pandas 3.0正式リリース、CoW全面採用で何が変わる? 既存コードと移行判断の要点Deep Insider Brief ― 技術の“今”にひと言コメント

Pythonの代表的データ分析ライブラリ「pandas 3.0」が公開された。Copy-on-Write(CoW)のデフォルト化を中心に挙動が大きく変わっており、既存コードへの影響と、今後の選択判断が重要になる。

» 2026年02月06日 05時00分 公開
[一色政彦デジタルアドバンテージ]

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連載目次

 Pythonの定番データ分析ライブラリ「pandas」が、大きな転換点となるv3メジャーアップデートを迎えた。pandas 3.0.0は2026年1月22日(日本時間)に正式リリースされたが、従来の書き方がそのまま通らない変更も一部含まれている。

pandas 3.0で最も注意すべき変更ポイント pandas 3.0で最も注意すべき変更ポイント

 今回のバージョン3.0(v3)で最も注目すべき変更が、Copy-on-Writeコピー・オン・ライトCoW)の完全デフォルト化である。

 v3のCoWでは、DataFrame(表データ)やSeries(1次元データ)に対する操作について、「どの処理が元データを変更するのか」が明確に定義されるようになった。これにより、これまであいまいだった連鎖代入(chained assignment)の挙動が整理され、「どこを変更したいのか」が分からない書き方では、元データを変更できない仕様となっている。

 上の図は、その挙動の違いが結果として表れる代表的な例である。図のコードは、以下のように明示的に書き換えることで、意図した処理を実現できる。

source_df.loc[source_df["A"] > 0, "B"] = 999
source_df

pandas 3.0で推奨される明示的な代入方法

――ここからは『Deep Insider Brief』恒例の“ひと言コメント”として、今回の発表内容をあらためて整理しながら、技術の“今”をもう一歩踏み込んで見ていく。


一色政彦

 Deep Insider編集長の一色です。こんにちは。

 pandasを日常的に利用している人は多いと思いますが、教科書的なコンテンツや、生成AIによるコード生成においても、pandasが前提として使われる状況は、2026年2月の現時点でも大きくは変わっていないでしょう。

 一方で、先進的な開発者やデータ分析者の間では、より高速に処理できる類似ライブラリとして、Polarsを推す声が目立つようになっています。私自身も、ついpandasを使ってしまう場面は多いものの、ゼロから設計するのであれば、基本的にはPolarsを選ぶべきだろうと考えています。

 pandasが、AIや機械学習、データサイエンス、データ分析の分野に長年にわたって果たしてきた役割は非常に大きく、その功績には大いに敬意を払うべきです。ただし、今回のような設計変更を含むアップデートが、結果としてPolarsへの移行をさらに後押しする可能性があると考えると、個人的には少し複雑な気持ちもあります。

 実際に、海外掲示板のredditのスレッドや、Hacker Newsのスレッドを見ても、「性能や並列処理を重視するならPolarsを選ぶべきだ」という意見が数多く見られます。中には、「これほど破壊的な変更があるなら、いっそPolarsへ移行した方が幸せになれる」という、かなり踏み込んだ意見もあります。

 私の考えとしては、数年かけて積み上げてきた社内コードや周辺ライブラリ、運用ノウハウがある場合には、まずはpandas 3.0への「安全な移行」を優先すべきだと思います。一方で、パフォーマンスを重視するプロジェクトや、新たに設計する分析基盤であれば、Polarsへかじを切るには、今が一つの良い機会だと考えています。


 以下では、公式情報を基に、pandas 3.0で導入された主な更新内容を整理する。

更新内容

Copy-on-Write(CoW)のデフォルト有効化

  • Copy-on-Writeをデフォルトの動作として採用。データ操作時のコピーと参照の挙動を一貫した仕様に整理
  • 連鎖代入(chained assignment)は仕様として元データを更新しない挙動に統一
  • SettingWithCopyWarningを削除。警告ではなく仕様で挙動を明確化
  • 初心者向け補足: 書き方はやや厳密になるが、意図しない書き換えによるバグは起きにくくなる

文字列データ型の変更

  • 文字列データの扱いをobject型から、専用のstring型(StringDtype)へ移行する方針を明確化
  • PyArrowがインストールされている環境では、Arrowベースの実装が利用され、メモリ効率や一部処理性能が向上
  • 文字列以外の値が混入しにくくなり、安全性が向上
  • 初心者向け補足: これまで「何でも入る列」だった文字列列が、より厳密に管理される

日時・時間差型の仕様変更

  • datetimeおよびtimedelta型におけるナノ秒制限を緩和
  • 1678年以前や2262年以降といった広範囲の日付を、従来より扱いやすくなった
  • 極端な日時を扱う際のエラーや制約を低減

新しい列参照構文の追加

  • pd.col()構文を追加。DataFrame.assignなどで列参照を簡潔に記述可能
  • 式として列を扱えるため、ラムダ関数を使わない記述が可能
  • Polarsなどの式ベースAPIに近い書き方を導入
  • 初心者向け補足: 関数を書く代わりに、列名を数式のように組み合わせて書ける

# 従来の書き方
df.assign(new_col = lambda x: x["a"] + x["b"])

# 3.0の新しい書き方
df.assign(new_col = pd.col("a") + pd.col("b"))

pd.col()の使用例

非推奨APIの削除

  • これまで非推奨とされていた多数のAPIや引数を削除
  • 古い書き方を使っているコードは、3.0ではエラーになる可能性あり

その他の主な変更

  • Apache Iceberg対応: read_iceberg()などの追加により、データレイク基盤との連携を強化
  • システム要件の引き上げ: Python 3.11以上、NumPy 1.26.0以上が必須
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