労働者を一人でも雇っていれば労災保険の適用事業所になる。ではその労働者があなたの家族やパート社員だったら、どうだろうか?
※この連載は「開業から1年目までの個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金」(望月重樹著)の第2章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。内容は、書籍出版時(2014年1月現在)の法令などに基づきます。実際に開業される場合は、最新の情報をご確認ください。
「労働者災害補償保険(労災保険)」は事業主を守ってくれるものです。従業員が不慮の事故に遭った場合などに、事業主の責任を肩代わりしてくれる、ありがたい制度です。
労災保険に入っていると、業務上の事由や通勤途中で労働者が負傷、疾病、障害、死亡に見舞われた場合などに、労働者やその遺族に対して保険給付が行われます。労働者を一人でも雇っていれば労災保険の適用事業所となります。個人事業主は成立手続きを行って労働保険料を納めることになります。
家族のみで事業を行っている場合の「家族」は、労災保険の対象となる「労働者」に該当しませんので、原則として労災保険に加入できません。
しかし、業務の実情や災害の発生状況から考えて、労働者と同様に保護すべきだという考えから、特別に労災保険に加入できるようにする制度もあります。それが、後に解説する「特別加入制度」です。
また将来、商売が軌道に乗れば、アルバイトを雇うことになるかもしれません。労災保険の対象となる労働者には、正社員だけでなくパート・アルバイトも含まれます。一人でも人を雇えば、労災保険への加入義務があると考えてください。
労災保険の特別加入者は大きく3つに区分されます。
この中で、労働者を使用せずに事業を行う場合に関係してくるのが、「第2種特別加入者」です。第2種特別加入者は大きく「一人親方等」と「特定作業従事者」の2つに分かれます。
「一人親方等」は、次のような事業について特別加入が認められています。
下記のような「特定作業」に従事する人にも、特別加入が認められています。
通常、労災保険の手続きは労働基準監督署の窓口で行いますが、特別加入の手続きは、労災保険一人親方等の団体および特定作業従事者の団体を経由して、労働基準監督署に申し込むことになります。
開業地域の労働局のWebサイトをチェックしてください。労働局とは、各都道府県に一つずつ存在する厚生労働省の地方支部局です。労働局のサイトには「労働保険事務組合等名簿」あるいは「一人親方等の団体及び特定作業従事者の団体名簿」というものが掲載されている場合があります。
Webサイトに載っていない場合には、労働局あるいは、労働基準監督署に直接尋ねてみましょう。
開業から1年目までの 個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金
望月重樹著
日本実業出版社 1600円(税別)
開業準備、帳簿の付け方、青色申告、資金繰り、1年目の経営分析……たった一人で開業する人が、1年目を乗り切って2年目以降の経営に弾みを付けるために、何をすべきか、どの順番でやるべきかを網羅した1冊。
望月重樹
税理士法人羅針盤代表社員。2002年税理士試験合格。税理士でありながら社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、MAS監査プランナーの資格を持ち、個人事業主の経営・労務管理や起業家のスタートアップをトータルでサポートしている。著書に「わかりやすい減価償却の実務処理と節税ポイント」「わかりやすい役員給与の実務処理と節税ポイント」(ともに日本実業出版社)がある。
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