「英語的発想」対「日本人の常識」一歩上いく英文履歴書の書き方、使い方(2)

英文履歴書をより魅力的に、ほかの人と差別化して書くにはどうしたらいいのか。そんな英文履歴書の書き方、使い方を解説しよう。

» 2004年09月15日 00時00分 公開
[福島由美@IT]

英語的発想の履歴書の表現とは

 今回は、英文履歴書に使われる英語表現を見ていきます。

 履歴書の限られたスペースの中で、自分の能力と適性を効果的に提示するためには、文章に工夫が必要です。一般的には、この言葉を使えばプロっぽく響く「アクション・ワード(action words)」と呼ばれる単語が使用されます(動詞が多いことからaction verbsとも呼ばれます)。次のURLはアクション・ワードの一例を示したものです(iMahalの「Resumes:Top 300 Action Verbs」)。

 このアクション・ワードを使いつつ、応募するポジションと自分のキャリアにふさわしい専門用語を適度に入れたり、成果を表す具体的な数字を加えたりして、応募者の専門性と実績をアピールするのが、英語的発想の英文履歴書の標準です。

能力の汎用性のアピールも重要

 以上の履歴書の表現のルールを念頭に置いて、distinctiveweb.comにあるeビジネス・スペシャリストの履歴書のサンプルを見てみましょう。

 この履歴書には、注目してほしい点があります。それは、業種や職種を問わず広く通用する能力や性格を強調している点です。

 この書き手は自分がリーダーでありメンターであり、チームの団結力を築く能力があるとしています。これらはどのような仕事でも役に立つ能力です。また、「passion for innovation」(革新への情熱)、「Keen」(熱心な)などのことばを使い、仕事をするうえで好ましい資質・性向も記載しています。

 これは、特定の専門分野のみの能力と実績の強調が「柔軟性や応用力のなさ」に受け取られ、命取りになる危険性があるためです。そこで「ビジネスをめぐる環境が少しでも変わったら、使えない人間になるかもしれない」と相手に思わせないように、汎用性のあるスキルと性格に関する記述を履歴書の中に入れて、「自分は柔軟性があり、応用が利き、将来起こり得る環境の変化に対応できる」と、読み手にアピールしているわけです。最近の英文履歴書には、このような記述を入れるものがかなり目立ってきています。

英語的発想の履歴書のルールどおりにいかないこと

 さて、日本人の英文履歴書の場合には、読み手が日本人であることが多いために、ここまで書いてきたルールどおりの履歴書の記述では誤解を受けることがあります。この誤解は「日本人としての常識」と「英語的発想の履歴書のルール」がぶつかるために起こるものです。

 日本人マネージャの中には、ネイティブが「Recognized e-business expert offering fresh insight and passion for innovation」(フレッシュな洞察力と革新への情熱を提供するeビジネス・エキスパートとして認められている)と書くことにはOKでも、同じことを日本人が英語で書いてくることに対しては、「日本人としての常識がない」として嫌悪する人が結構います。

 海外からのエクスパット(本社からきた社長や役員など)が多い外資系企業で長年働いている、英語が上手でドライそうに見える日本人マネージャの中にさえ、英語的発想で書かれた日本人の英文履歴書を「自慢たらたら」「自分を過大評価」とマイナスの評価をする人がいます。

 そのため、履歴書を送る際には事前のリサーチで応募先の社風や読み手の日本人マネージャのメンタリティを調べることが大切ですが、調べきれないことも多々あり、日本人が英文履歴書を作成する際の隠れた問題の1つとなっています。

 次回は、履歴書のレイアウトの問題を取り上げます。

英文履歴書ワンポイント解説

■履歴書英語の基本と注意点

 英文履歴書に使われる英文には特徴があります。これはすべて限られた用紙の中に簡潔に収めるためのものです。米国のCV(英国のCVとは異なる、研究職用の履歴書)を除けば、どんなにキャリアがあっても2枚の紙の中に収めなければなりません。一般的なルールは以下のとおりです。

(1)定冠詞(the)、不定冠詞(a/an)は、省略される

(2)自分を表す主語の人称代名詞(I)のほか、人称代名詞(me、you、they、we、usなど)は省略される

(3)完全文(「主語+述語」で始まる文)で書かない

(4)ほぼすべての文を動詞で始める

(5)簡潔に述べる

(6)数字はアラビア数字を使う

 (1)と(2)については、通常は冠詞や人称代名詞を取り除いても意味が通じるからであり、この方が簡潔で力強い文章になるからです。しかし省略すると意味があいまいになってしまう文については、その部分は残しておいた方がよいでしょう。

 (3)(4)(5)については、例えば、職歴内の具体的な記述は大体が動詞(アクション・ワード)から始まり、プロファイルには名詞句(例:「Dynamic leader and mentor, able to」)がよく使われます。完全文ではなくても、動詞の時制には気を付け、過去のことであれば過去形に、現在のことであれば現在形にします。簡潔に述べるために、ほとんどの履歴書では個条書きが使われています。

 数字については、一般的な文章のルールでは、1けたの数字または文頭の数字はスペルアウト(「five years」)し、2けた以上の数字はアラビア数字を使うことになっています。しかし(6)にあるように、英文履歴書内ではたとえ1けたの数字であっても 「5 years」のようなアラビア数字が普通で、文頭であってもアラビア数字を使うことがあります。また、「20年以上」のような「〜以上」の表現には、「over 20 years」の代わりに 「20+ years」という表記が使われることがあります。アラビア数字を使うことで、読み手の目が実績を表す数字に即座にいくようになるのです。


本記事は、「B-zine(ビージン)」(メールマガジン)に掲載された記事を基に加筆、修正したものです


筆者プロフィール

福島由美

外資系メーカー、会議通訳、再就職支援会社勤務などを経て、現在は某大学で非常勤講師としてビジネスコミュニケーション科目群を担当。異文化ビジネスコンサルタントとしても活動中。著書に『異端パワー?「個の市場価値」を生かす組織革新「新しい経営」シリーズ』(共著、日本経済新聞社)がある。



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