英文履歴書をより魅力的に、ほかの人と差別化して書くにはどうしたらいいのか。そんな英文履歴書の書き方、使い方を解説しよう。
今回は英文履歴書の書き方で必ず説明されるはずのスタイル(様式)について解説します。
「英文履歴書のスタイルには3種類ある」と、多くの英文履歴書の書き方を紹介した本には書かれています。その3種類とはそれぞれ、Chronological、Functional、Combinationといわれるスタイルです。http://www.epistemelinks.com/Edge/Resume/center_5.aspには、それぞれのサンプルが載っています。
Chronological(年代順)Resumeは、職歴を新しい順から忠実に書いていくもので、Reverse Chronological(逆年代順)Resumeとも呼ばれます。これまで勤務してきた企業それぞれについて、いつ、どの期間、どのポジションで、具体的に何をしていたかをきちんと記述します。現在の職務が自然と強調されることもあり、キャリアが順調にアップしてきた人に向いています。
しかし、誰もがキャリアを順調に重ねてきたわけではありません。転職回数が多かったり、キャリアのブランクがあったり、場合によっては大掛かりなキャリア・チェンジを余儀なくされる場合もあるでしょう。そういう人のために生まれたスタイルが、Functional(ファンクショナル、機能別)Resumeです。
Functional Resumeは書き手の持つスキルそのものを強調し、各雇用主の元での具体的な職務内容の詳細には触れません。ここでは自分の持つ具体的なスキルの記述に履歴書の半分以上を費やし、職歴の記述は、雇用主名、ポジション名、雇用期間のみになります。
Combination(コンビネーション)Resumeは、上記の2つの折衷的なものです(Chrono-functional、Hybridなどとも呼ばれます)。転職回数がそれなりにある人や、同一企業内でプロモーションをしてきた人によいといわれています。
キャリア・カウンセラーや転職関連のコンサルタントは、キャリア・チェンジを考えている人や転職回数が多過ぎる人には、しばしばFunctional Resumeの作成を勧めてきます。Functional Resumeの作成には綿密なスキル分析が必要になるため、キャリア・カウンセラーの腕のふるいどころでもありますし、転職者にとっても自分のスキルを再確認できる良い機会だからです。わたしも自分のFunctional Resumeを初めて作成したときには、「七転び八起きならぬ七転八倒のわたしのキャリアでも、これだけのスキルが構築されてきたではないか」と、自分に感動してしまいました。
さて、キャリア・カウンセラーや転職コンサルタントお勧めのFunctional Resumeですが、採用側の目には、どのように映るのでしょうか。アメリカである人材紹介会社が企業にアンケートをとったところ、実に9割近くの企業が「Chronological Resumeが好ましい」と回答したそうです。残りはCombination Resumeと回答し、Functional Resumeを好意的に見ている企業は皆無でした。
企業の目は節穴ではありません。Functional Resumeを書いてきたという事実から、「何か隠したいことがあるに違いない」と感づいてしまうのです。つまりこのスタイルは慎重に使用しないと、転職にかかわる業者とワケアリ転職者本人の自己満足に終わりかねない、非常に危険なスタイルなのです。
しかし、日本ではこのFunctional Resumeがすんなり通ってしまうことがあります。それは英文履歴書が、日本語で書かれた職務経歴書とともに提出されることが多いためです。
採用決定者が日本人だった場合、英文履歴書を読むのは、日本語の書類を見た後になります。すでに日本語の書類で、応募者の職歴の詳細を知っているために、この状態でFunctional Resumeを見ても「何か隠している」とは感じられず、むしろ「スキルを上手くまとめて書いてある」と、ポジティブな印象を与えることがあります。このような場合においては、むしろ「Action Wordsの使い方が生意気だ」とか、「見た目が美し過ぎる」だとかの方が、問題になるでしょう。
もちろん日本人の中にも、Functional Resumeを見たら即不採用にすると決めている担当者もいます。つまり、日本市場において英文履歴書を見る採用者の目は、アメリカやイギリスの市場の担当者ほどは標準化されていないため、「このスタイルがよい」とは、一言ではいえないのです。
作成した英文履歴書を読むのがネイティブだということがあらかじめ分かっている場合には、Functional Resumeはお勧めしません。しかし、相手が日本人で、日本語の書類とともに提出する場合には、英文履歴書のスタイルよりは、むしろ先に読むであろう日本語の職務経歴書の書き方の方が重要かもしれません。
■職歴の記述について
今回は、英文履歴書の中核である職歴について考えてみましょう。ここでは基本的な、Chronological Formatに基づいて説明します。サンプルはDistinctive Documentsのサンプルページです。
履歴書の職歴に記入すべき事項は、雇用主情報、タイトル、勤務期間、職務の内容と実績です。ここでいう職歴とは、正規雇用、非正規雇用を問いません。また企業は履歴書のキャリアのブランクを嫌うため、失業期間があった場合、その期間にボランティアなどの活動を入れて、キャリアの一部とすることもできます。職歴は「Employment」「Professional Experience」「Career History」などの名称で項目立てをします。
通常は雇用主の名称とその所在地(通常は都市名)を記入しますが、その際に雇用主の簡単な説明を付けることもあります。
タイトル(title)は日本語に直すと「肩書き」です。しかしここであえて「タイトル」とカタカナにしたのは、日本語の肩書きの考え方とは異なるからです。
日本語の履歴書・職務経歴書において、肩書きとは「雇用主が正式に与えた肩書き」になることが多いようです。しかし英語発想の英文履歴書に記載すべきタイトルは、「自分の職務内容をひと言で的確にいい表す」呼称です。ですから「わたしは平社員なのでタイトルは記入できない」ということは起こり得ません。
もちろん、企業からもらった肩書きが実際の職務を的確に表している場合は問題ありません。タイトルを別途考えねばならないのは、第三者には分かりにくいタイトルを持つ場合、正式な肩書きが実際の職務内容を反映していない場合、会社から肩書きをもらっていない場合です。今回のコラムでは雇用主情報の次にタイトルの説明をしていますが、実際の英文の履歴書では雇用主の名前より前にタイトルを置くことが多く、非常に目立つ位置にあるだけに、このタイトル選びは非常に重要になります。
雇用形態(正社員、非正社員)にかかわらず全期間を書きます。最近は「1999 - 2000」のように、「年」だけで表記することが一般的になってきています。ネイティブ感覚では「月」は余計な情報で「スペースの無駄」と感じられることも多いようです。
しかし、日本国内の雇用市場の場合は、「年だけでは雇用期間をごまかされる」と考える人事担当者もかなりいます。つまり「1999 - 2000」は、一見したところ2年間の雇用のように見えますが、実際は数カ月かもしれません。そのため、応募先のカルチャーに合わせて、「March, 1994 - Dec. 1995」のようにあえて「月」まで入れておくことが必要な場合もあります。
職務の中身に関する記述は「何をやっているか」の職務内容の記載とともに、「どのような実績を上げたか」が重要視されます。
記載内容は、相手のニーズにマッチしアピールできるものが中心です。そのため自分のこれまでのキャリアでは大きなウェートを占めていた担当職務であっても、相手のニーズとは関係がなさそうな場合は、その記述を極限まで簡略化したり、ばっさりと切り落としたりしてしまうことが必要になります。
使用する表現は本連載の第2回「「英語的発想」対「日本人の常識」」で説明したとおり、Action Wordsを用いながら履歴書特有の英語で記載します。通常は簡潔に書くために個条書きを選ぶ人が多いですか、個条書きの何番目に何を記載するかは、応募先と募集職種に合わせてよく考えてください。
実績ではアピールできる数字(金額、件数、パーセンテージなど)があれば、具体的に書きましょう。このことをある研修会でいったところ、複数の企業関係者から「企業内の数字は、たとえ個人が作ったものでも守秘事項に属するもの。それを『履歴書に書け』とはいかがなものか?」と、反論されてしまいました。しかし現実問題としては、そのように主張する企業でも、中途採用の場合には応募者の書類の職歴の数字を参考にしています。
サンプルをご覧になれば分かるように、新人時代の職務内容の記述は非常に短くなっています。キャリアの長い人では初期の職歴については、雇用主名と所在地、タイトル、雇用期間のみで終わりにする場合もあります。
本記事は、「B-zine(ビージン)」(メールマガジン)に掲載された記事を基に加筆、修正したものです
福島由美
外資系メーカー、会議通訳、再就職支援会社勤務などを経て、現在は某大学で非常勤講師としてビジネスコミュニケーション科目群を担当。異文化ビジネスコンサルタントとしても活動中。著書に『異端パワー?「個の市場価値」を生かす組織革新「新しい経営」シリーズ』(共著、日本経済新聞社)がある。
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