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保険大国日本で保険のシステムを作るコツ味わい深いシステムを開発するための業界知識(1)(3/3 ページ)

ITエンジニアの日々の業務は、一見業界によって特異性がないようだ。だが、実際は顧客先の業界のITデマンドや動向などが、システム開発のヒントとなることもある。本連載では、各業界で活躍するITコンサルタントが、毎回リレー形式で「システム開発をするうえで知っておいて損はない業務知識」を解説する。ITエンジニアは、ITをとおして各業界を盛り上げている一員だ。これから新たな顧客先の業界で業務を遂行するITエンジニアの皆さんに、システム開発と業界知識との関連について理解していただきたい。

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特徴的な個別機能について

 保険における特徴的な業務機能について説明します。これらの業務にかかわるシステム開発に携わることも多いかもしれません。

名寄せ 社会保険庁の“消えた年金問題”で「名寄せ」という言葉も、かなり多くの人に知れ渡ったのではないでしょうか? 契約者1人が複数の保険契約を持てるため、それらが同一の契約者のものであることを、システム的に判別する必要があります。名前、住所、勤務している会社などは、結婚、引越し、転職によって変わってしまうため、単純にそれらが一緒だから同一の契約者、という判定条件では通用しません。

名寄せ処理を実装するパッケージ製品もありますが、データ・クレンジングなどの処理を含めると、その処理は相当な量になり、常にどこかで気を付けておく必要のある業務です。
保険料計算
数理計算
保険金の支出は、偶発的な事故によるものなので、保険料をいくらもらえばいいのかは、複雑な確率論に基づいて計算されている。

保険料計算や、保険会社が支払いの可能性に対して持っておく責任準備金などを算出する数理計算もシステムで実装されているが、これには深い数学的な知識が求められる。
社外インターフェイス 規制緩和によって銀行の窓口でも生命保険の商品が扱えるようになった。この銀行窓販に向けては、保険会社と銀行との間でシステム的なインターフェイスを構築する必要がある。

 このほかにも、生保ではLINC(生保共同センター)、損保では損保VANという企業間のネットワークがあり、企業間の決済や、契約情報の照会などが行えるようになっています。複数の企業と契約し1人の人に多額の保険金をかける、保険金詐欺などの不正ができないようになっていたり、自動車事故情報を交換して、企業間で等級を引き継いだりできるようになっています。

最後に

 保険に限らず金融全般にいえることですが、金融の世界はほかの業界に比べてITの重要性が高いといえます。実際のモノを扱っている業界では、在庫・流通などモノの制約を受けることが多いですが、金融ではほとんどのものをコンピュータ上で仮想化して処理することが可能であり、多くの業務がITで実現されているからです。金融業界は、まさにITエンジニアとしての腕の見せどころなのではないでしょうか。

 次回は「情報通信業界」について説明する予定です。

筆者プロフィール

池田淳(いけだじゅん)

池田淳(いけだじゅん)

1975年生まれ。東京工業大学大学院を卒業後、99年にアクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)に入社。主に金融業のシステム構築・コンサルティングに携わり現在に至る



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