全部自分でやる〜国民年金移行と国民健康保険加入:開業【パーフェクト】マニュアル(10)
サラリーマンは厚生年金の手続きを会社がしてくれるが、フリーになると年金に関わる全ての手続きを自分でしなければならない。
※この連載は「開業から1年目までの個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金」(望月重樹著)の第2章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。内容は、書籍出版時(2014年1月現在)の法令などに基づきます。実際に開業される場合は、最新の情報をご確認ください。
1 国民年金への移行手続き
サラリーマンを退職すると、厚生年金から国民年金へと切り替える必要が出てきます。厚生年金は会社で手続きをしてくれましたが、国民年金は全ての手続きを自分でしなければなりません。
上表にまとめた国民年金の被保険者の種類をご覧ください。国民年金の被保険者は、第1号から第3号までの3種類があり、いずれかに該当しています。
通常サラリーマンは厚生年金に加入しており、自動的に国民年金の第2号被保険者に該当しています。会社に勤めている時は、国民年金に加入しているという意識は薄いものですが、退職すると、第2号被保険者から第1号被保険者になるための手続きが必要になります。この手続きを「被保険者の種別の変更」といいます。
種別の変更は、住民票のある市区町村の役所にある、国民年金課もしくは国民年金を担当する部署で行ってください。
なお、本人が第2号被保険者であるときは、その配偶者は上表の通り自動的に第3号被保険者となります(配偶者が第2号被保険者である場合は除く)。ということは、本人が第1号被保険者となった場合は、必然的に配偶者の種別の変更手続きも必要になります。自分だけ変更しておいて、配偶者はほったらかしということのないよう注意してください。
本人 第2号被保険者→第1号被保険者
配偶者 第3号被保険者→第1号被保険者
第3号被保険者の社会保険料は、配偶者が加入している厚生年金などが一括して負担してくれていたため、個別に社会保険料を納めることはありませんでした。
配偶者が第1号被保険者になるということは、配偶者自身の名義で保険料を納めることとなり、当然納付書も2人分送られてきます。覚悟をしておきましょう。
種別の変更手続きに持参する物
- 年金手帳
- 退職した日が確認できる書類(退職証明書、離職票、健康保険等脱退連絡票など)
- 認印
2 健康保険の移行手続き
国民年金と同様に、健康保険の変更手続きも必要です。会社を辞めると、「A 退職前の健康保険を任意継続する」「B 国民健康保険に加入する」のいずれかへの移行が必要です。
「A」を選択する場合には、退職前の健康保険組合などが窓口です。大企業など企業単独で健康保険組合を持っているケース、同業種の複数の組合で「○○業健康保険組合」に加入しているケース、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しているケースなどがあります。共通しているのは、会社勤め時代の健康保険組合などに対して、任意継続の手続きを行うということです。役所での手続きではないことに注意してください。
この場合、退職日の翌日から20日以内に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を健康保険組合などに提出し、かつ保険料を決められた日までに納めなければなりません。第1回の保険料が納付期限までに納められないと、任意継続の資格取得そのものが取り消しとなるので気を付けてください。
なお、任意継続の資格が取得できない場合は、自動的に国民健康保険加入になります。
任意継続の手続き
- 提出期限 退職日の翌日から20日以内
- 提出先 会社勤め時代に加入していた健康保険組合など
- 必要なもの 健康保険任意継続被保険者資格取得申出書
- 保険料 第1回の保険料を指定された日までに納付
「B」の国民健康保険への加入は、国民年金と同様、住民票のある市区町村の役所で手続きを行います。国民年金の窓口と国民健康保険の窓口は、ほとんどが同一あるいは隣りに並んでいます。
提出期限は退職日の翌日から14日以内です。退職と開業準備を平行して進めていればどうしても忙しくなるものですが、必ず速やかに手続きを行ってください。開業したらますます忙しくなるのは目に見えていますし、手続きを遅らせても何のトクもありません。
国民健康保険は、退職日の翌日から被保険者としての資格を取得したことになりますので、手続きが遅れたとしても、結局は保険料をさかのぼって納めることになります。
国民健康保険の手続き
- 提出期限 退職日の翌日から14日以内
- 提出先 住民票のある市区町村の役所(国民健康保険の担当窓口)
- 必要なもの 退職した日が確認できる書類(退職証明書、離職票、健康保険等脱退連絡票など)、認印
次回は、労災保険の特別加入について説明します。
書籍紹介
開業から1年目までの 個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金
望月重樹著
日本実業出版社 1600円(税別)
開業準備、帳簿の付け方、青色申告、資金繰り、1年目の経営分析……たった1人で開業する人が、1年目を乗り切って2年目以降の経営に弾みを付けるために、何をすべきか、どの順番でやるべきかを網羅した1冊。
望月重樹
税理士法人羅針盤代表社員。2002年税理士試験合格。税理士でありながら社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、MAS監査プランナーの資格を持ち、個人事業主の経営・労務管理や起業家のスタートアップをトータルでサポートしている。著書に「わかりやすい減価償却の実務処理と節税ポイント」「わかりやすい役員給与の実務処理と節税ポイント」(ともに日本実業出版社)がある。
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