札幌市は“発注者主体”で基幹情報システム刷新プロジェクトを推進。「調達の透明性」と「地元企業の参入機会拡大」を確保した秘訣:AIST包括フレームワークで挑む、脱“単一ベンダー随意契約”(3/3 ページ)
「発注者側が主体性を維持しながらITプロジェクトを推進する」というコンセプトの下、札幌市が基幹系情報システムをメインフレームからオープン系に移行する一大プロジェクトを推進中だ。発注者側の主体性維持はどのように実現したのだろうか?[プライベートクラウド/データベース統合][パフォーマンス改善][Engineered System][Oracle Database 12c]
構築した新基幹系情報システムを、「今後20年は使い続けたい」
札幌市の基幹系情報システム刷新プロジェクトでは、コストを抑制する目的から、基本的に製品を指定せずに調達を行っている。ただし、例外となったのがOracle Databaseだ。長沼氏は、「スケジュール遅延が許されない状況だったため」と製品指定に至った理由を話す。
「住民記録系システムは、2012年7月施行の改正住民基本台帳法に絶対に間に合わせなければなりませんでした。そのことをシステム開発に関して豊富なノウハウを持つスペシャリストに相談したところ、『開発の最終段階になり、非機能要件でつまずくことが多い』という助言をいただいたのです。特にリスクが大きいのがデータベース周りだとご指摘を受け、そのリスクを回避するために、AIST包括フレームワークで稼働実績のあったOracle Databaseを製品指定したのです。結果的に、データベース基盤としてOracle Exadataを提案したベンダーが落札しました。そして最終的に2012年7月、無事にカットオーバーを迎えることができたのです」(長沼氏)
また、税務、保健福祉、国保についても業務システムごとに三段階に分けて順次拡張していき、入札の結果、Oracle ExadataおよびOracle Exalogicが採用されている。この結果、札幌市の新基幹系情報システムでは、オラクルのエンジニアドシステムズがインフラとして導入されることになったわけだ。
分離調達の促進によりマルチベンダー環境になったことで、ベンダーごと、システム開発ごとに潤沢なテスト環境を用意する必要が生じたが(併せて、100以上のドメイン管理も必須)、Oracle Exadataをはじめとするオラクルのソリューションを活用したことで、テスト環境の迅速な構築やテストデータの準備が容易になったという。
具体的には、オラクルのコンサルティングサービスの支援の下、環境構築の作業をツールによって自動化し、作業負担を軽減した。また、「Oracle Multitenant」オプションなどを活用することで、独立性の高いデータベースとアプリケーションサーバーのテスト環境をOracle ExadataおよびOracle Exalogic上に円滑に構築できるようになった。さらに、テストデータの作成に関しては、本番系システムに個人情報などの機密データが含まれるため、「Oracle Data Masking Pack」(現Oracle Data Masking and Subsetting)を活用した重要データの伏字化(データのマスキング化)の実施を検討している。こうしてさまざまなオープンシステムの機能を組み合わせて構築した新基幹系情報システムを、「今後20年は使い続けたい」と長沼氏は話す。
以上のようにプロジェクトの概要とオラクル製品の活用状況を紹介すると、長沼氏は最後にあらためて、技術専門の職員がおらず、職員が定期的に異動する組織でも、「発注者主体」と「マルチベンダー分割発注」「発注の透明性確保」を実現できると強調した。
「私たちが目指している発注者主体、マルチベンダー分割、そして透明性の確保は、札幌市だけの問題ではないと思っています。6年前の時点では『絶対に無理だ』と考えていましたが、最新の技術を使い、多くの方の力を借りることで、今日では実現可能になったのだと実感しています。このノウハウが他の自治体や民間企業にも広がっていくことを願いながら、現在はプロジェクトの終盤に取り組んでいます」(長沼氏)
基幹系システムなどでメインフレームを利用し、その開発や運用のコストが高止まりしていることに悩む企業は少なくないだろう。とはいえ、オープン系への移行を目指し、いずれかのベンダーに「丸投げ」してしまえば、また同じ問題に悩まされる恐れがある。この“負の連鎖”を断ち切りたいと考える自治体/企業にとって、AIST包括フレームワークとOracle Exadataをはじめとするオラクルのソリューションを活用する札幌市の取り組みは大いに参考になるに違いない。
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