未来予測を支える技術とPivotal/Mongo、Groonga:Database Watch(2014年1月版)(2/2 ページ)
エレクトロニクス業界の巨人「GE」がPivotal出資の真意をあらためて語った。MongoやGroongaの情報も。
パネリストの面々からの率直な「ツッコミ」
楽天の吉岡氏は「OSSを使うなら、コミュニティにもがっつり関与するほどでないと(難しい)」と話していました。もし「SIerにお任せ」というスタイルなら、まだSIerがOSSのノウハウを十分に持っていないこともあり、「無理して使うことはありません」ときっぱり。ライセンス料は高くなりますが、ノウハウが十分になければ商用を使えばいいという考えを示しました。厳しいですが実直な意見です。
ソフトウェア事業も手掛けているインサイトテクノロジーの小幡社長は「全ての企業がOSSを使いこなせるとは限りません。ビジネスとしてどう成り立たせていくか」と、エコシステムについてちらりと指摘していました。ここは小幡社長としても悩ましく感じているようにうかがえました。
続いて、サイバーエージェントの桑野氏。同社ではOSSで公開されているものを使うことで、その恩恵を受けると同時に、コミュニティにフィードバックを行うことで、コミュニティといい関係を築いているようです。ただしOSSを使うことが目的ではなく、「最終的には自社のサービスを滞りなく使えて、最良なものを使う」というスタンスだそうです。
こうした話を受け、さくらインターネットの田中社長は「オープンソースとフリーソフトが混同されているところがある」とちくり。「オープンソースの良さや価値は自分でソースを解析して改良することができるということだ」と指摘していました。「修正してコミュニティに還元すると、褒められていい気になっちゃう(笑)」とお茶目に話していました。コミュニティとの関わりでモチベーションが維持できるというのもいいですね。
MongoDBに限らず、OSSを使うなら他人任せではなく自主的にノウハウを得るという覚悟や積極性が必要ということと、最終的には適材適所で冷静に判断するという堅実なところが確認できたという印象です。使いこなせるかどうか、日本で普及するかどうかは組織の文化やスタンスが鍵かもしれません。
クロージングにはMongoDBのTechnical Service Manager APACのIan Daniel氏が登壇し、次期バージョンについての予告をしました。現状の安定版はMongoDB 2.4ですが、近いうちに2.6を発表する予定があるそうです。新機能および機能改善として挙げられていたのはクエリーオプティマイザー、複数のインデックス、ネットワークの使用を削減できるシャーディングクラスタ、アグリゲーションフレームワーク、LDAP認証、定義可能なロールなど。Daniel氏は「業務目的でも趣味でも、ぜひコミュニティに参加してフィードバックをください。MongoDBはユーザーが作っていくべきだと考えていますので」と述べていました。
4度目のGroongaを囲む夕べはやっぱり「いいにくの日」
毎年「いいにくの日(11月29日)」にイベントを開催するコミュニティを覚えていますか? オープンソースの「Groonga」です。恒例の11月29日には4回目となる「全文検索エンジンGroongaを囲む夕べ」が開催されました。
Groonga族の概要と最新情報の発表は、おなじみ、クリアコードの須藤功平氏(写真)から。いっせいに新バージョンが発表になりました。Groonga 3.1.0(ぐるんが)、Mroonga 3.10(むるんが)、Rroonga 3.1.0(るるんが)、そして新顔のDroonga 0.7.0(どぅるんが)です。
さらに表記変更についても報告がありました。「groonga」は「Groonga」と先頭が大文字になりました。理由は世界進出のためです。英語圏の人とやりとりしていると大文字の方が「なじみやすい」のだとか。Groonga族は全て先頭が大文字に変わりました(会場では面白く裏話が紹介されました)。
さてGroonga族について知らない人のために簡単に概略を。Groongaはカラムストア機能付き全文検索エンジンです。特徴はカラムストアによる高速な集計処理と即時更新(データを更新してもすぐに検索可能となること)です。Groongaを使うためのRubyライブラリがRroonga、Groongaをデータストアとして使うときのMySQLストレージエンジンがMroongaです。
初のパブリックリリースとなったDroongaは分散型となったGroongaです。確か昨年(2013年)の「いいにくの日」に予告していたので、公約通りですね。ストリーム処理でリアルタイム性を高めました。2月9日に安定版を出せるように開発しているところだそうです。
Groongaの後継となるものの構想も発表されました。名前はGrnxx(ぐるんたす)。GroongaとC++を掛け合わせたそうです。GrnxxはGroongaの制約や課題を解決し、インメモリ化を行います。
他にもGroongaにはFedora入りやmruby組み込み開始となったこと、MroongaはMariaDBバンドルに向けて準備中、Rroongaは64bit版Windows用バイナリ提供など、細かな最新情報も数多く発表されました。さらに当日はGroongaの商用利用の紹介やユーザーからのLTもあり、全部入りの盛りだくさんな内容でした。最後は会場を提供したDeNAから大量に肉料理が差し入れされ、懇親会は大いに盛り上がりました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- WebSocketやREST APIのサポート強化:Java 8&Java EE 7に対応した「Spring Framework 4.0」正式版リリース
米Pivotalは2013年12月12日、オープンソースのJavaアプリケーションフレームワーク「Spring Framework 4.0」の正式版をリリースした。 - 「エンタープライズ」と「コンシューマー」の向こうに:AWSとPivotalは同じものを見ている
「AWSはIaaSのサービスで、どちらかといえばネットサービス向け、PivotalはPaaSの製品でエンタープライズ向け」、だから比較にならないと考えるのは間違いだ。両社の目指しているものには大きな重なりがある。 - 一般企業をグーグルやフェイスブックのように:事業を急速に拡大するPivotal、その狙いと日本での戦略は
従量員数約1600人の「巨大スタートアップ」企業、Pivotalが急速な事業展開を進めている。10月23、24日にはシンガポールで「Asia Pacific Pivotal Summit 2013」を開催、CEOのポール・マリッツ(Paul Maritz)氏をはじめとした幹部がアジア太平洋地域での事業展開について説明するとともに、同社の製品・サービスを同地域で初めて詳しく紹介した。 - データセンターも3カ所に拡充:VMware、「vCloud Hybrid Service」を正式リリース
米VMwareは、米サンフランシスコで開幕した「VMworld 2013」において、「VMware vCloud Hybrid Service」を同年9月に正式に提供開始すると発表した。 - ITユーザー兼プロバイダも台頭:「おせっかい度」を増すエンタープライズIT業界
エンタープライズITに関する2013年最大のトレンドは、IT業界の「おせっかい度」が新たな段階に入ったことだ。今後長年にわたり、この動きは次第に強まっていくだろう。 - 企業動向:「Pivotalジャパン」設立、EMC、VMware、GE連合のPaaS製品群が本格展開へ
Cloud Foundryを活用したPaaS環境や大量データ分析向けの製品群を展開するPivotalが、日本法人を設立。日本企業のデータ活用を本格的に支援する体制を整えた。 - Database Watch(2013年7月版):巨大データとのそれぞれの付き合い方――Pivotal、SAP HANA
国内での法人設立も間近と噂されるPivotal。一足先に今後の製品展開をウォッチした。SAP HANAやOracle Database 12cなども。 - 企業動向:Heroku新CEOにVMWare元COOのトッド・ニールセン氏
元VMware COOで、Pivotalの幹部でもあったトッド・ニールセン氏がHerokuの新CEOに就任、PaaSビジネスをけん引する。