大分編:東京のゲーム会社が「別府」で歓迎された理由――温泉Tシャツで知事と握手!:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(37)(2/3 ページ)
大阪、福岡、札幌のようなメジャーな都市ではなく、名刺交換した相手が「どうしてそんなところに支社を?」と、つい聞いてしまうような地域に支社を作りたかった――ご当地ライターがリアルな情報をつづる「UIターンの理想と現実」、大分編スタートです。
「作業場所」と「作業時間」の自由度
fuzzは、エンジニアの作業場所の自由度を重視しています。
最近ようやく日本でもリモートワークを導入する企業が増えてきましたが、「オフィスに来るのが主」で、やむを得ない場合に「在宅勤務をするのが従」というケースが多いように思います。
ただでさえ育児や介護などで大変な社員に、追い打ちをかけるように在宅勤務の後ろめたさを感じさせたところで、生産性は全く上がりません。私たちは、オフィスワークとリモートワークが、「主従」ではなく「対等」な関係になって初めてリモートワーク環境が十分に整備されて生産性の向上につながるという仮説を立てました。
それを実証するために、私たちは、あえて数百キロ遠方に住んでいるエンジニアを社員として採用しました。まさに必要は発明の母です。彼の存在によって、わが社のリモートワーク環境は劇的に改善し、生産性も向上しました。
この“実験”のおかげで、後日別府支社を設立する際も、東京本社から距離が離れていることは一切問題になりませんでした。
fuzzが作業場所と同じくらい重視しているのが、作業時間の自由度です。
作業時間の自由度を高めるために、私たちは「ゆるコアタイム」という制度を導入しています。一般的なコアタイムは、会社に決められた時間帯は在席していないといけませんが、ゆるコアタイムは事前に連絡すれば在席する必要はありません。上司の承認すら不要です。
仕事に応じてライフスタイルを設計するのではなく、ライフスタイルに合わせて仕事をはめ込んでいく。
リモートワークとゆるコアタイムの組み合わせによって、この主体的なライフスタイル設計が可能になりました。ただし、この生活に慣れてしまうと、普通の会社では働けない体になってしまうかもしれませんが……。
転機となった2枚の名刺
実は、2年前まではfuzzが支社を設立するなんて夢にも思っていませんでした。ところが2枚の名刺を受け取ったことによって、支社設立は夢を通り越して一気に現実味を帯びました。
1枚目の名刺の主は、fuzz東京本社と同じ日幸五反田ビルの別フロアに入居している、「フォー・クオリア」の松永社長です。
松永さんの名刺には、東京本社と並んで「山口オフィス」の住所が記載されていました。興味本位で「どうして山口にオフィスを作ったんですか?」と聞いてみたところ、松永さんが山口県宇部市の出身で、ニアショアという言葉がはやり始めていたこともあって、山口にオフィスを設立したとの答えをいただきました。
もう1枚の名刺の主は、その数日後にCG制作の営業でいらっしゃった、「ミックス」の堀川さんです。
堀川さんの名刺には、「八戸支社」の文字がありました。同じように理由を尋ねてみると、CG制作会社が1つもない地域に支社設立を考えていたところ、たまたま社長とご縁のあった青森県八戸市に誘致してもらえることになり、支社設立に至ったとのことでした。
立て続けにこのような出来事に遭遇したため、私の中で「自分の名刺にも支社を入れたい欲求」がふつふつと沸き上がってきました。それも、大阪、福岡、札幌のようなメジャーな都市ではなく、名刺交換した相手が「どうしてそんなところに支社を?」と、つい聞いてしまうような地域で、です。
私は頭の中で候補地を探し始めていました。
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