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英文履歴書の表現とその理由一歩上いく英文履歴書の書き方、使い方(1)

英文履歴書をより魅力的に、ほかの人と差別化して書くにはどうしたらいいのか。そんな英文履歴書の書き方、使い方を解説しよう。

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 これから数回にわたり英文履歴書(アメリカではresume、イギリスではCVと呼ばれます)について取り上げていきたいと思います。ただし、実際の書き方については市販のマニュアル本などに譲り、ここでは英語を母語とする人たち(ネイティブ)にとっては完ぺきな英文履歴書が、主に日本では誤解が生じていること、そしてその理由について取り上げます。初回ですから、まずは英文の履歴書がどのような発想で作られているのかを見てみましょう。

「私を雇わないのは御社の損!」と履歴書は主張する

 では、ネイティブが書く英文履歴書がどのようなものかを見てみましょう。次のリンク先をクリックしてみてください。

http://quintcareers.com/resume_sample_3.html (Quintessential Careersのサンプルページ)

 この履歴書の書き手は大学を出たばかりですが、自らを

  • 「creative problem-solver and marketer(創造的な問題解決者でありマーケティング担当者)」
  • 「enthusiastic self-starter(熱心で自ら進んで仕事を行う人間)」
  • 「goal-driven achiever(目標指向の達成者)」

と紹介しています。新卒とはいえ、こうした表現はアメリカ人の履歴書では一般的なもので、この履歴書は表現も構成も整った良い履歴書と見なされます。

 このように日本人の私たちには尊大・傲慢とすら感じられる表現が、英文の履歴書に多用されるようになった理由の1つとして挙げられるのが、アメリカやイギリスの厳しい雇用環境です。求人欄の広告や人材紹介会社の紹介に頼っていては仕事が見つかりにくいため、一度に100社以上の企業に履歴書を送るDM(ダイレクトメール)作戦を実行する求職者も少なくありません。

できる人間は中身も見掛けも良い履歴書を書くはず

 当然ながら、企業には常に大量の履歴書が送られることになります。欧米の企業の場合、誰と面接をするか、そして最終的に誰を採用するのかを決めるのは人事部ではなく、通常は現場の管理職の人間です。ただでさえ忙しい彼らは、大量の履歴書をチラリと一瞥(いちべつ)しただけで、取りあえず目を通す履歴書と読まない履歴書を選別してしまいます。

 この「チラリと一瞥」における選別基準は履歴書の「見掛け」です。「仕事のできる人間なら、見た目が美しく、読みやすい履歴書を作成するはずだ」という前提があり、レイアウトの良くない履歴書を送った者は即不採用決定になるのです。

最初のつかみで相手の心をゲット

 「見掛けのチェック」をクリアしても、履歴書が最後まで読まれるとは限りません。1通の履歴書を見るためにかけられる時間は10〜30秒であり、履歴書の多くは途中までしか目を通してもらえないのです。そこで企業の担当者に、履歴書の1枚目の上部3分の1を読んだ段階で残りのすべてを読みたい気分にさせて全部を読ませ、読後「一度この応募者に会ってみよう」という気を起こさせなければなりません。

 そのため、応募者は履歴書の冒頭から、虚偽の記載こそしないものの、最後にたためる程度に風呂敷を広げて、インパクトが強く簡潔で自信に満ちた記述を、相手(企業の担当者)にぶつけていくわけです。

 すべての履歴書がこのように書かれているアメリカのような文化においては、「自信に満ちた履歴書」こそが普通であり、日本人も英文履歴書が必要な場合は、このような英文履歴書を書かないと「自信がない人間」と評価され、即不採用になってしまう可能性が高いのです。

 ところで、私たちが英文履歴書を送る先のほとんどは、日本国内の外資系企業でしょう。あなたが送った英文履歴書に目を通して面接するかどうかを決めるのは、アメリカ本社から日本に来たばかりのエグゼクティブかもしれませんし、英語は話すけれど精神構造は完全にドメスティックな日本人マネージャかもしれません。特に後者に対して、日本人が英文履歴書に「Motivated teamplayer with demonstrated talent for……(……について才能を立証したやる気のあるチーム・プレーヤ)」などと書いたら、一体どう受け止められるのでしょうか。

 実際どう感じた人がいたのかは、次回以降に取り上げます。

英文履歴書ワンポイント解説

■英文履歴書の構成要素

 英文履歴書は、履歴書と職務経歴書の両方の機能を備えています。英文履歴書の基本的な構成要素は、以下のとおりで数字の順に記入していきます。

  1. Heading(名前・住所・電話番号、メールアドレスなど)
  2. Objective (希望職種)
  3. Profile(技能と業績の要約)
  4. Employment(職歴)
  5. Education (学歴)
  6. Skills(資格・特技など)

 職歴、学歴、資格など期間や年号が入るものについては、通常は新しいものから古いものへと書いていきます。枚数はキャリアの浅い人で1枚、キャリアを積んだ人間で2枚が基準です。新卒や社会経験が1〜2年の場合は、学歴を職歴より上に持ってきます。

 各構成要素の中身については、日本の履歴書とは考え方が異なるところがあり、構成要素ごとの項目立てにもかなりの柔軟性があります。

 例えば、職歴には正社員、契約社員、アルバイト、ボランティア活動なども含めます。学歴は、正規の学校教育のほかに、広義の教育として社内研修や職務に関連するスクールや講座などを入れることができますし、正規教育とは別項目を作って書き出すこともできます。資格・特技はProfileの中に入れ、この項目は省略する人もいます。希望職種や技能と業績の要約も、必要がなければ省略してもよいのです。

 各項目の名称もさまざまです。例えば職歴については、「Employment」のほかに、「Professional Experience」「Experience」「Business History」など、自分のキャリアに最もふさわしい表現を使います。

 要は、自分のキャリアを最もよくアピールするように項目を立て、その名称を考えることです。


本記事は、「B-zine(ビージン)」(メールマガジン)に掲載された記事を基に加筆、修正したものです


筆者プロフィール

福島由美

外資系メーカー、会議通訳、再就職支援会社勤務などを経て、現在は某大学で非常勤講師としてビジネスコミュニケーション科目群を担当。異文化ビジネスコンサルタントとしても活動中。著書に『異端パワー―「個の市場価値」を生かす組織革新「新しい経営」シリーズ』(共著、日本経済新聞社)がある。



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