによる実装が80%、人手による修正が20%」へと短期間で移行した
  • 自然言語プログラミング: 実質的に英語で指示を出し、AIにコードを書かせるスタイルが定着した。本人はこれを「過去約20年の経験で最大の変化だ」と述べている

現在のAIの限界と「ジュニアエンジニア」的ミス

  • IDE(統合開発環境)は必須: AIはミスの性質が変化しており、重要なコードでは強力な開発ツール上で“鷹のように”監視する必要がある
  • ミスの質の変化: 単純な文法エラーではなく、「少し雑でせっかちなジュニアエンジニア」のような概念的なミスをする(勝手な前提で進める、確認を求めない、コードを不必要に複雑にするなど)
  • 人間によるレビューの重要性: AIが書いた1000行規模の非効率なコードでも、人間が指摘すれば100行程度に整理できる場合があり、設計や簡素化を判断する監督者としての役割が重要になる

AIエージェントの強み

  • 粘り強さ(Tenacity): AIは疲れることなく、人間なら途中で諦めてしまうような課題にも粘り強く取り組み続ける
  • レバレッジ(てこの作用): 命令型(手順を細かく指定)ではなく宣言型(達成したいゴールを伝える)で指示し、テスト作成や修正を含む作業をAIにループさせることで、大きな成果を引き出せる
  • 能力の拡張: 単なるスピードアップにとどまらず、以前ならコストやスキル不足のために手が出せなかった領域まで開発の対象が広がる

楽しさと能力減退

  • 楽しさの向上: 退屈な作業が減り、創造的な部分に集中できるようになることで、コーディングはむしろ楽しくなる。行き詰まりにくくなり、挑戦への心理的ハードルも下がる
  • アトロフィー(能力の減退): 手動でコードを書く能力は筋肉のように徐々に衰え始める一方で、コードを読む力や、内容の良し悪しを判断する能力は比較的保たれる

2026年の予測と課題

 こうした変化が積み重なった結果として、カルパシー氏は2026年に次のような状況が現れると予測している。

  • スロポカリプスの到来: 2026年には、GitHubやブログ、論文、SNSなどが、AI生成による低品質なコンテンツ(Slop)であふれ返る
  • 生産性劇場: 実際に生産性が向上するケースがある一方で、「AIで仕事をしているように見せる」だけのパフォーマンス(演技)も増える
  • 生産性格差の拡大: AIの活用によって、平均的なエンジニアと最も生産性の高いエンジニアとの間の差が、これまで以上に広がる可能性がある
  • ジェネラリストの優位性: 言語モデルは細かな実装や穴埋めといった“ミクロ”な作業を得意とする一方、全体戦略や方向性といった“マクロ”な判断は不得意であるため、全体像を俯瞰(ふかん)できるジェネラリストが、特定分野を深掘りするスペシャリストより相対的に有利になる場面が増える可能性がある
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