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DevOps時代の開発者のためのOSSクラウド運用管理ツール5選まとめユカイ、ツーカイ、カイハツ環境!(30)(3/3 ページ)

DevOpsという観点で、クラウドに使えるオープンソースの運用管理ツールとして、Zabbix、Hinemos、Hyperic HQ、Scalr、Aeolusの特徴をまとめて紹介します。

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【4】Chefによる構成管理やスケールアウト、フェイルオーバの設定も「Scalr」

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 Scalrは、米Scalr社が提供するクラウド管理ツールです。特徴としては、パブリッククラウド、プライベートクラウドなど、複数のクラウドを統合管理するGUIインターフェイスをWebで提供しており、Scalrで定義されたイメージを用いることにより、WebサーバのスケールアウトやDBサーバのフェイルオーバを簡単に行えます。


図9 Scalrの画面(インスタンスリストとモニタリングの様子)

 Scalrには、利用者が自分でインストールして利用する「オープンソース版」の他、Scalr社がWebサービスとして提供する「Hosted SCALR」、各企業に個別導入する「企業向けサービス」の3つのサービスがあります。

 日本では、クリエーションライン社がWebサイトの翻訳を行い、導入サポートの提供を行っています。

 Scalrは、パブリッククラウドとして、AWSの他、IDC Frontier、Rackspace、Google Compute Engineを、プライベートクラウドとしてOpenStack、CloudStack、Eucalyptus、nimbulaをサポートしています。これらの複数のクラウドを統括して管理可能です。


図10 クラウド選択画面

スケールアウト・フェイルオーバのサポート

 定義済みのNginxとTomcatを利用することにより、負荷の増減に合わせてサーバを自動的にスケールアウト、スケールインできます。また、定義済みのMySQLやPostgreSQLを利用してHA構成のデータベースを構築でき、高信頼なデータベースを構築できます。


図11 スケールアウト設定画面

 各ミドルウェア固有の設定(コネクション数やプール数など)もGUIで行えます。

Chefによる構成管理のサポート

 Scalrは、Chefによるサーバの構成管理も行えます。Chefは、「レシピ」と呼ばれるサーバの構成情報を基に、サーバの環境構築を自動化するツールです。DevOpsでも環境構築の自動化の鍵として注目されていますが、ScalrはChefの豊富なレシピを利用してインスタンスの環境構築ができます。

スクリプトインターフェイスによる定義

 定義したスクリプトをインスタンス上で実行するスクリプトを定義できます。スクリプトにより、複数のマシン上で行いたい処理を一括実行できます。また、インスタンス起動、スケールアウトなどのトリガーに応じたスクリプトの実行も行えます。

 Chefによる環境構築の自動化やスケールアウトやフェイルオーバの設定ができるなど、上記Hinemos/Zabbix、Hyperic HQに比べ、より高度なDevOps的な機能を提供していると言えるでしょう。

【5】1つの仮想マシン定義から複数のクラウド用イメージを作成「Aeolus」

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 Aeolusは、レッドハットが開発するクラウド管理ソフトウェアです。レッドハットが提供する「Cloud Forms」のベースとなる技術の1つで開発されています。

 前述のScalrなど従来のクラウド管理ソフトウェアでは、クラウドごとに仮想マシンのイメージを用意する必要がありました。利用したいOSの種類が増え、管理したいクラウドの数が増えると、管理するイメージの数が多く、手間が掛かります。

 Aeolusは1つの仮想マシン定義から複数のクラウド用のイメージを作成することで、各クラウド・仮想化基盤用のイメージ作成の手間を省いてくれます。


図12 Aeolusの概念図(Aeolusの公式サイトより引用)

 Aeolusでは、「システムテンプレート」と呼ばれる最小限のOS情報を定義した仮想マシンイメージの定義と、アプリケーションブループリントと呼ばれるインスタンスにインストールするアプリケーションの定義からインスタンスを作成します。


図13 Aeolusの仮想マシンイメージとインスタンスの定義

 アプリケーションブループリントの作成は、PuppetやChefを利用すれば既存のマニフェストやレシピから簡単にアプリケーションを定義できます。

 執筆時現在(2013年2月)、Aeolusは利用に当たりプログラムの修正が必要であったり、OSもFedora 7〜16とRHEL 5、RHEL 6しかサポートされないなど、まだまだ発展途上のプロジェクトです。しかしながら、複数のクラウドで利用できるイメージを一括管理できるという点で非常に有望なプロジェクトです。今後の発展に期待したいと思います。

選定の鍵は、サポート状況とハイブリッド

 本稿では、DevOpsという観点でクラウドで利用できる運用管理ソフトウェアをいくつか紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 意外と面白いのは、Zabbix、Hinemosなどは複数の日本企業でサポートサービスが提供され、割と新し目のScalrも、すでにサポートを提供する日本の企業が現れているところです。運用管理ソフトウェアは、導入や設定などにノウハウが必要になりますので、この点は心強いところです。

 また、システム監視ツールに加え、ScalrやAeolusのような複数のクラウドをハイブリッドにサポートするツールも出てきています。これらのツールを利用すれば、プライベートクラウドとパブリッククラウドを用途に応じてバランス良く利用することも可能です。

 本稿を読んで興味があるツールがあったら、ぜひ使ってみてください。

 最後になりますが、Scalrの調査にご協力いただいたクリエーションラインの浦底博幸氏に感謝します。

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