はじめまして、松坂高嗣です。縁あって「エンジニアのキャリア」をテーマとした記事を書かせていただくことになりました。よろしくお願い致します。
「キャリアアップ」ではないキャリア
エンジニアのキャリアアップの物語は、すでに数多くあります。エンジニア向けの転職サイトなどを見ると「成功する転職」「キャリアデザインの重要さ」「技術だけでは生き残れない!」などの記事が本当にたくさん見つかります。あなたも何度も目にしたことがあるでしょう。
「SEから大規模プロジェクトのPMへ」「技術手腕を買われてCTOへ」「起業して、アジャイルで受託開発を改革」「コミュニティ活動を通して業界をリード」「技術を突き詰めてApache Projectのフルタイム開発者に」――このような分かりやすい「成功」が結末にある物語は、私には残念ながら書けません。
私は情報系の大学を卒業して、中堅どころのシステムインテグレータに入社し、2度転職をしながら8年ほどソフトウェア開発に関わってきています。ずっと会社勤めで、フリーの経験や無職期間はありません。経営者になったこともなく、外部的な活動も全くしていません。言ってみれば「普通で」「無名の」サラリーマンエンジニアです。
だから私は「特別すごくはない」経歴と、そこで学んだことについての話を書こうと思います。
簡単に自己紹介を
1981年に、三人兄弟の長男として東北で生まれました。
市立の小中学校、県立の高校を出て、公立はこだて未来大学に一期生として入学し、情報工学を学びましたが、勤勉な学生とはとても言えませんでした。プログラミングに強く打ち込んでいたわけでもなく、趣味でDelphiをちょっと使っていたくらいです。
1年留年して卒業後、中堅システムインテグレータA社に入社します。A社は当時社員数600人ほどで、仕事は二次請けが多めでした。私は主に、JavaやC#での設計開発、たまにアーキテクトや新人教育をしていました。
リーマンショック後、大手Webサービス企業X社へ転職しました。Web業界を選んだのは、A社の規定で「退職したら、競合他社にはすぐ就職しないでね」と書かれていたからです。X社ではJava、Pythonのエンジニアとして開発に携わった後、国外向けサービスで開発プロジェクトのエンジニアリーダーを務めました。
2011年9月にリブセンスへ転職しました。転職した当時は社員数40人ほどで、現在よりももっとベンチャーベンチャーした会社でした。X社の規定でも「退職したら、競合他社にはすぐ就職しないでね」と書かれていたのですが、さすがに連結社員数6000人規模のX社の全ての事業分野とまったく競合しないのは難しかったので、せめてEC事業者は避けました。リブセンスでは、PHP、Rubyのエンジニアとして開発に携わった後、社内開発コンサルのような仕事を経て、インフラ・基盤部門のマネージャをしています。
開発スキルは広く浅くの自己流
私の開発スキルセットの中心は基本的にはWeb分野です。
プログラミング言語は、スタンダードなものを広く浅く扱ってきました。経験が多い順に列挙すると、Java、C#、Ruby、Python、bash、JavaScript、Delphi、PHP、Objective-Cです。扱っていて自然だと感じるのはC#とPythonでしょうか。
いろいろなプロジェクトに関わってきましたが、助っ人みたいな参画の仕方が多く、特定の技術や業務ドメインに深くコミットする機会はありませんでした。ほとんどの技術領域で体系的な学習はしておらず、試行錯誤しながら自分なりの理解をベースに進めました。そのため、どうしても「その分野の一般的なプロフェッショナル」に対して一歩及ばないところがあります。また、いわゆる「業務SE」の「○○の業務についてなら知り尽くしてるぜ」っていう自信とも無縁です。
自分が採用担当者として自分の履歴書を見たら、「普通だ」と思うだろうなと考えることがあります。「学歴は平凡。一留してるのでちょっとマイナス。特に大きく秀でたところはない。けれども一通りの言語や仕事は経験しているし、リーダーとか教育経験もあるので中堅どころとしてちょうど良さそう」
とはいえ、一口に「普通」といってもその体験の中身は人によって違うでしょう。履歴書の上ではだいたい同じようなキャリアであっても、見ているものは全然違うはずです。私が普通のキャリアの中で、何を学び感じてきたのか、この連載を通してお伝えしていきます。
筆者プロフィール
松坂高嗣
一介の職業エンジニア。生まれた国ではDelphi(Object Pascal)を読み書きしていたが、もう6年間接していない。システムインテクグレータからEC業界を経験し、現在はWebサービスを運営するリブセンスのシステム開発部に在籍。
「料理の写真ばかりSNSに投稿する人は人格に問題を抱えている」という記事がバズっているのを見て戦々恐々としながらも食事写真を投稿し続ける、インフラ・基盤部門のマネージャ。趣味はSFとかミステリとか。
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