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長野編:仕事の「数」はある、しかし……既婚エンジニアの移住と長野のIT求人事情ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(17)(3/3 ページ)

仕事、家族、家、地域との関わり……移住にはさまざまな課題や心配事があります。エンジニアのU&Iターン事情をお届けする本連載、今回はこれまでのキャリアを捨てる覚悟で長野へ移住、転職、独立したITコンサルタントにインタビューしました。

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長野のIT求人事情

 荒井さんの移住は比較的スムーズに進みましたが、移住者仲間からは「仕事がない」という悩みをよく聞くそうです。

 「移住したけれど『仕事が見つからなくて東京に通っている』とか、『家族だけ来た』とか」

 筆者は、U&Iターン第1回目の記事執筆のためにハローワークのインターネット検索システムで長野の情報処理系の求人を探してみたら、300件弱ヒットした経験があったので、仕事の「数」はあると思っていました。しかし荒井さんによると「(数はあっても)『やりたい仕事』がない可能性が、長野にはある」そうなのです。

 例えば、荒井さんのようなITコンサルティングの仕事は、そもそも長野の中小企業では求められていません。「オレは東京の大企業で、結構すごかったんだ」というスタンスで仕事を探すと、いつまでたっても見つけられないのです。

 荒井さんの口からは、さらにハードな発言も飛び出しました。なんと、アクセンチュアでのコンサルティングスキルは、「長野で全く役に立たない」というのです。

 アクセンチュアの顧客は大手企業が多く、技術的にはかなり高度、かつ業務も担当ごとに分かれています。一方、長野は「中小企業が多く、大手の企業とは抱えている課題や解決策が異なる」というのが理由です。「業務的にも『専門的なことを深く』よりも『浅く広く』が求められます。『1人で全部やる』感じです」と荒井さんは話します。

 エンジニアが長野で働くときのポイントは、「仕事で意識する範囲を広げること」とのことです。

 「エンジニアは『モノづくり』が仕事なので、意識も『自分のスキルだけ』に向きがちです。けれども、そのスキルが求められていなければ、仕事は見つかりません。『地方のニーズに目を向ける』ことが大事なのかなと思います」

 首都圏ではIoTやAIなど、これからの技術に可能性を見いだしている企業がたくさんありますが、地方ではそこに気付いている企業はまだあまり多くありません。つまり、そのような仕事を地方に求めても、仕事は見つからないということです。

 「首都圏で得たノウハウを地方に持ってきて、『ここを変えてやる』と会社を興すような人がもっと増えればいいなと思います。今の時代、仕事は首都圏じゃなくてもできるので」

「できるやつほど移住する仕組み」を作りたい

 荒井さんの目標は、「長野でも、東京と同じように、学べて、スキルが身に付けられて、仕事を呼び込めて、実際に仕事ができる仕組み」を作ることです。

 長野に限らない話ですが、産業的な構造として地方はには下請け企業が多いため、キャリアアップを求めている人にとって、長野で働くことは「都落ち」のイメージがあるようです。「何かを諦めて移住するようでは、ダメではないか」「できるやつほど移住する流れを作りたい」と荒井さんは考えています。

 東京の企業が地方の下請けに仕事を「出す」のではなくて、長野の企業が「主体」になって全国の仕事をする。長野のITに関わる人たちはもちろん、これから移住を考えている人たちと一緒にこの流れを作っていきたいと荒井さんは願っています。

 「移住には『骨をうずめる』といったイメージがありますが、『子育ての時期は長野で、子供が巣立ったら違うところへ』……など、いろいろな移住のスタイルがあってもいいと思います。ハードルが下がって移住しやすくなるよう、移住者の新しいキャリアパスを作っていきたいです」


お嬢さんと長野の山でスキーを楽しむ荒井さん(お子さんの顔にボカシを入れています:編集部)

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筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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