「マインドは独走させよ」――楽天流・国際エンジニア育成法:海外から見た! ニッポン人エンジニア(4)(2/2 ページ)
時代を読む力は、生き残れるエンジニアの必須条件である。本連載では、海外と深い接点を持つ人物へのインタビューをとおして、IT業界の世界的な動向をお届けする。ITエンジニア自らが時代を読み解き、キャリアを構築するヒントとしていただきたい。
「ベーススキル」「品質へのこだわり」日本人エンジニアの強み
小平 外資系企業に新卒入社し、海外で働いた経験を持つ樋口さんから見て、日本人エンジニアの強みはどのような点にあると思いますか。
樋口氏 日本人エンジニアの強みは「ベーススキルの高さ」「品質へのこだわり」「阿吽(あうん)の呼吸ができること」などがあります。海外、特に米国などの場合、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で責任・権限の範囲、具体的な仕事内容、期待される結果などが明確になっており、逆にいうとそこに書かれていない「範囲外の仕事」はしない風潮があります。日本人の場合、ジョブ・ディスクリプションはありますが、そこに厳密に基づくというよりは、何のためにその仕事をしているか、というミッションや目的を意識して仕事を進めるという傾向が強いですね。
「マインドは独走を、行動はチームで」
樋口氏 一方で、日本人エンジニアに足りないものとしては「視野を広げて仕事をする」ことが挙げられます。「目線を上げる」、といってもよいかもしれません。現在は、インターネットの普及によって「情報を入手しよう」と思えばいくらでも入手できるようになりました。英語ニュースを見る、社内外の勉強会に参加する、興味がある内容についてはインターネットで情報を入手するなど、視野を広げる方法はいろいろあります。
キャリア形成においては、目先の仕事だけでなく、「時間や空間の広がりをもって考えていく」という姿勢が大切だと思います。日々の業務は周りと合わせてきっちりとこなしつつ、自分の頭の中ではイマジネーション豊かに独走してよいのではないでしょうか。世界トップレベルの仕事をするためにはどうしたらよいか。「マインドは独走を、行動はチームで」という考え方は、十分両立するものだと思います。
●対談後記●
創業時から「世界一のインターネットサービス企業へ」という思いを持ち、2010年を「真の世界企業への脱皮の年」と位置付ける楽天。日本発のグローバル企業として、日本人エンジニアの英語化と外国人エンジニアの登用を推進し、相互に刺激を受けつつ「楽天の考え方」実現に向けてスピード展開している様子を理解できました。
樋口氏が語る「マインドは独走を、行動はチームで」とは、まさにニッポン人エンジニアに求められるものではないでしょうか。チーム行動が得意な日本人の強みを十分に生かしつつ、1人ひとりが最先端のテクノロジーを意識してスキルを習得を目指していく。このことによって、個人と組織が両立し、よりよい仕事とキャリア形成をしていくことができるのではないかと思いました。
筆者プロフィール
小平達也(こだいらたつや)
ジェイエーエス(Japan Active Solutions)代表取締役社長
- 厚生労働省 企業における高度外国人材活用促進事業 調査検討委員会委員
- 国立大学法人東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター コーディネーター 養成プログラム アドバイザー
- 早稲田大学商学部学術研究院 日中ビジネス推進フォーラム 特別講師
- 武蔵野大学大学院ビジネス日本語専攻 非常勤講師
- 日本貿易振興機構(ジェトロ)BJTビジネス日本語能力テスト外部化検討委員会委(2007年度)
大手人材サービス会社にて、中国・インド・ベトナムなどの外国人社員の採用と活用を支援する「グローバル採用支援プログラム」の開発に携わる。中国事業部、中国法人、海外事業部を立ち上げ事業部長および董事(取締役)を務めた後、現職。グローバルに特化した組織・人事コンサルティングを行うジェイエーエスではグローバル採用および職場への受け入れ活用に特化したコンサルティングサービスを行っており、外国人社員の活用・定着に関する豊富な経験に基づいた独自のメソッドは産業界から注目を集めている。
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