職場の“味見”は学生のうちに――「Wantedly People」Web版をほぼ1人で開発した東大院生のネオジョブホッピング体験記:まだ君は間に合う! 現役エンジニアに聞く、学生のときにやっておくべきこと(14)(3/3 ページ)
試食や試着をするように、いろいろな企業に“お試し”就職してもいいじゃない。
味見の“おかわり”で「Wantedly People」PC版を開発する
再び、ウォンテッドリーに舞い戻った泉さん。2度目のインターンシップでは、同社の名刺管理アプリ「Wantedly People」PC版の開発を担当することになった。
「Wantedly People」は、既にスマートフォン版がリリースされていたが、PC版は開発未着手だった。しかし泉さんが戻ってきたので「開発をスタートさせよう」ということになった。2017年1月のことである。
4月までは、ほぼ1人でPC版の開発を進めた。とはいえ、ほったらかしということではない。同社のインターンシップはメンター制が敷かれており、泉さんのメンターには、元Googleの経験豊富な先輩エンジニアが付いてくれた。
だからこそ、泉さんに自由にやらせてくれたのである。また、画面デザインは、同社のデザイナーが基本的なデザインを先に仕上げてくれていた。
「スマートフォン版が先にあったので、そこからどの機能を採用し、どの機能を割愛していくかなどを考えながら実装していきました」
前回の社内SNSにはAngularJSを使ったが、今回の開発にはFacebookが提供しているJavaScriptライブラリであるReact.jsを使った。これを決めたのも泉さんだという。
開発終盤の4月には、それまでアルバイトだったスタッフ1人が社員として入社し、PC版の開発プロジェクトに加わった。
4月下旬、晴れてPC版リリースの日を迎えた。
「リリース後1〜2週間は、ユーザーからの評判を見聞きするのが怖くて、『Twitter』や『はてブ』を見られませんでした」
味見をして、本当に望んでいることが分かった
リリースが終わって運用フェーズに入ったある日、人事担当者から呼び出されたので部屋についていくと、新卒採用の最終面接がセッティングされていたという。
高専時代から複数社で味見=就業体験をしてきた泉さんが、ウォンテッドリーに入社を決めた理由は何だったのだろうか?
「本当にいろいろなことをやらせてくれたのがウォンテッドリーでした。周囲が優秀な人たちばかりなのも、良い刺激になります。もっとここで働きたいと思ったのが決め手です」
居心地の良さもポイントだった。
同社のオフィスは土足禁止。全員、靴を脱いでリラックスして働いている。オフィス内もデスクだけでなく、ソファやカウチ、カウンターとスツールなどが設置されており、自室にいるようにくつろいで働けるよう配慮されている。
同社では、在宅ワークやノマドワークのようなリモート環境での仕事を推奨していない。というのも、人と人とが顔を突き合わせて仕事を進める場にこそイノベーションが生まれるという考え方が根底にあるからだ。
こうした考え方を持つのは同社だけではない。近年では大手ネット企業やSIerなども、イノベーション創出のためのスペースを自社内に設けるケースが増えている。
同社の取り組みは、まさにIT業界の新しい動きといえるだろう。
実際に働いてみなければ分からない「企業風土」や「同僚の力量」、それらを知るためには、実際に働いてみるに越したことはない。
しかし、一度就職してしまうと、そうそう身軽に転職を繰り返すことはできない。だからこそ、学生時代のうちに、いろいろな会社を味見できる「インターンシップ」が有効なのだ。
「転職のリスクを負わずにいろいろな企業を体験して、スキルアップしたりコードを見せてもらえたりするのは学生ならではの特権」と泉さんが表現する「インターンシップ」は、新型のジョブホッピング=「ネオジョブホッピング」かもしれない。
次回も、トップエンジニアに就活のアドバイスを聞く
本連載では、今後もIT企業の最前線で活躍するトップエンジニアに、学生時代に行った就職活動の内容や、これから就職活動を行う学生へのアドバイスを聞いていく。ぜひお楽しみに。
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