メンバーの「順調です!」を鵜呑みにした結果――山本一郎氏が聞く、会社成長期に起こりやすい炎上事例と対処法:開発残酷物語(1)(4/4 ページ)
トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか、同じトラブルを起こさないようにどういう手だてを取ったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探ります。
成長へのアクセルを絞っているのはもったいない?
こうした失敗の根本について、山本氏が切り込む。
エンジニアの育成やデザイナーの調達など、顧客ニーズに対して社内リソースが足りていないというケースは、会社の成長期に起こりやすい。
「現場の問題としてやり方を工夫するだけでなく、企業のマネジメントやリソースの調達、配分を意識的に手掛けることで、炎上の原因の1つである『リソースが足りず誰にも相談できない』という、現場ではどうにもならない足かせは解除できると思うんです」(山本氏)
さらに、いち早く会社を成長させようと思えば、リーダークラスのエンジニアをよそから引き抜いてくるといった手段も視野に入れても良いのではないだろうか、と山本氏はけしかける。
「Drupalにこれだけ注力している会社は他になく、クラウドと結び付けた目の付けどころもいい。技術力もあるのだから、外部から資金を調達して、もっと早期に事業を拡大してもいいのでは? 竹内さんは、何だかアクセルを踏めばスピードが出るのが分かっているのに、あえて絞っている感じがする。もったいないなぁ」と、山本氏。
竹内氏は一瞬、(図星だ!)という表情をし、「当社は開発拠点がインドにあり、規模の拡大に備えるため、東京にも開発ブリッジ機能を作りました。国内での開発体制強化は目下の課題。2017年からエンジニアの育成にも本格的に取り組んでいきます。アクセルについては……(苦笑)、急成長しながら資金集めに苦労した企業を幾つも経験しているから慎重になってしまうのかもしれません」と、理由を説明してくれた。
「なるほど(笑)」と理解を示した山本氏は最後に、ジェネロは今後はどのような方向を目指していくのか尋ねた。
「米国にアクイア(Acquia)という企業があります。Linuxにおけるレッドハットのような立ち位置で、オープンソースのDrupalの、開発や技術サポートをビジネスにしている会社です。ジェネロも国内におけるそうした立ち位置を目指したいという思いがあります。いずれにしても、まずはエンタープライズ向けのビジネスをきちんと確立することが先決です」と、既に将来のビジネスのカタチについても青写真は用意されている様子だ。
いきなりアクセルを全開にはせず、状況を見極めながら、適切にビジネスを拡大していく経営判断は、情報通信の過渡期を第一線で渡り歩いてきた竹内氏ならではといえるだろう。
同じ失敗を2度は繰り返さないという信念、ぜひ見習いたい。
次回も、山本一郎氏が「炎上」事例を斬る!
次回以降も山本一郎氏が、発注ナビユーザーのシステム開発会社の炎上事例をぶった切ります。お楽しみに。
発注ナビとは
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