マクロ編:IT先進エリア「北九州」が取り組む、IT誘致とラブターン:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(36)(2/3 ページ)
「東京>地方」はもう古い?――ご当地ライターが、リアルな情報をつづる「UIターンの理想と現実」。マクロ編第2回は、IT先端エリアの1つ「北九州」を紹介します。
「東京>地方」ではない、北九州拠点の立ち位置
大量の排熱処理に適している――「IDCフロンティア」
「IDCフロンティア」は、3万9000平方メートルの広大な土地に15万2000台のサーバを設置した、西日本最大級のデータセンターです。
同社が北九州を選んだ理由の1つは、「電気」です。
東京電力や関西電力ではなく九州電力を利用できることは、会社全体で電力事業者が分散していることが望まれるBCPの観点から好条件です。また、サーバの排熱対策には大量の電力が必要です。
皆さんご存じのように、サーバは連続稼働させると大量の熱を発し、そのままにしておくと故障や障害の原因となります。サーバ冷却にかかる電気量はサーバ稼働分を上回るため、「熱」をいかに効率よく排出し最適な温度を維持するのかは、データセンターの永遠の課題なのです。
IDCフロンティア北九州は、涼しい立地に加え、外気を状況に合わせて取り入れる設備を構築して、電気の大幅な節約に成功しています。
なお、熱の放出だけであれば、北海道などの寒いエリアの方が適しているように思えますが、寒過ぎる地域は逆にサーバを暖めなければならないため、データセンターには不向きなのだそうです。
電力のコストパフォーマンスが良く、他拠点と電力のリスクを分散できること。そして、地震や台風直撃などの自然災害が少なく、製鐵所が100年以上稼働を続けてきた実績があること。さらに、整地の済んでいる大規模な敷地があること、インフラが整備されていること、つまり産業地として成熟していることなどから、北九州はサーバにとって安心な場所に選ばれたのです。
「メンバーズ」が、福岡市ではなく北九州を選んだ理由
「メンバーズ」は、大手企業などのWebサイトの立ち上げから運営までを行うWeb制作会社です。
本社は東京の晴海。北九州と仙台に拠点があり、メンバーは希望の拠点間をフレキシブルに動いています。仙台から北九州に異動するメンバーや、首都圏で生まれ育ちながら北九州に定着して働くメンバーも多くいるそうです。
メンバーズ 取締役CFO 兼 情報執行役員の小峰正仁氏は、あえて福岡市ではなく北九州を選んだ理由の1つは、「過剰競争からの脱却」だと話します。
「福岡市は都市の規模が大き過ぎて、東京と環境的に大差はありません。しかし北九州はある意味ちょうどよく、地方のメリットを享受しやすいのです」(小峰氏)
しかも給与テーブルは東京と同じなので、家賃が安い分、可処分所得が多くなります。また、都市がコンパクトな分通勤時間が東京よりも短く、徒歩で通勤する社員も多いそうです。
経営視点では、採用面でメリットがあるとのこと。四年生大学に加え専門学校もたくさんあるので、若手の採用がしやすいとのことです。
企業の“頭脳”は東京から北九州へ――「bplats」
サブスクリプション(購読型)ビジネスのプラットフォーム開発をする「bplats」は2016年4月、北九州に開発拠点を新設しました。
「東京に本社があり、北九州で開発する」と聞くと、「東京で最先端の技術トレンドを取り入れた仕様を作り、地方拠点は開発に専念する」イメージがありますが、bplatsはそうではありません。
「北九州で最先端のサービスを作り、東京はそれをカスタマイズして販売する」という方法を取っているため、北九州拠点は同社の「頭脳」の役割を果たしているのです。
北九州開発センタの大谷憲監氏は、「あえて地方拠点で最先端の技術を始めたいと考えました。北九州を選んだのは、行政とIoTに力を入れていて、工場や生産業の基盤が整っているため、新しく開発する拠点としてふさわしいと思ったからです」と話します。
IT系の専門学校が数多くあり、理系大学も多いため、エンジニアリングに関心のある学生を採用しやすいのも魅力の1つとのこと。事実、福岡県には理工系の大学が集まっていて、国立大の数は全都道府県中2位です。
同社の「頭脳」をつかさどる拠点だからこそ、優秀な若手エンジニアが集まりやすい立地環境が、北九州を選んだ決め手となったようです。
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