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アジア9カ国のIT教授が語る、日本人技術者の特徴海外から見た! ニッポン人エンジニア(2)(2/2 ページ)

時代を読む力は、生き残れるエンジニアの必須条件である。本連載では、海外と深い接点を持つ人物へのインタビューをとおして、IT業界の世界的な動向をお届けする。ITエンジニア自らが時代を読み解き、キャリアを構築するヒントとしていただきたい。

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世界はフラットだが多様でもあるーアジア型頭脳循環の可能性―

小平 ディスカッションでは「頭脳循環か、頭脳流出か」というテーマも出てきました。自国で養成した高度な人材が留学や就職で海外に出ていくことの、産業人材の蓄積という点からの是非、ということです。

 具体的にはアメリカのシリコンバレーで働くインド人・中国人エンジニアなどが有名ですが、この点も上述のグローバルと同様に、「優秀なIT人材は、海外に出ていってもいずれ帰国する。これは自国の成長にとって明確にプラスである」と、すでに頭脳循環の仕組みが出来上がっているインドや中国に対し、「優秀なIT人材は流出する一方であり、大学の教員でさえ海外で就職してしまう」と頭脳流出を非常に危惧(きぐ)しているモンゴルのような国もありました。これをどのようにとらえていけばよいとお考えですか。

中尾教授 先ほど、「北東アジアでは地域企業との連携やその強みをどう海外に打ち出し、連携を進めていくのか」という話がありましたが、ここにヒントがあるのではないでしょうか。また、キャセイ・トライテック株式会社 戴社長の講演の中に「世界はフラットであるが、同時に多様でもある」という言葉がありました。これはテクノロジと交通手段の進化によって、世界中いつでもどこでも容易にアクセスすることができるようになったということですが、同時に各国の社会・文化的背景、経済の成長度合いや成熟度合いもそれぞれ異なることを認識する必要があると思います。同じ頭脳循環でも、「インドのバンガロールとアメリカのシリコンバレー」というような、実際には2点間で循環しているのが米国型とすれば、各国・地域の特性を生かしながら連携していくことに、アジア型の頭脳循環となる可能性があるのではないでしょうか。そしてそのためには、

  • 各国とも、産学連携を促進し、それぞれの強みをより強化していくこと
  • インターンシッププログラムなどを通じ、立場や発想が異なる相手とのチームビルディング・チームワーク力を身につけること
  • 日本人は英語を、外国人留学生は日本語をそれぞれ高め、使いこなしていくこと

といった点が大切なのではないでしょうか。

東北大学ASIST国際フォーラム―IT企業のグローバル化と留学生高度人材―

■日時:2009年11月25日、26日

■主催:東北大学

■共催:経済産業省東北経済産業局

■後援:宮城県、仙台市、(社)東北経済連合会、(社)宮城県情報サービス産業協会、(社)みやぎ工業会、(独)情報処理推進機構、 日本貿易振興機構(ジェトロ)仙台貿易情報センター、河北新報社、 NHK仙台放送局                                            

■基調講演:

 株式会社クララオンライン社長・CEO 家本賢太郎氏

 キャセイ・トライテック株式会社 代表取締役 戴志堅氏

■講師:

北京郵電大学 情報工学科 副学科長 李学明 教授

マラヤ大学 計算機科学科 Diljit Singh 准教授

ベトナム国家大学ハノイ校 副工学部長 Ha Quang Thuy 准教授

インド工科大学マドラス校・ハイデラバード校 学科長 Pandu Rangan 教授

モンゴル理工大学 ソフトウェア工学科 Erdenebaatar A. 教授

チュラロンコン大学 計算機工学科 副学科長 Arthit Thongtak 准教授

慶北大学校 電気情報工学科 Duk-Gyoo Kim 教授

バンドン工科大学 電気電子情報学部 学部長 Adang Suwandi 教授

東京工業大学 留学生センター 廣瀬幸夫 教授

会津大学 産学イノベーションセンター長 程子学 教授

山形大学 国際事業化研究センター長 高橋幸司 教授

東北大学大学院 情報科学研究科 中尾光之 教授

■総合モデレータ:株式会社ジェイエーエス 代表取締役社長 小平達也

●対談後記●

 今回、国際フォーラムで全3セッションのモデレーションを通じ、アジア9カ国のIT人材育成に携わる教授陣、経営者の声を聞くことができましたが、さらに中尾教授との対談を通じて、今後のITエンジニアを取り巻く世界をイメージすることができました。 また、本稿では触れませんでしたが、自分戦略を見つめ直す機会を「いつ、どうやって持つか」が大事だと思いました。


 例えば、韓国では20歳を過ぎると、2年間程度兵役にいく義務がありますが、「これが自分を見つめ直す機会になっている。これからどう生きていくかについて考える貴重な機会になっている(慶北大学校 金教授)」ということです。一方で、日本では就職・転職活動が、自己分析をはじめ、キャリアの棚卸しなど自分自身のキャリア形成を考えるきっかけになることが一般的ですが、本当にこの程度の内省でグローバルに勝ち抜けるのか、もっと深く考える機会を持つことが大切なのではないか、それにはどのような方法があるのかということに思いをはせました。


 その答えの1つが、中尾教授の進める産学連携インターンシッププログラムなのかもしれません。これはすでに社会に出ているエンジニアにとっても大きなメリットになると思いました。


筆者プロフィール

小平達也(こだいらたつや)

ジェイエーエス(Japan Active Solutions)代表取締役社長

  • 厚生労働省 企業における高度外国人材活用促進事業 調査検討委員会委員
  • 国立大学法人東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター 養成プログラム アドバイザー
  • 早稲田大学商学部学術研究院 日中ビジネス推進フォーラム 特別講師
  • 武蔵野大学大学院ビジネス日本語専攻 非常勤講師
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会委(2007年度)

 大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。グローバルに特化した組織・人事コンサルティングを行うジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。



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